恐るべき激戦にして、大変な熱を帯びた宴でした。昨夜決勝が行われた、「若手漫才のナンバーワン」を決める大会、M-1グランプリのことです。
筆者は2001年の第一回大会から欠かさずM-1を見ているファンで、今年も3回戦以降のすべてのネタをチェックして、一覧表にまとめています(今年は大阪には足を運べませんでしたが、東京の会場には、3回戦以降はすべて行っております。大阪の3回戦、準々決勝はGYAO!さんでチェックしました)。
13回目となった今年のM-1は、過去のどの大会よりもレベルが高かったと思います。決勝進出者が決まった時点で、これは誰が優勝してもおかしくないなと思っていたので、とろサーモンの優勝にも納得です(そもそもbaseよしもと時代から彼らの舞台を観てきたファンからすれば、彼らを決勝の舞台で観られること自体が感無量でした)。
おそらくとろサーモンの魅力については、これからいろんなメディアで語られるでしょう。今回、どうしても書いておきたかったのは、準優勝した和牛の「恐ろしさ」について、です。
ボケの数とか、設定の妙とか、そういうテクニック的なことは言いません。筆者はただのファンですから、そのあたりのことは分かりません。
ただひとつ。彼らは、三回戦から決勝二本目までの計5回の舞台を、すべて違うネタで臨んだということ。これを伝えておくべきだと思うのです。
M-1ファンの方ならお分かりだと思いますが、ほぼ9割のコンビが、準決勝、あるいは準々決勝(準々決勝のなかった時代は3回戦)に、その年イチバンの「勝負ネタ」を持ってきます。決勝に進むための会心のネタを準決勝でぶつけて、そのネタで決勝に勝ち上がれば、大体がそのネタで決勝ワンステージ目に臨みます。
筆者が3回戦からM-1を見るのは、注目のコンビが、今年はどんな「勝負ネタ」を用意しているのかを見るのが楽しみだからなんですが、通常、ひとつのコンビが二本、多くて3本のネタを引っ提げて、予選に挑みます。
今年の決勝進出10組のネタを一覧表にするとこうなります。(ネタの名称は筆者が便宜上付けたものです。ご了承ください)
このように、たいていのコンビが、準決勝(あるいは準々決勝)で「勝負ネタ」をぶつけて、決勝でもそのネタをやることになります。たとえばジャルジャルの今年の勝負ネタは、明らかに「ピンポンパンゲーム」でした。これはどの予選会場でもバカウケで、勝負ネタと呼ぶにふさわしいネタでした。
優勝したとろサーモンも、「旅館の女将ネタ」を今年の勝負ネタとしていたことが分かります。これも、特に準決勝では会場が揺れるほどの笑いを取っていた渾身のネタです。
翻って和牛です。筆者も和牛のファンなのですが、今年の予選を観ながら、準決勝まですべてネタを変えていることに驚きました。一方で、もちろん面白いネタではあるんだけど、去年準優勝した和牛にしてはちょっと物足りないところもあり、「和牛は決勝に上がったけど、大丈夫かなあ。最後まで残るのかなあ」と懸念していました。
ところがです。決勝一本目の和牛のネタを見て驚きました。3回戦、準々決勝、準決勝では見せなかった、また別のネタを披露したからです。
アホなウェディングプランナーを主人公にして進めるこのネタは、後半で前半の細かいボケを回収していく、とてもレベルの高い漫才でした。回収型の漫才は見ていて痛快なのですが、このネタは爆笑と同時に、その見事な伏線の回収ぶりから、鳥肌が立つレベルのものでした。最終決戦進出も文句なしです。
そして最終戦です。最終戦でも、とんでもないことが起こりました。