20年以上、ワールドカップで1勝もしていなかった日本に、その男はやってきた。エディー・ジョーンズ。ラグビー日本代表ヘッドコーチとして、ワールドカップ3勝をあげる歴史的快挙を成し遂げたエディー氏は、日本チームの何を変えたのか。エディー氏の言葉には、スポーツ選手でなくとも、誰もが知りたい、自信が持てない自分自身を変えるノウハウが満ちていた――。
元ラグビー学生日本代表であり、ゴールドマン・サックス証券代表取締役社長の持田昌典氏と、スポーツとビジネスに共通する「勝利」への道を示した共著『勝つための準備』を上梓したエディー氏が、あなたの人生を明日から変えるコツを熱く語ります。
私はラグビーという勝負の世界に、長年身を置いてきました。そこでは、勝つことが何より大事なのは、言うまでもありません。
勝利について、確実に言えることがあります。それは、勝利は「得ようと強く意識しなければ、決して得られない」ということです。
また、たとえいっとき勝ったとしても、好調を維持するのは非常に難しい。これは勝敗が明白なスポーツだけでなく、ビジネスでも同じではないでしょうか。
常に安定して成功している会社は、本当に少ない。いい状態がしばらく続いても、不調の時が必ずやってきます。その波は何の容赦もなく、非常に厳しいものです。
残酷な波に抵抗し、良好な状態を維持することが、非常に大切なのだと思います。そのためには、準備と努力を積み重ねるしかありません。これをおこたると、勝利や好調はいともたやすく逃げていきます。
私はラグビーを、世界で一番美しいスポーツだと思っています。しかし、準備を怠り、いいプレーができないと、世界で最も醜いスポーツに変貌してしまいます。
もちろん、つらい準備だけではいけません。厳しい課題に取り組みつつも、いい食事やゆったりとくつろげる休憩時間は必要です。
そのバランスがうまく取れている環境なら、人はそこでやっていきたいと思うはずです。
スポーツでもビジネスでも指導者にとって大事なのは、このような環境作りだと思います。
勝利を強く意識すると、先の状況を読んで、いろいろな対策を練るようになります。私はこのことが、とても大事だと思います。内容以上に、「対策を練る」という行為が、チームに自信を与えるからです。
つまり、相手の先に立とうという意志が、勝負事では非常に重要だということです。
負け癖のついたチームには、そのような意志が少しも見られないものです。
そして、当人たちはなぜか、意志がないことが勝ちを遠ざけていることに気づいていません。
弱いチームを指導する際は、意識革命から始めなければなりません。すべては、意識の問題なのです。勝利をもたらすのは、結局、自信です。
これはスポーツに限ったことではありません。人間が生きていくうえで、自信ほど大事なものはありません。
自信をもって事に当たれば、あらゆることがうまく回り始めます。逆に、どれほど緻密な分析を行っても、自信がなければ、うまくいきません。
よく、自信が持てないという人がいますが、理由は簡単です。
準備不足なのです。
自信を持つ方法は、実に簡単です。準備と努力を重ねればいいのです。準備や努力は、貯金のようなものです。すればするほど、自信という貯えは増えていきます。
努力をせずに自信がないと嘆いても、仕方ありません。嘆いている暇があれば、努力をすればいい。そうすれば、いつの間にか想像以上の自信がつき、見たことのない風景が見え始めます。