SNS(交流サイト)の普及に伴い、SNSに見栄えのよい画像をつけた投稿を載せることが盛んになった。それにあわせて注目が高まっているのが、画像など投稿を分析するサービスだ。スナップレイス(東京・品川)は飲食店や観光関連事業者に対し、投稿が「SNS映え」するかを分析し、改善策を助言するサービスを始めた。商品づくりまで支援している。
11月上旬、東京都千代田区にオープンしたラーメン店「かのと」1号店。飲食店を運営するアスラポートの新業態だ。一推しメニューのラーメン「SPかのと肉道」は、1切れの厚さが約1センチメートルのチャーシューを10切れもぜいたくに使ったのが特徴。同社では「合計で10センチメートルという規格外の肉の厚さは、SNS映え間違いなし」(担当者)と期待を寄せる。
メニューは早速SNS上で反響があり、ツイッターで拡散されている。アスラポートと共同で、SNS映えを狙ったそのラーメンを開発したのが、スナップレイスだ。
分析サービスの名は「スナップレイス・コンシェルジュ」という。まず人工知能(AI)を搭載した画像解析システムによって、顧客である飲食店や観光地の写真が現状、どの程度SNS映えするかを分析する。6項目をそれぞれ5点満点で評価する。
スナップレイスの担当者も現場に出向き、消費者目線で写真を撮影する。評価項目は、商品を写真に撮ったときに彩度が高いかどうかのほか、雑誌に掲載されるようなアングルかどうか、あり得ないものの組み合わせといった意外性があるかどうかなどとなる。
飲食店や観光地のどういった場所がSNS映えするのか、SNS映えを狙って取り組んだことが、実際どの程度効果があるか。その結果を踏まえ、スナップレイスの担当者が、SNS映えするよう改善し、SNS経由での集客を増やすための改善案を顧客に提案する仕組みだ。これまでに飲食店を中心に約10件の改善を担った。
「SNSは友達と話すような感覚で投稿されることが多いので、消費者の本音が多い。SNSで話題になれば情報が拡散し、集客に好影響が出る」。スナップレイスの椛島誠一郎代表は話す。実際、一般的にSNSをきっかけに飲食店や観光地がはやる例が増えている。「例えば飲食店は駅から近いなど立地が重要だが、SNS映えを生かせれば駅から遠くても来てもらえる可能性もある」(椛島代表)という。
同社は2016年3月に設立されたベンチャー企業だ。分析サービスに加え、SNS映えの基準を満たす観光地や飲食店を抽出し、SNS映えする場所だけを集めた地図のサイトも運営する。それぞれの場所の概要のほか、インスタグラムにアップされた写真やツイッターの投稿を一覧できる。現在、約6千カ所のスポットを紹介し、月間で120万回ほど閲覧されている。
インスタグラムの利用者から画像や動画の販売権を取得したうえで、SNS映えの基準を満たす画像や動画を企業などに販売したり、同社に登録するインスタグラマーを派遣したりする事業も手がけている。
ニールセンデジタルの調査によると、17年10月時点で国内のインスタグラムの利用者数は約2497万人と、2年で2.4倍になった。ツイッターも1割強増の3693万人に上る。今後も増加傾向が続くとみられるなか、スナップレイスはSNSの画像分析サービスに対する需要は順調に拡大するとみてノウハウを高めていく考えだ。
(小田浩靖)
[日経MJ2017年11月29日付]