警官名挙げ「核心」証言 愛知県警捜査情報漏えい 博多金塊盗被告、法廷で

 福岡市のJR博多駅近くで昨年7月に約7億6千万円相当の金塊が盗まれた事件で、主犯格とされる野口和樹被告(42)=窃盗罪で起訴=の勾留理由開示手続きが30日、福岡地裁(浦恩城泰史裁判官)であり、野口被告は「愛知県警の警察官から福岡県警の捜査状況を教えてもらった」と証言した。

 事件を巡っては、愛知県警の複数の警察官が捜査情報を漏えいした疑いが浮上しており、同県警は地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで調査を進めている。

 野口被告の意見陳述によると、昨年12月に金塊盗事件に絡んで指定暴力団山口組系組幹部の男から脅迫され、知人を通じて知り合ったこの警察官に相談。恐喝事件を立件するため協力を求められたという。

 その後、警察官と接触を重ねる中で「(昨年)12月に通信傍受法が改正され、全国の警察が申請している。(来年の)2、3月に傍受が入るから気をつけて」「福岡県警が10人態勢で入る」などの情報提供を受けたという。福岡県警は3月2~15日、通信傍受法に基づき野口被告らの携帯電話を傍受していた。

 さらに弁護人は、この警察官が「福岡県警が(金塊盗事件の)捜査対象を特定している」として、野口被告を含めた複数の名前を伝えていたことも明らかにした。

■「福岡県警が入る」 「通信傍受される」

 「愛知県警本部捜査4課の刑事から捜査情報を聞いていました」。JR博多駅前の金塊窃盗事件を巡る捜査情報漏えい疑惑。事件の主犯格とされる野口和樹被告(42)は、30日の福岡地裁の法廷で、警察官の名前を挙げて疑惑の核心に触れた。

 野口被告は本紙が金塊盗事件の発生を報じた昨年12月にこの警察官と接触。事件に関与したことを自ら告白したが、野口被告は逮捕されなかった。

 なぜか。野口被告は金塊事件を巡り指定暴力団山口組系組幹部から脅されており、警察官に相談していた。恐喝事件の立件を優先させるため、野口被告の協力を得たかったとみられる警察官は接触の過程で、金塊盗事件について「福岡県警が十数人態勢で入る」「2月か3月に通信傍受される」などの情報を提供してきたという。野口被告は「(愛知県警の)上が福岡県警の捜査3課とつながりがあり、情報が流れてくると説明された」と述べた。

 野口被告は最初の相談の際、金塊盗事件は事前に金塊を盗まれた被害者側と合意があった「出来レース」であることなどを伝えていたという。このため、捜査情報を提供してくれる警察官に対し「福岡県警の事情聴取や逮捕もなく、出来レースを信用してバックアップしてくれていると思っていた」と語った。

 野口被告は今年7月、名古屋地裁であった恐喝事件の勾留理由開示手続きで「情報漏えいはなかった」と説明。今回、証言を一転させた理由について、弁護人に「当時は警察官を信用しており、かばうためだった」と話しているという。

 金塊盗事件を巡っては、愛知県警の別の警察官が無料通信アプリLINE(ライン)で野口被告側に捜査情報を漏えいしていた疑いもあり、同県警が慎重に調べている。

=2017/12/01付 西日本新聞朝刊=