森ビル:1戸10億円超「最高級物件」提供へ、虎ノ門で賃貸含め相当数
桑子かつ代、Gareth Allan-
東京は世界大都市に比べ高級住宅安い、ロンドンと2倍以上の開き
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森ビル・大場取締役常務:六本木ヒルズ超える最高級レベルを作る
外国の大使館や超高層オフィスビルが立ち並ぶ都心部で、富裕層向けの大規模な高級住宅プロジェクトが動き始めた。国内外の投資マネーが日本の不動産市場に流入する中、森ビルは港区虎ノ門で開発中の超高層住宅棟で分譲価格10億円以上の新築マンションや高級賃貸住宅を「相当数」計画している。
総合不動産の森ビルは、虎ノ門エリアに2020年完成をめどに建設中の物件(地上54階建て)を含めて超高層ビル3棟の建設計画を進めている。総事業費は約4000億円に上る大規模プロジェクトで、この中に最高級レベルの住宅が多く含まれる計画だ。取締役常務執行役員の大場秀人氏は11月22日のインタビューで「森ビルの最高級物件を提供する。東京の都心部では国内外の富裕層が満足するレベルの住宅の市場が今後拡大する」と述べた。具体的な戸数は非開示だが「相当数」と説明した。
計画中の1棟で合計約550戸の住宅が計画され、このうち160戸は家具付き賃貸マンション(サービスアパートメント)で残りの一部が富裕層向けなどの住宅になる計画。分譲価格は10億円以上、賃貸価格は月額100万円以上を想定している。
東京はニューヨーク、ロンドン、パリや上海と並ぶ世界の大都市だが、日本の高級住宅は海外と比べて価格が安い。日本不動産研究所の調査では、世界の主要都市の高級住宅価格はロンドンが最も高く、次いで香港、上海、ニューヨークの順番でロンドンの価格は東京の2倍以上になっている。大場氏は、海外と比べて東京は歴史が浅いとして「富裕層が買いたいと思う高額物件のストックが他のグローバルシティと比べてまだまだ少ない」と指摘する。
ニューヨークと東京では高級住宅の市場規模に大きな開きがある。大場氏の説明では16年のニューヨーク・マンハッタンの高級住宅の販売額は約150億ドル(約1兆6000億円)に対し、東京の都心5区は3500億円程度と4倍の開きがある。一戸当たりの平均価格はマンハッタンは3億2000万円に対し、都心5区は1億円程度。このうち10億円以上の価格帯については、世界的に特出して富裕層向けの住宅を供給するマンハッタンでは、年間250戸の供給数に対し、都心5区は年間10戸程度にとどまるとしている。
ペントハウス53億円
海外ではオフィスビルの取引額に相当するような住宅価格が存在し、ニューヨークでは、6月に約53億円で地上60階のペントハウスが販売された。高級物件仲介・販売のサザビーズ・インターナショナル・リアルティの高級住宅の販売物件では、ニューヨーク五番街では82億円、ロンドンでは52億円の住宅がそれぞれ掲載されている。一方で、日本では東京カンテイの調査では国内の2001年以降のもっとも高い住宅価格は2010年の16億2000万円にとどまっている。
そうした中、国内で増える富裕層からの高額住宅への関心も高まっている。大場氏によると、港区の中で高級住宅街の赤坂・青山・麻布の世帯主で日本人と外国人の比率は2003年頃は賃貸で半々だったが、現在は日本人が7割を占める。大場氏は「リーマンショック以降、外国人が一時減ったが、最近は企業経営者など日本人が伸びている」と述べた。同社は86年から高級住宅を賃貸でスタートし、分譲は2002年から開始した。
大手不動産業界は富裕層を新たな成長市場と位置づけ積極的に展開している。不動産経済研究所の調査では首都圏での高額新築マンションの販売戸数は増加している。15年は1億円以上が1688戸と2000年以降で最多で、このうち3億円以上は76戸だった。17年は10月までで、15年に迫るベースで1億円以上が1379戸、3億円以上は47戸に達している。
野村不動産は港区六本木で最高価格14億3000万円を含む35戸数の高額マンションを16年6月から順次に販売している。広報担当の小沼雄二郎氏によるとこの価格は同社にとり2002年以来最高ですでに売却済という。三井不動産レジデンシャルが16年10月から販売を開始した港区南青山の新築マンションには15億円、17年11月から販売開始の横浜市の新築マンションは最高価格が8億円となっている。東京カンテイの上席主任研究員の井出武氏は「富裕層向けの住宅は不動産市況が下がる局面でも一定の需要がある。景気に左右されない、今後有望な市場だ」との見方を示した。