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問われるアイヌ民族への謝罪と先住権の具体化
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2013/10/02 12:33
アイヌ民族は日本の先住民族である。長らくこの事実を認めてこなかった日本政府は、2007年に世界先住民族権利宣言が国連で採択され、自身も賛成投票するに及び、あわててアイヌが先住民族であることを認定した。2008年洞爺湖サミットを直前に控え、国連人権理事会の「外圧」に屈する形で認定されたこの事実は、日本民族のアイヌ民族に対する歴史的無知・冷酷さをさらけ出した。このため、政府は急遽「有識者懇談会」を設置して反省のポーズを示し、「政策推進会議」で貧窮したアイヌに対する施策を図るとした。だが、今日に到るまで論議された内容は北海道・白老の「象徴的空間」が中心で、アイヌに対する謝罪はなく、「先住権」論議は皆無であり、教育、福祉、文化は行政当局に委ねられ、補償、自立化基金、参政権は顧みられていない。「国民の理解がない現状」ではそれがアイヌのためになるというのが政府官僚の言い分だが、「国民の理解」を妨げたのが政府である以上、謝罪から出発し先住権の具体化に努力するのが政府の努めではないか。
日本のサバルタン(従属的社会集団)であるアイヌ民族は、帝国主義的近代化のために植民地支配され、土地を強奪され、狩猟を禁止され、最底辺労働力化され、同化政策の下で言語・文化・風俗・習慣を一方的に禁止・変更され、「滅亡する民族」の道を歩まされた。最近の日本版・映画『許されざる者』はその一端をリアルに描き出している。だが1970年代の教育学園闘争は知の権力たる大学教育・研究の侵略性・人民抑圧性を告発し、アイヌは「滅亡する民族」の道に誘う和人を糾弾して「新しい社会運動」の一角に登場し、階級還元論的な解決を求める左翼にも反省を求めた。この闘いはアイヌの先住民族としての歴史を反省し、和人への同化を拒否して民族的主体性を培い、民族文化の復活と保存を図る知的・モラル的な闘いであった。とりわけコミュニケーション軽視の「糾弾主義」的限界を克服する90年代以降の「人権と共生」への転回は、その行為の人間的意味と価値を求めており、A.グラムシ『獄中ノート』を継承するG.スピヴァク「サバルタンは語ることができるか」やS.ムフなどポストモダン系の寄与が大きい。
2007年国連決議以降、世界の先住民族運動は前進している。ボリビア、エクアドルなどでは先住民族の政権が生まれ、COP10(生物多様性条約)では希少資源をめぐる多国籍企業の略奪を規制する成果を勝ち取り、若者世代の一か月有余にわたるアイヌモシリ-アオテアロア交流では、マオリ民族による1970年代以降の言語・文化・社会・政治諸側面における目覚しい復興を現地で研修してきた。しかし日本では、政府の「多文化共生」を標榜した懐柔策(象徴的空間)に翻弄され、北海道アイヌ協会は「謝罪要求-補償-先住権論議」を消極化し、不正経理を追及されて政府助成金づけの弱点を露呈している。本当に多文化主義に立脚するなら、政府はそうしたアメとムチを用いた手段でアイヌを沈黙させるべきではない。いまアイヌ民族諸団体はNPO(非営利事業)を設立して経済基盤づくりに力を注いでいるが、さらにガバナンス(団体としての自己統治力)を高め、アイヌ協会に代わる全国的な代表組織を形成すると同時に、外交的な交渉力育成が求められる。「第二次世界の先住民族の国際10年」を締めくくる2014年9月の国連特別総会に日本代表団の一員として参加すると同時に、日露両国によって不当に分割支配されてきた北方諸島交渉への異議を発信すべきであろう。
(本多正也)
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