企業の人手不足、49.1%が正社員不足 「求人難」型の倒産が前年比2.2倍に増加

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 企業の人手不足が深刻化している。求人難を原因とした倒産が増加しており、景気回復に水を差す恐れもありそうだ。

 帝国データバンクは全国の企業2万3,235社を対象に人手不足に対する企業の動向調査を実施し、その結果を11月22日に発表した。調査期間は10月18日から31日で、有効回答企業数は1万214社。

 現在の正社員の過不足状況を聞くと、49.1%(該当なし・無回答を除く 以下同じ)の企業が「不足」していると回答し、3カ月前の7月調査時より3.7 ポイント増加、1年前の調査時より7.3 ポイント増加した。「適正」は42.7%、「過剰」は8.2%だった。

 業種別に「不足」と回答した企業を見ると、ソフト受託開発などの「情報サービス」が70.9%で最も高く、以下、「メンテナンス・警備・検査」(64.3%)、「運輸・倉庫」(63.7%)、「建設」(63.5%)などが続いた。企業の規模別では「大企業」が56.4%で3カ月前から4.6ポイント増加、「中小企業」が47.2%で同3.5ポイント増加、中小企業のうち「小規模企業」は42.2%で同3.4ポイント増加した。

 非正社員の過不足状況を聞くと、「不足」が31.9%で、3カ月前より2.5ポイント増加、1年前より4.7ポイント増加した。「適正」は61.7%で、「過剰」は6.4%だった。業種別に「不足」と回答した企業をみると、「飲食店」が80.5%で最も高く、以下、「飲食料品小売」(60.9%)、「人材派遣・紹介」(59.1%)、「メンテナンス・警備・検査」(55.2%)が続いた。企業の規模別にみると「大企業」が34.3%、「中小企業」が31.3%、中小企業のうち「小規模企業」が29.6%となった。

 一方、東京商工リサーチは11月9日、10月の「人手不足関連倒産」について発表した。それによると、10月に発生した人手不足関連倒産は39件で前年同月の22件を上回り、調査を開始した2013年以降で最多件数を記録した。それまでの最高は2015年6月の38件だった。内訳をみると、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が29件(前年同月17件)、中核社員の独立・転職で事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が5件(同1件)、人材確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が4件(同3件)、賃金等の人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型が1件(同1件)だった。

 また、1月から10月までの累計では、人手不足関連倒産が269件(前年同期270件)発生し、倒産件数が全体的に減少する中、ほぼ前年並みで推移している。また、「求人難」型の倒産は前年同期比121.4%増の31件(同14件)で、大幅に増加した。

 企業の人手不足感が一段と増している中、求人難による倒産件数が増加しており、今後の動向が注目される。

サイトウ イサム[著]、加藤 秀行[著]

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