第71回毎日出版文化賞(特別協力=大日本印刷)の贈呈式が30日、東京都文京区のホテル椿山荘東京で開かれた。受賞した5作品の著者と出版社に賞状などが贈られた。
文学・芸術部門の古処誠二さんは受賞作の小説「いくさの底」(KADOKAWA)について「初めて担当編集者さんのアドバイスに耳を傾けて書いた。この賞を古処に与えて間違いなかったと言われるような作品を書いていきたい」とあいさつ。「ゲンロン0 観光客の哲学」(ゲンロン)で人文・社会部門を受賞の東浩紀さんは「今は思想や哲学が困難な時代だが、もっと自由で知的な空間を作っていきたい」と決意表明した。
自然科学部門の「歌うカタツムリ」(岩波書店)の千葉聡さんは「カタツムリを通し、進化や科学とは何かを語りたかった」と振り返った。企画部門の「新約聖書 訳と註 全7巻(全8冊)」(作品社)の田川建三さんは「得た知識を分かりやすい文章で世の中に公開するのは学者として当然の義務だから、受賞は照れくさい」と会場を笑わせた。
特別賞の「バッタを倒しにアフリカへ」(光文社)の前野ウルド浩太郎さんは、定期的にバッタの調査に訪れているアフリカ・モーリタニアの白い民族衣装を着て登壇。「人に薦めたくなる本を、と編集者さんと誓い合って作った」と喜んだ。【鶴谷真】