前回のブレードランナーは30年以上も前の上映でした。その後、熱狂的なファンが増え近未来SFに多大な影響を与えています。
降りしきる酸性雨。日本の新宿を思わせるようなネオン街。アジアのマーケットのような雑多な路地。2019年の舞台の映画はは2017年が終わろうとしている今でも遠くかなたにあるような感じを受けます。
今年はAI元年といってもいいほど、いろいろなところで話題になりましたが、まだレプリカントはできておらず、今できるのはスピーカーから声で反応するだけです。
ブレードランナーは、レプリカントと呼ばれる人造人間を取り締まる人たちの通称で、第1作はレプリカントの悲哀と恋愛の話でした。今作はそれから30年後の2049年が舞台になって居ます。その30年間に何があったかは、以下のアナザーストーリーで展開されています。
ブレードランナーの世界を知るならぜひ見てみてください。
前作のブレードランナーの世界から広がった作品はたくさんあって、ファイブスターストーリーズは人造人間ファティマと人間との間に子供が生まれる話だし、攻殻機動隊は体が機械になってしまった時に、人間の意識はどこにあるのかという話だし、バーチャルの彼女との話はherという映画につながっています。
今回の主人公はレプリカント(人造人間)のK。レプリカントは人間に絶対服従で裏切らない。生殖器はあっても子供が出来ない。人間を上回る力を持っていても絶対服従な姿は、大型犬の飼い犬とダブります。同僚から「人間もどき」と罵られ、誰ともつながれず孤独で唯一の拠り所はバーチャルの彼女のみ。そんなレプリカントのKは人間になりたいと願います。
だんだんとKは自分が特別かもと思い始め、女性に興味を持ち、自分が誰なのかを模索します。ふとこの行動は人間の中学生あたりの思春期と同じでは?となると人造人間であっても 大人になる=自我が芽生える というところを揶揄しているのかもしれません。
映画の中盤では、前作のレイチェルとデッカードとの間に子供が出来たかもという展開になります。レプリカントを子供を作ることで大量生産したい企業と、レプリカントの希望と未来と、それを恐れる人間側との三つ巴の争いが行われます。それに翻弄される”K” 自我の目覚めと共に、かわいそうな”K” にどんどん感情移入していきます。それは自分が辿った青春と同じで自分が特別なものと感じながら、アイディンティティが崩壊しても再構築するするからかもしれません。
レプリカントが人間になりたいと思い、人間の僕らはもしかしたら人間でないものかもしれないという恐れを抱くのはなんだかおもしろと思いました。自分は人間でないかもしれないという思いは、RADWIMPSの「棒人間」という歌がピッタリ合います。
SF作品の続編だし、難しそうと思うかもしれませんが、青年の成長物語としてとても良く出来ていると思います。美して悲しい物語なので、自分が何者なのかという疑問を持っている人に是非見て欲しいです。
宇多丸さんの「ブレードランナー2049」評もぜひ
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