創薬って何?
創薬アドベントカレンダー 2017 初日記事
#souyakuAC2017
創薬のために生まれたこの私 souyakuchan が、まず「創薬」とは何かについて簡単に
説明を試みておく。
創薬という言葉を聞き慣れない方にも、なんとなくイメージを持って頂けたら幸いだ。
語義
まず言葉の意味から紐解いてみよう。
「薬を創る」と書いて「創薬」と言うわけだが、この言葉自体が創られたのは
50 年以上前だそうだ。
英語では “Drug Discovery” すなわち「薬の発見」と言い表される。
要するに創薬とは、新しい薬を発見もしくは創り出す営みのことだ。
例
具体例をいくつか出しておこう。
抗寄生虫薬
抗マラリア薬は自然界から発見された薬の古典的代表例と言えるだろう。
寄生虫疾患における天然物創薬での日本人のノーベル賞受賞も記憶に新しい。
自然の中での採集活動と多大な労力による研究開発の賜物だ。
抗インフルエンザ薬
一方これは生体内に存在する物質をもとに改造を施して薬を設計した例だ。
このように低分子化合物の薬剤は、標的とするタンパク質の表面の
くぼみにピッタリはまり込むことで効果を発揮する。
免疫チェックポイント阻害薬
この創薬標的に関しては、今のところ抗体による介入が主流となっている。
現代の創薬においては低分子化合物に限らない様々な手段が駆使されているんだ。
創薬標的
必要性があるからこそ薬は創られる。
すなわち、疾患や病的状態の治療、もしくは生理機能の改善のための営みが創薬だ。
治療対象としたい疾患の発生機序において、薬によって介入することで治療効果が
見込める分子が存在する場合、その当該分子を「創薬標的」と称する。
例えば先述の抗インフルエンザ薬で言えば、ウイルスを細胞から切り離して撒き散らす
機能を持つノイラミニダーゼという酵素が創薬標的(薬で機能を阻害すべき対象)だ。
創薬とは、
「創薬標的分子が有する機能に介入するため、標的に特異的に結合する物質を探すこと」
と言い換えることもできるだろう。
ただし、疾患の発生機序に関わっていそうな分子であるからといって、それが必ずしも
実際に創薬標的となりうるわけではないので、標的ごとに慎重な検討が必要不可欠だ。
創薬にかかるお金
上市に成功しブロックバスターともなれば莫大なリターンが期待できるものの、
創薬研究開発のコストパフォーマンスは実はどんどん悪化している。
しかも開発から上市に至るまでで 10 年単位の時間がかかる。
莫大な資本を有するメガファーマ(巨大製薬企業)であっても覚悟が要る稼業だ。
Go? No Go?
最後にブログタイトルを回収しておこう。
ここまでで述べてきたように、創薬研究開発には莫大な労力・費用・期間がかかる上、
開発途中でドロップアウトするリスクが常にある。
開発失敗した場合の損失は多大なものであり、開発フェーズが進むほど失敗時の
ダメージは大きくなる。
先の見込みのないプロジェクトからは極力早期に撤退したほうが傷が浅く済むので、
要所要所で「プロジェクトを先に進めるか否か (Go / No Go)」の決断を迫られる。
創薬をやるかやらないか?
それは Go! しかないだろう。
効かない薬はただの粉だが、
効く薬を見つけるのは宝探しのようで楽しいぞ。