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「この惑星で最も重要な製造業者」は山梨県にあった!|米誌が総力取材、ファナックの「正体」

From Bloomberg Businessweek (USA) ブルームバーグ・ビジネスウィーク(米国)
Text by Joshua Hunt

Photo: Tomohiro Ohsumi / Bloomberg / Getty Images

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黄色い産業用ロボットで知られ、工作機械の頭脳である数値制御(NC)装置で世界のトップを走る日本企業、ファナック。その圧倒的な存在感に対して、同社が何を考えているのか発信される機会は極端に少ない。

米「ブルームバーグ」記者はこの謎めいた巨大企業の「正体」を探ろうとするが……。各国のアナリストに注目された大型レポートをお届けする。

山梨県のファナック本社へ突撃取材


ファナックの本社は日本で最も有名な山、富士山のすそ野にある。人里離れた広大な敷地には22棟の窓のない工場と、20を超えるオフィスビル群がある。

その土地は、ファナックの創始者の稲葉清右衛門によって何十年も前に植えられた深い森に囲まれている。

この森は同社の秘密主義的な性格の一例で、かつて「フォーチュン」誌は清右衛門をジェームズ・ボンド映画の悪役になぞらえた。

清右衛門の息子の善治が2003年にCEOを、2016年に会長を引き継いでからも、その秘密主義の伝統は続いている。

彼はいつもレモンイエローのブレザーに身を包み、投資家からの質問に年に2回しか答えない。

ファナックはこの色を自社のブランドを示すものとし、産業自動化ロボット、そのロボットが働く工場、従業員の制服、エンジニアと重役が乗る社用車などに使っている。

かつて稲葉清右衛門はこの異常に派手な黄色を「皇帝の色」と語った。

これはまた、警備員が部外者を素早く特定するのにも役立っている。かつての産業スパイも、いまのアナリストも、彼らの領土に入ることができないのだ。

ある温かい午後、記者は山梨県忍野村のファナック本社を訪ねた。緑色の寮の近くを、蜂のようにファナックの車が行き来していた。

ファナックの広報部長、藤井啓介のアポは取れていない。彼はすでに、重役と会社を代表して予想通りの「ノーコメント」をよこしてきていた。

アポなしで守衛所をおとずれ、電話の向こうの彼を何とか説得できないかと、取りつく島を模索していたが、結局は守衛に送ってもらうことになった。

藤井を発見できなかったので、稲葉の森の奥の世界はほんの少ししか見ることができずに敷地を後にした。

第一研究施設の入り口の上の時計は定刻より進んでいた。工場自動化を牽引するファナックにとっては、革新をほかより速く起こさねばならないと言っているようだった。

アップルの飛躍とともに業績も急上昇


3700平方mの工場群のなかでは、何百もの鮮やかな黄色のファナックのロボットが、順番に別のファナックのロボットを作り続けている。それらが止まるのは倉庫がいっぱいになったときだけのようだった。

作られたロボットの一部は日本各地へ送られる。

厳格な移民制限と低下する出生率によって、大小すべての製造業者は工場を自動化するしかないからだ。

しかし、ほとんどのロボットは中国に送られている。

中国ではこの10年で自動化が急速に進んでいる。それは賃金と生活水準の向上も一因だ。労働者が危険で単調な仕事をやりたがらなくなったのである。ほかの要因としては、中国のメーカーが海外の競合他社と同等の効率性を追及していることもある。

そんな中国の工場で、複雑なモーターを組み立て、塗装をし、電子部品や射出成型部品を作っているのが、ファナックの産業ロボットだ。

製薬会社では、ファナックのロボットが薬を分類し包装している。食品工場では、ファナックのロボットが食品を切ったり絞ったり、包装したりしている。

有名なのはロボドリルだ。アップルのiPhoneシリーズの金属ボディを削っている。iPhone4が発表された2010年に、ロボドリルの売り上げは倍増した。

それ以来、アップルとファナックの関係は顕著なものになった。ロボドリルの売り上げを見れば、アナリストは新作iPhoneの仕様を予測できるようになったほどである。

そしてファナックのロボドリルは、iPhoneを製造するファーウェイだけではなく、シャオミなど中国のスマホメーカーにも売れまくっている。アップルが新製品を出すと、中国企業が安価なモデルを出して追随し、スマホ市場が広がっていくからだ。

「世界で最も重要な製造業者」は富士通出身


近年の多国籍企業は、東アジアから北米とヨーロッパに製造拠点を回帰させている。自動化が進めば人件費を気にしないですむからだ。こうして発展途上国でも先進国でも労働者の仕事が消滅している現在、各企業は熾烈な競争に身を投じている。

その渦中にあって、明らかな「勝ち組」がファナックである。

同社は世界のほとんどの工場の自動化と産業ロボット市場をコントロールしており、いまや50億ドル(約6000億円)規模の売り上げをたたき出している。

実際にファナックは、現在の世界で最も重要な製造業者かもしれない。

ファナックのやることはすべて、そのほかのすべての製造業者の仕事の一部を担うことを目的として、デザインされているからだ。

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