永守重信 日本電産会長兼社長 講演
私は1973年に京都の自宅で日本電産<6594>を創業した。来年で45年になる。この45年間の成長の過程は基本的にはオーガニックの成長は50% 。M&Aが50%。M&Aがなければ現在の売上高は半分。成長できたのはM&Aのおかげ。ただM&Aは規模を拡大するために行うのは間違い。強い企業を作るためにM&Aを活用するのが大切だ。
倒産寸前の会社を買う
1980年代からM&Aを始めた。当時は会社の規模は非常に小さくて買収する資金もなく、そんな中でどういう会社を買えばいいのかと考え、安い会社を買ってきた。海外で安く買うのは難しいため、国内中心に買った。安いという事は倒産寸前ということ。倒産した会社は買わないが、倒産する寸前の会社は買う。多くの時間かけ、その会社の価値を上げてきた。
2000年以降は企業の規模も大きくなり資金もできたので、海外企業を買うようになった。欧米企業は最も価値が高いときに売る。それにさらに化粧をする。それをそのまま買うと高くなる。のれん料も取られる。例えば利益率が10%だとすると、のれん料が5%ほどかかり、利益は残りの5%しかない。この状態から始まるため、海外の企業を買収するにはリスクがある。
M&Aの3つの条件とは
M&Aには3つの条件がある。まずは価格。日本の企業は海外企業を高く買っている。なぜそんなに高い値段で買うのか。日本電産には永守式企業価値算定方式があり、これに合わないものは買わない。この企業が買えなければ競争相手にとられてしまって困るという時には、買うことがあるが、基本的には計算式に合わないものは買わない。価格算定方式を持っていないと高く買うことになる。価格の算定の基準を明快にしておかなければならない。
次は誰がその会社のPMI(Post Merger Integrationの略。M&A成立後の統合プロセスを指す)をやるのかということ。日本人が海外企業のPMIや経営をやるのは至難の業。日本人で海外のそれなりの規模の企業を経営している人はほとんどいない。日本人がやるのは意識改革だ。現地を訪れ経営方針などをしっかりと伝えなければならない。実際の経営は現地に人に任せ、あくまでも株主と言う立場からその会社の経営に関わるのが大切。
詰め物買収が収益の根源
3つ目はシナジー。欧米の企業は最高の値段で売る。1番業績の良い時に価格をつけ、それに化粧するため、買った後にそれ以上の価値をつけるのは難しい。これを解決するにはシナジーしかない。日本電産には詰め物買収と言う考えがある。城には大きな石垣がある。大きな石の間に細かい石がいっぱい詰まっている。このため地震があっても城は壊れない。大きな石を支えている、小さな石にあたる会社を2、3社買うのが詰め物買収で、これが収益の根源となる。どういう会社を買えば大きな石が強固になっていくかを考えて買う。例えばモーターの会社でありながら、主要部品であるステーターを外から買っている企業は、巻き線機のメーカーを買う。これが詰め物で、これで大きな石が強くなる。