11月27日、パワハラや残業代未払いなどの法令違反をしている企業を知らしめ、安心して働ける環境づくりをめざす「ブラック企業大賞」の2017年度のノミネート企業が発表された。
ノミネートされたのは「日本放送協会(NHK)」、「ヤマト運輸」、「パナソニック」、「大成建設・三信建設工業」など9社で、大賞はネットでの一般投票を経て、12月23日の授賞式で発表されるという。
過労死等防止対策推進法が施行されたのは2014年(平成26)11月のことである。それから3年が経過しても、過労死・過労自殺は、労災に認定されたものだけでも毎年200件前後も起きている。
NHK記者の過労死、電通社員や新国立競技場の工事にもともなう過労自殺など、この問題が報道されない日はない。
11月21日に国際通貨基金(IMF)が発表した日本の労働環境に関する提言では、残業の抑制を求めるとともに、残業が減ることで、夫は子育てや家事に時間を割けるようになり、妻は出産を機に会社を辞めなくて済むと指摘した。またこの提言では、働きすぎで死に至ることを「KAROSHI(過労死)」と紹介した。
日本人の「働きすぎ」の遠因は、江戸時代に起こった「勤勉革命」によって培われた、勤勉性によるものだといわれている。
勤勉革命は、家畜が行っていた労働を人間が肩代わりすることで生産力の向上を成し遂げたもので、機械を利用して労働生産性を向上させた西ヨーロッパの産業革命と大きく異なる。
江戸時代の農家は、負担が大きくなった家畜の飼育をやめ、それに代わるエネルギーは人間が行なうことになった。しかし人口の増加が鈍った18世紀になると、農民は生産の拡大を図るため、自発的に長時間労働を行なうようになった。
彼らは、働けば働くほど稼げるようになり、地域社会も豊かになることで、労働に対して満足感や達成感を覚えたのである。こうして勤勉をよしとする倫理観が生まれたのだ。
江戸時代の後半になると、日本全国の村々で休日増大の要求が沸き起こった。人々は定例の休日以外に、「遊び日」と呼ばれる、祭りや休養のための休日を求めたのである。
歴史学者の古川貞雄の研究によると、農村の休日は労働休養日としての「休み日」と、神事祭礼や民俗行事のための「遊び日」の2種類に分類することができるという。
17世紀後半から18世紀初めの農民の休日は、田植えや稲刈など農休みなどに、正月・小正月・盆・五節句・神社の祭礼などを加えると、年間20日前後程であった。
こうした定例の休日以外に、ことあるごとに村役人に願い出て、「遊び日」を勝ち取るケースが、19世紀に入ってから激増していった。