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「幻想都市・チルノ編」
河童「幻想郷は死んだんだ。そう思わない?」
そう言うと、河童は残りのコーヒーを喉に流し込んだ。
河童「理想と現実は大抵釣り合わない。このコーヒーも、そう。」
あたいがふと携帯――という機械らしい――の画面を見ると、もう二時間もこいつとここにいる事が分かり、気が滅入った。
この泥のような味がするコーヒーを出すこの店に、だ。正直キモイまずさだ。
河童「あんたはこのコーヒーに期待した。希望とはもっと鮮やかな色の事さね。」
氷精「常識の限りに思ったまでよ。まさかここまで悲惨だとは思わなかったけど。」
空は灰色に染まり、周りはビルで囲まれ常に騒音が鳴り響く。
タイヤのない自転車のような乗り物に乗ったオヤジが、荷物を満載しながら前の通りを通り過ぎる。
往来は途切れる事無く、忙しない人と妖怪の群れが行き交う、さながら百鬼夜行だ。
良く分からない機械が、あたいの冷めたコーヒーをスプーンもろともテーブルから奪い去る。
河童「そもそも妖精にブラックコーヒーは合わないね。」
氷精「それもそうだけど、ここもよ。」
河童「死んでいる。ブラックというより、ダークね。」
河童「いや、カオスかな?」
河童のにとりは、首元のコードを引っこ抜きながらあたいの顔を覗き込む。
そしてメモリーカードを差し出した。
河童「これが私の外部記憶だよ。地図もこの中に入ってる。」
氷精「あんたは、オイルでも飲んでいた方が似合ってるな。」
河童「ほんっとに馬鹿っぽくない馬鹿になったね。」
氷精「・・・空気が悪くてね。」
咲夜がいなくなってから、どのくらい経ったかは分からないが、いつの間にか幻想郷はあたいの知らない世界になっていた。
あたいの湖も排水処理施設だかなんだかに変わっていたし、紅魔館も無くなっていた。
あたいが気付いたとき、目の前には一台のカラクリ車が止まっていて、その中から出てきたのがにとりだった。
変わり果てた世界の、変わり果てた妖怪だった。
河童「別に私は、罪悪感も何もない。」
河童「核エネルギーによる産業革命は止めようも無い勢いだったし、私だって喜んで協力したもんさ。」
河童「外の世界の状況が、上手く重なっちゃったんだよ。」
あたいはこのサイボーグカッパに連れられて、幻想都市―――そう呼ばれているらしい―――の西区にあるしょぼくれた喫茶店で、ことの顛末を聞いているわけだ。
良く分からない機械が、あたい達の前にコーヒーを差し出した。
かき混ぜてみるが、ドロドロとしていて口に運ぶ気にならない。どうやったらこんなにジェル状になるんだ?
河童「あらゆるものが幻想入りしてね。さながら高度経済成長さ。」
気にせず河童は黒濁液を飲み込んでいる。こいつらの燃料か何かじゃないのか、この液体は。
氷精「外は、一体どうなったの?」
河童「分からない。観測が出来ないのよ。ジオ・フロートにいる月の民でも分からない。」
河童「現人神が改造した山でもね。ここからも見えるだろう?」
摩天楼の向こうに、黒く巨大な建築物が見える。かつて妖怪の山と呼ばれ、多くの神々が暮らしていた場所だ。
噴煙を上げながら不気味な機械音を響かせるそれは、さながらバベルの塔のように聳え立っている。
正直言ってキモイでかさだ。
河童「星を読む気なんだ。月を取り込んで、地球を観測するために。」
氷精「・・・どういうこと?」
河童「数年前から、月が見えなくなってね。」
河童「正確に言うと、連絡が取れなくなったんだ。それで慌ててるわけ。永遠亭は。」
河童「もう山には神々はいなくなって、物好きな天狗と厄神は人里で暮らしてる。」
氷精「紅魔館はどうした?」
河童「それは天狗様に聞いた方がいいね。奴の住所を教えるから。」
氷精「どうなったんだ?」
河童「コーヒー、飲まないの?」
河童が、かき回して以来手を出さずにいたあたいのカップを指差す。
別に見返りという訳ではないと思ったが、礼儀というか、よく分からない脅迫観念に押され、口に運ぶ。
河童「・・・あんたは、あの吸血鬼と仲が良かったね。」
氷精「・・・・・・・。」
河童「だったらそれを聞くのはおかしいな。どうせ行くなら、知る楽しみを享受すべきだ。」
河童「今の生活は、そういう事も楽しまなきゃいけないくらいドライなの。」
河童「妖精のアンタを迎えに来たのも、暇だっただけ。」
氷精「・・・河童・・・。」
河童「大丈夫よ、死んでるわけじゃないさ。状況が変わってるのはどこも一緒。あの頃とはね。」
氷精「そ・・・そうか・・・。」
コーヒーをテーブルの端に追いやる。見た目に中身は伴わないと良く言うが、それは極稀な事なのだ。
この街のように、この飲み物は死んでいる。
河童「妖精的には、ここの珈琲はどうなんだい?」
氷精「・・・正直ここまで不味いとは思わなかったよ。」
氷精「これはあれだ、死の味よ。」
河童「幻想郷は死んだんだ。そう思わない?」
そう言うと、河童は残りのコーヒーを喉に流し込んだ。
――――――――――――――――――――――――
「幻想都市」という動画を作った時の、その製作段階に描いたSSの加筆修正ver.です。
この時はまだ「紅魔妖精」の案が無かったため、チルノの設定が違ったりして面白かったです。
これはチル姉編ということで、まだまだいっぱい文章があるんで、暇を見つけて手直ししながら載せていこうかと。
まぁ、俺の文章ですので本当に読みづらいとは思いますが、いよいよ暇を持て余すような事態になったら流し読みして頂くくらいのしょぼい作品なんで、ゆるりと。
【続き】
そう言うと、河童は残りのコーヒーを喉に流し込んだ。
河童「理想と現実は大抵釣り合わない。このコーヒーも、そう。」
あたいがふと携帯――という機械らしい――の画面を見ると、もう二時間もこいつとここにいる事が分かり、気が滅入った。
この泥のような味がするコーヒーを出すこの店に、だ。正直キモイまずさだ。
河童「あんたはこのコーヒーに期待した。希望とはもっと鮮やかな色の事さね。」
氷精「常識の限りに思ったまでよ。まさかここまで悲惨だとは思わなかったけど。」
空は灰色に染まり、周りはビルで囲まれ常に騒音が鳴り響く。
タイヤのない自転車のような乗り物に乗ったオヤジが、荷物を満載しながら前の通りを通り過ぎる。
往来は途切れる事無く、忙しない人と妖怪の群れが行き交う、さながら百鬼夜行だ。
良く分からない機械が、あたいの冷めたコーヒーをスプーンもろともテーブルから奪い去る。
河童「そもそも妖精にブラックコーヒーは合わないね。」
氷精「それもそうだけど、ここもよ。」
河童「死んでいる。ブラックというより、ダークね。」
河童「いや、カオスかな?」
河童のにとりは、首元のコードを引っこ抜きながらあたいの顔を覗き込む。
そしてメモリーカードを差し出した。
河童「これが私の外部記憶だよ。地図もこの中に入ってる。」
氷精「あんたは、オイルでも飲んでいた方が似合ってるな。」
河童「ほんっとに馬鹿っぽくない馬鹿になったね。」
氷精「・・・空気が悪くてね。」
咲夜がいなくなってから、どのくらい経ったかは分からないが、いつの間にか幻想郷はあたいの知らない世界になっていた。
あたいの湖も排水処理施設だかなんだかに変わっていたし、紅魔館も無くなっていた。
あたいが気付いたとき、目の前には一台のカラクリ車が止まっていて、その中から出てきたのがにとりだった。
変わり果てた世界の、変わり果てた妖怪だった。
河童「別に私は、罪悪感も何もない。」
河童「核エネルギーによる産業革命は止めようも無い勢いだったし、私だって喜んで協力したもんさ。」
河童「外の世界の状況が、上手く重なっちゃったんだよ。」
あたいはこのサイボーグカッパに連れられて、幻想都市―――そう呼ばれているらしい―――の西区にあるしょぼくれた喫茶店で、ことの顛末を聞いているわけだ。
良く分からない機械が、あたい達の前にコーヒーを差し出した。
かき混ぜてみるが、ドロドロとしていて口に運ぶ気にならない。どうやったらこんなにジェル状になるんだ?
河童「あらゆるものが幻想入りしてね。さながら高度経済成長さ。」
気にせず河童は黒濁液を飲み込んでいる。こいつらの燃料か何かじゃないのか、この液体は。
氷精「外は、一体どうなったの?」
河童「分からない。観測が出来ないのよ。ジオ・フロートにいる月の民でも分からない。」
河童「現人神が改造した山でもね。ここからも見えるだろう?」
摩天楼の向こうに、黒く巨大な建築物が見える。かつて妖怪の山と呼ばれ、多くの神々が暮らしていた場所だ。
噴煙を上げながら不気味な機械音を響かせるそれは、さながらバベルの塔のように聳え立っている。
正直言ってキモイでかさだ。
河童「星を読む気なんだ。月を取り込んで、地球を観測するために。」
氷精「・・・どういうこと?」
河童「数年前から、月が見えなくなってね。」
河童「正確に言うと、連絡が取れなくなったんだ。それで慌ててるわけ。永遠亭は。」
河童「もう山には神々はいなくなって、物好きな天狗と厄神は人里で暮らしてる。」
氷精「紅魔館はどうした?」
河童「それは天狗様に聞いた方がいいね。奴の住所を教えるから。」
氷精「どうなったんだ?」
河童「コーヒー、飲まないの?」
河童が、かき回して以来手を出さずにいたあたいのカップを指差す。
別に見返りという訳ではないと思ったが、礼儀というか、よく分からない脅迫観念に押され、口に運ぶ。
河童「・・・あんたは、あの吸血鬼と仲が良かったね。」
氷精「・・・・・・・。」
河童「だったらそれを聞くのはおかしいな。どうせ行くなら、知る楽しみを享受すべきだ。」
河童「今の生活は、そういう事も楽しまなきゃいけないくらいドライなの。」
河童「妖精のアンタを迎えに来たのも、暇だっただけ。」
氷精「・・・河童・・・。」
河童「大丈夫よ、死んでるわけじゃないさ。状況が変わってるのはどこも一緒。あの頃とはね。」
氷精「そ・・・そうか・・・。」
コーヒーをテーブルの端に追いやる。見た目に中身は伴わないと良く言うが、それは極稀な事なのだ。
この街のように、この飲み物は死んでいる。
河童「妖精的には、ここの珈琲はどうなんだい?」
氷精「・・・正直ここまで不味いとは思わなかったよ。」
氷精「これはあれだ、死の味よ。」
河童「幻想郷は死んだんだ。そう思わない?」
そう言うと、河童は残りのコーヒーを喉に流し込んだ。
――――――――――――――――――――――――
「幻想都市」という動画を作った時の、その製作段階に描いたSSの加筆修正ver.です。
この時はまだ「紅魔妖精」の案が無かったため、チルノの設定が違ったりして面白かったです。
これはチル姉編ということで、まだまだいっぱい文章があるんで、暇を見つけて手直ししながら載せていこうかと。
まぁ、俺の文章ですので本当に読みづらいとは思いますが、いよいよ暇を持て余すような事態になったら流し読みして頂くくらいのしょぼい作品なんで、ゆるりと。
【続き】
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コメント
おぉ・・・
読みづらくはないですよ。
全然サクサク読めます。
今の幻想郷(技術レベルは明治大正くらい?)から、
100年くらい経ってるんでしょうか。
幻想郷に今のものをむやみに幻想入りさせちゃいかんなと思いました。
ゲームとかテレビとかくらいでいいですねw
読みづらくはないですよ。
全然サクサク読めます。
今の幻想郷(技術レベルは明治大正くらい?)から、
100年くらい経ってるんでしょうか。
幻想郷に今のものをむやみに幻想入りさせちゃいかんなと思いました。
ゲームとかテレビとかくらいでいいですねw
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文字だけなのにそこはかとないリーチャ臭、これはきっとまた心にどしんと来たりするんですね!いろんな意味で!!
続きも楽しみです。鬱展開だったりするのかな・・・
とりあえず幻想都市見直してきます。
P.S
氷精「あんたは、尿でも飲んでいた方が似合ってるな。」
・・・・・・俺・・・最低だ