MicrosoftはWindows 10をリリースした2015年夏に、「Windows 10が動作するデバイス」を3年間で「10億台」にするという目標を掲げていた。これはPCに限らず、タブレット、スマートフォン、Xbox One、HoloLens、Surface HubといったWindows 10ファミリーのOSが動作するデバイスも含めた月間稼働台数を意味する。
その後、戦略の一端を担うWindows 10 Mobileの立ち上げが失敗したことにより、目標達成が難しいことは2016年夏の時点で既に同社も認めていたが、現状でWindows 10デバイスはどこまで数を増やしているのだろうか。
2017年11月29日(現地時間)、米Microsoftの年次株主総会でサティア・ナデラCEOは、月間あたりのWindows 10アクティブデバイス数が「6億台」の大台に達したと発表した。5億台達成の報告が2017年3月であり、半年強の期間を経て1億台ほど台数を上乗せさせたことになる。やはり当初掲げた目標を達成できるペースではない。
過去にはリリース開始から1年間で3億5000万台を達成した実績もあるが、これは期間限定の無料アップグレードキャンペーンによるテコ入れで、多くのユーザーが旧OS環境から一気に移行したためだ。その後、ペースは一気に鈍化したものの、堅実に増加はしていき、今回の6億台というマイルストーンをクリアした形だ。
増加分の内訳について詳細は不明だが、恐らく企業ユースでの導入がある程度順調に進んでいること、そして家庭や個人ユースではリリースから2年半が経過し、PCの買い替えサイクルが到来して旧環境からの移行が進んでいることに起因するとみられる。
一方で、米分析会社のNet Applicationsがインターネット上で公開している「NetMarketShare」のデータなどを参照する限り、Windows 10のシェアは順調に伸びているものの、Windows 7から一気に移行が進んでいるような印象は受けない。むしろWindows XPやWindows 8.1のユーザーを取り込んでいるようにも見える。
実際、企業を中心にWindows 7の利用率はいまだ高く、2017年10月のNetMarketShare調べでは46.63%のシェアがあり、Windows 10の29.26%との差は大きい。Windows 7の延長サポートが終了するのは2020年1月。それまではWindows 7からWindows 10への移行が比較的ゆっくり進むのではないかと考える。
Windows 10はこれまでのWindows OSとは違い、「Windows as a Service(WaaS:サービスとしてのWindows)」の仕組みを導入している。これはWindows 10において、最新アップデートを適用した状態を維持し続ける限り、新機能の入手やサポートを受け続けられるというものだ。
また現在Microsoftは、Windows 10のアップデート周期を3月ごろと9月ごろの年2回に固定し、企業ユーザーのアップデート期限を18カ月に延長(期限切れになるとサポートを受けられなくなる)することで、計画的な更新を行いやすくしている。
Windows向けのアプリ広告事業を行うAdDuplexによれば、2017年11月時点でWindows 10全体でのOSバージョンのシェアは「Creators Update(1703)」が63.5%、「Fall Creators Update(1709)」が20.4%となっている。8割超がサポート期間内の新バージョンを利用しており、WaaS戦略は一定の成功を収めていることが確認できる。
Fall Creators Updateの提供から1カ月以上が経過しているが、18カ月ルールに従ってアップデート適用のタイミングを調整している企業ユーザーが少なくないとみられる。また、ドライバやパートナー側の準備が整っておらず、まだアップデートそのものが手持ちのデバイスに降ってきていないというユーザーも少なくないだろう。
Windows 10の次期大型アップデート「Redstone 4」(バージョンは1803)が2018年3月ごろにリリースされるまでは、少しずつFall Creators Updateのシェアが増えてくるとみられる。
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