オルタナティヴ音楽の系譜が、美しい「回路基板」のようなポスターに──英デザインスタジオが制作

かつてセックス・ピストルズの伝説的なコンサートから始まったオルタナティヴミュージック。互いに影響を与え、音楽シーンを発展させたバンドの相関図が、トランジスタラジオの回路基板のような1枚のポスターにまとめられた。

IMAGE COURTESY OF DROTHY STUDIO
TEXT BY MARGARET RHODES
TRANSLATION BY KAORI YONEI/GALILEO

WIRED (US)

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図は拡大して細部まで見ることができる(パソコンではマウスカーソル操作、スマートフォンでは指先でピンチ操作する)。IMAGE COURTESY OF DOROTHY

始まりはセックス・ピストルズ。具体的には、1976年6月4日に英マンチェスターで行われたセックス・ピストルズのコンサートだ。このコンサートは、「ウッドストック・フェスティヴァル」と並んで、その後のミュージックシーンに最も影響を与えたパフォーマンスと評価されている。

ただし、このコンサートが有名になったのはセックス・ピストルズ自身ではなく、観客のおかげだ。観客は30~40人(その場にいたと主張する人は何千もいる)だったが、噂によればのちにザ・スミス、ジョイ・ディヴィジョン、バズコックスといったバンドを始めたメンバーが含まれていたという。

英国のデザインスタジオであるDorothyのデザイナーたちは、こうした噂も含めてデータを視覚化したポスター「オルタナティヴ・ラヴ・ブループリント:オルタナティヴ音楽の歴史」を作成した。このポスター(35ポンド(約5,300円)で発売中)でも、セックス・ピストルズからすべてが始まる。ポスターに描かれたカウンターカルチャー・ロックの歴史は、ボードゲームのような1本線ではなく、Sex Pistolsというスタート地点から溢れ出すように広がっていく。

ガレージロックからCBGB、グランジまで幅広く網羅

デザイナーのジェームズ・クエイルは、「あのコンサートをスタート地点に設定し、初期のプロトパンクやガレージロック、ニューヨークのライヴハウスである『CBGB』時代のパンクまで、互いに何らかの形で影響を与え合ったバンドの地図をつくってみました」と説明する。「音楽シーンは、パンク、ポストパンク、2トーン、ハードコア、ライオットガール、グランジと拡大しています」

こうした複雑なつながりを1枚のポスターにまとめるため、クエイルはトランジスタラジオの回路基板のようなデザインを採用した(電子音楽のポスターでも同じ手法が用いられている)。

今回のポスターでモデルとなったのは、世界で初めて市販されたトランジスタラジオ「Regency TR-1」。このラジオが発売された1954年、ビル・ヘイリーと彼のコメッツが『ロック・アラウンド・ザ・クロック』を発表するという象徴的な出来事があったからだ。

Spotifyのプレイリスト「ディスカヴァー・ウィークリー」がデジタル時代以前に存在していたら、このポスターのようなものだったかもしれない。つまりオルタナティヴ・ラヴ・ブループリントは、おすすめの音楽を知る手段にもなるということだ。

「もしこのなかに好きなバンドがあれば、その近くに書かれているバンドも好きかもしれません。同じ音楽シーンにいる、共通のメンバーがいる、互いに影響を与え合っているなど、何らかの共通点があるからです」と、クエイルは話す。このポスターには、ザ・クラッシュやテレヴィジョンといった伝説的なバンドの間に挟まれた、小さな文字のバンドを発見する楽しみもある。

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