トランプ氏、フリン前補佐官の行動「合法」 「FBIに嘘」は知っていたと
ドナルド・トランプ米大統領の側近で前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)のマイケル・フリン被告が連邦捜査局(FBI)に虚偽の供述をしたと有罪を認め、捜査に協力していると明らかにした問題で、トランプ氏は2日、ツイッターで、被告が政権移行期間にロシア大使と接触していたのは「合法」だと書いた。さらに大統領は、被告がFBIに「嘘をついた」ことは前から承知していたと書いた。
2日朝はトランプ政権にとって、包括的減税法案が早朝に上院を51対49で通過したことを祝う機会となるはずだった。しかし、それよりもフリン被告の有罪証言と捜査協力が大きく注目されるなか、大統領は「僕がフリン将軍をくびにしなきゃならなかったのは、副大統領とFBIに嘘をついたからだ。彼はその嘘について、有罪を認めた。残念なことだ。というのも、政権移行期の行動は合法だったので。隠すことは何もなかった!」とツイートした。
今年2月のフリン補佐官解任当時、ホワイトハウスは解任理由について、昨年12月に駐米ロシア大使と接触したことについて副大統領に事実と異なる説明をしたからだと説明していた。しかし今回のツイートで大統領は、前補佐官がFBIに嘘をついたことを解任当時すでに承知していたと書いた。
5月に解任されたFBIのジェイムズ・コーミー長官は6月、上院情報委員会で、フリン前補佐官解任の翌日に大統領に呼ばれ、前補佐官への捜査をやめるよう要請されたと宣誓証言した。2月当時に自分が書いたメモも提出した。これに対してホワイトハウスは、捜査中止の要請はしていないと反論した。
もしもトランプ大統領が、FBIへの虚偽供述を承知の上で、フリン前補佐官への捜査中止をFBI長官に要請したとするなら、それは大統領による司法妨害に相当すると、複数の専門家が指摘している。
たとえば、オバマ政権下の司法省にいたマシュー・ミラー氏はツイッターで、「これはすごい。(トランプ氏が)たった今、司法妨害を認めたぞ。もしコーミーに、これ以上捜査しないでほしいと言った時点で、フリンがFBIに嘘をついたと(大統領が)知っていたなら。これが事件になる」と書いた。
一方で、2日に報道陣を前にしたトランプ氏は、フリン被告の司法取引について質問され、「なんの結託もない。なんの結託もないということが、明らかになった。まったくなんの結託もない。なのでみんなとても喜んでいる」と答えた。
これとは別に、米紙ニューヨーク・タイムズは、フリン被告がロシア当局と接触したのは独自判断の単独行動だったというホワイトハウスの主張とは食い違う、政権移行チームの内部メールを入手したと伝えた。
同紙によると、たとえば移行チームのK・T・マクファーランド上級顧問がメールで、ロシアが「アメリカの選挙を(トランプ氏に)投げてよこした」と書いていた。
ホワイトハウスの法律顧問は同紙に対して、上級顧問は単に民主党側がそのように見せかけようとしていると意味で書いただけだと説明した。
司法取引
フリン被告はロバート・ムラー特別検察官との司法取引で、ロシアのセルゲイ・キスリャク大使と政権移行期間に接触し、オバマ政権の制裁やイスラエル入植地に関する国連安保理決議案などについて複数の要請をしていたことを認めた。さらに、大使との接触について今年1月の時点でFBIに虚偽供述をしたと認めた。
司法取引の内容を説明する起訴状には、フリン被告が政権移行チームの「上級首脳」からロシア大使との接触を指示されていたと書かれている。複数の米メディアは、この首脳とは、トランプ氏の娘婿で大統領顧問のジャレッド・クシュナー氏だろうと伝えている。
米国では、民間人が政府の許可・関与なしに外国政府と外交交渉を行うのは違法。問題となっているロシア大使との接触は、トランプ政権発足前の昨年12月のこと。
FBIに対する虚偽供述の量刑は通常、最長5年の禁固刑だが、司法取引の結果、フリン被告への求刑は6カ月となっている。
米情報機関は今年1月に、ロシア政府がウラジーミル・プーチン大統領を筆頭に、トランプ氏を大統領選で勝たせようとしたと結論づける報告をまとめた。ロシア政府はこれを否定。トランプ氏は、自分の選挙対策チームとロシアとの結託はなかったと一貫して主張している。
大統領選にまつわるロシア疑惑を調べているムラー特別検察官の捜査陣は10月末、選挙戦中のトランプ陣営の外交顧問をFBIへの偽証罪で起訴したほか、トランプ選対元本部長を大統領選関連ではない資金洗浄罪で起訴した。ただし、短期間ながらトランプ政権幹部を務めた人物が有罪を認めるのは、フリン前補佐官が初めて。