2017年12月1日(金)

【論説】東海第2の延長申請 地元理解欠かせず

日本原子力発電(原電)は来年11月で運転から40年となる東海第2原子力発電所について、20年の運転延長を原子力規制委員会に申請した。これに先立ち、再稼働に関わる“事前了解”の権限を、県と東海村のほか周辺自治体に拡大する意向を表明した。再稼働には多くの課題が山積する中、一歩踏み出した格好だ。規制委の厳格な審査はもとより、地元理解が最優先であり、避難計画の策定、原電の将来像も問われる。県民は関心を持ってこの問題に向き合っていく必要があろう。

東海第2を取り巻く環境は厳しい。半径30キロ圏内に96万人が暮らし、県庁所在地の水戸市もその中に位置する。首都圏に立地するだけに、重大事故が起これば本県ばかりか首都東京にまで影響を及ぼしかねず、日本の政治、経済の中枢に関わることになる。福島の現実を踏まえれば、いかなる原発であっても、あのような事故は二度と起こしてはならないという原点は肝に銘じるべきである。

そうした中で地域の理解を得られるのか、原電が背負う課題は大きい。県内では44市町村中17市町村議会が20年の運転延長に反対する意見書を可決。衆院選に合わせて茨城新聞社が行った世論調査では、再稼働に「反対」と答えた人が6割に上っている。今回、原電が事前了解の権限を東海村も含め周辺6市村に拡大することを表明したことは地元にとっては大きな前進である。広く地域の理解を得ることは必須事項であり、原電はその作業に全力を挙げることになろうが、そのハードルが高まることは間違いなく、一方で地元自治体がどう民意をくみ上げていくのか問われることになる。

現在、県、東海村と原電が結ぶ原子力安全協定に法的拘束力はない。原子力施設の新増設、変更などを行う場合、事前に県や村の了解を得るものとしているほか、安全面から立ち入り調査や運転の停止、改善を求めることができる。事前了解はそうした点を踏まえての紳士協定的な位置付けとなる。原電が周辺6市村とどのような協定を結ぶか、詰めの作業が残っており、その中身を注視したい。

避難計画は大きな課題だ。30キロ圏内の自治体では過酷事故に備えて避難計画作りが進められている。避難先となる市町村との協定締結は行われているが、計画の策定とその実効性には困難が伴っている。多数の人口と広がる市街地は難題だ。住民の理解を得られる計画でなくてはならず、その周知も欠かせない。

原電の経営的側面にも関心を持たざるを得ないだろう。所有する4基のうち2基は廃炉となり、残る東海第2と敦賀2号機は再稼働のめどが立っていない。収益の根幹を成す原発が稼働していないのだ。一方で、現在と将来にわたり4基全ての廃炉事業を担い、保管されている使用済み燃料の処分も課題となる。再稼働の有無にかかわらず、こうした業務に引き続き対応していく必要がある。新増設が厳しい環境にある中、原発専門の発電会社として将来にわたって安定した収益を確保しどういう形で存続していくか、経営の道筋をつけていくことも急務である。

廃棄物、プルトニウム、再処理、廃炉、福島復興など国の原子力政策は多岐にわたって課題やほころびが生じており、原電一企業にとどまらず、国、業界挙げて検討すべき点も数多くあるだろう。

2017 年
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