IT業界でレドモンドと言えば、米ワシントン州シアトル都市圏で米Microsoftのお膝元として有名だが、その本社キャンパスの大規模なリノベーション計画が発表された。2018年秋に着工し、5~7年をかけて完了を目指す。
シアトルはそれほど大規模な都市ではなく、周囲が森や湖に囲まれている他、ワシントン大学という著名な教育機関もあり、落ち着いた環境での生活や仕事を好む人には非常に適した場所と言える。
米Microsoftは、そんなシアトル郊外地域のイーストサイドにある都市のレドモンドを1986年から拠点とし、拡張を続けてきた。500エーカーもの広大な土地(東京ドーム43個分と聞いて想像できるだろうか)にキャンパスを構えており、今や小規模な都市と言えるほどだ。
今回のリノベーションプロジェクトでは、現在Microsoftキャンパス内にある670万平方フィート(約62万m2)の土地が建物を含めて造成され、新たに18のビルが建造される。結果、現在125棟のビルが131棟にまで拡張され、従業員数も現在の4万7000人から最大で8000人以上が新たに同エリアで働くことが可能になるという。
最近では米カリフォルニア州クパチーノにある米Appleの新本社キャンパス「Apple Park」の稼働開始が話題になったが、同様のプロジェクトが今後数年をかけてMicrosoftでも実施されるわけだ。同社は完成後のイメージ映像の他、実際にどのようなリノベーションが行われるかの解説ビデオをYouTubeで公開している。
キャンパスは非常に広大なため、移動には車または構内を周回するバスを使う。敷地には一般車も進入してくる他、キャンパスは真ん中で高速道路(フリーウェイ)によって分断されているため、離れた場所への徒歩での移動は非常に困難だ。最近では自転車なども活用されているようだが、やはり歩行者向けの場所とは言いがたい。
そこでリノベーションにより歩行者専用エリアを拡大し、こうした徒歩での往来を助ける構造となる。また、フリーウェイ上には専用の歩道を設け、2つのキャンパスエリアを徒歩で移動できるようにつなぎ合わせる。
Windows 10の地図アプリやGoogleマップなどで確認すると分かるが、われわれ部外者がMicrosoftキャンパスを訪問する際に訪れるのは北西エリアにある「Visitor Center」(Building 92と呼ばれる)だ。ここにはカンパニーストアや各種スタジオなどの設備が集中している。
一方で、今回リノベーションの対象となるのはBuilding 1など、比較的若い番号のビルが立ち並ぶ南東側の一角で、ここを歩行者向けのエリアなどに改造する形だ。フリーウェイをまたぐ陸橋は、この2つのエリアを結ぶことになる。
もう1つ興味深いのが、動画のラストの方でも登場する「Link Light Rail」という公共交通機関だ。
もともとシアトルの主要交通機関はバスで、住人の移動も車中心の社会だったが、2009年以降にシアトルエリアにライトレール型の公共交通機関が開通。シアトル=タコマ空港からシアトルのダウンタウンへの移動が容易になった。
しかし現在もなおシアトルとは湖の対岸にあるレドモンドやベルビューのエリアとの接続はバスや車に頼っており、旅行者が空港やシアトルのダウンタウンからMicrosoft本社キャンパスに行こうとした場合、レンタカーを使用しない限りは、バスを使って「行くには行けるが非常に時間がかかる」状態でアクセスが悪い。
これが2023年以降にはシアトル方面からベルビュー・レドモンド方面へと抜けるLink Light Railの延長区間工事が完了し、アクセスが格段によくなるのだ。しかもリノベーションされるMicrosoftキャンパス新区画の目の前に同ライトレールの駅が新設される予定で、以前よりも手軽にMicrosoft本社を訪れることが可能になる。
Pike Place MarketやStarbucks 1号店などとは異なり、観光客が訪問すべきエリアかどうかは分からないが、興味のある方はプロジェクト完了後に是非現地で確かめていただきたい。
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