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イクメンのスウェーデン人男性は本当に幸せ?|外交官に尋ねた「幸福大国」の本音

Text by Chihiro Masuho / COURRiER JAPON

PHOTO: SALLY ANSCOMBE

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480日間もの育休・産休制度に、待機児童ほぼゼロの充実した保育制度といった高福祉に支えられ、世界幸福度ランキングのみならず、男女平等ランキングの上位常連国になっているスウェーデン。

だが、スウェーデン人は男女平等で本当に幸せなのだろうか? 男も女も高額な税金のために汗水垂らして働きながら、家事も育児もやるなんてすごく大変なのでは?

──そんな身も蓋もない質問を駐日スウェーデン大使館のスベン・オストベリ参事官にぶつけたところ、返ってきたのは「男女平等社会のほうが、より生産的で豊かになれる」という超合理的な回答だった。

「経済成長」が男女平等を生んだ


──スウェーデンは、「男女平等先進国」としてまっさきに名前が出る国の一つですが、実際にそうなり出したのは最近のことだと聞きました。なぜ、スウェーデンでは男女の機会均等がうまく実現したのでしょうか?

スベン・オストベリ氏(以下、オストベリ) 1960年代、スウェーデンは経済の成長期を迎え、労働者不足に陥りました。そこで、移民を積極的に受け入れましたがそれでは足りず、女性も重要な労働力だと考えられるようになりました。

さらに、1972年に税制が夫婦合算式から個人単位に変わり、専業主婦のメリットが減少しました。さらに、同時期に180日間の出産・育児休暇制度(90%の所得保障)が導入されたこともあり、女性の社会進出が一気に進んだのです。

それまでは日本と同様、スウェーデンでも女性は「家庭を守る存在」でしたが、経済効率や生産性を上げるという理由で男女平等が浸透していったのです。

──世界各国の男女平等度合いを指数化した「ジェンダー・ギャップ指数」(世界経済フォーラム、2016)で、スウェーデンは144ヵ国中4位にランクインしていますが、日本は111位と先進国のなかでもかなり低い順位です。男女平等の観点で、オストベリさんが日本に来て驚いたことはありますか?

オストベリ 一番の違いは、日本の組織では、責任のあるポジションに就いている女性の数が限られていることです。特に政治の分野には女性が少なく、女性首相もいません。

安倍政権や多くのビジネスリーダーが、男女平等やワーク・ライフ・バランスの重要性を説いているにもかかわらず、政府、都議会、地方行政の大半を年老いた男性が占めています。

このような政治形態では、女性や家庭にとって重要な問題は議論されず、女性の意見ではなく中高年の男性の要望ばかりが反映されてしまいます。

一方、スウェーデンでは1994年に初めて男女同数の内閣が形成されました。現在の議会は44%が女性議員で、ほぼすべての政党が男女半々の人員構成になっています。

政府でも企業でも男女の占める率が等しくなると、そこで働く人間の「質」が上がるという研究結果もあります。男性優位社会だから仕事を得ていた男性は、優秀な女性が増えると職場を去らざるをえなくなりますから。結果、男女両方の人材の質が上がるのです。

駐日スウェーデン大使館のスベン・オストベリ参事官。スウェーデン大使館では、2017年9月29日まで、巡回写真展「スウェーデンのパパたち」を開催中
PHOTO: COURTESY OF THE EMBASSY OF SWEDEN


90%の男性が育休を取得


──スウェーデンはもう充分に男女平等が達成されているように思えるのですが、現在も男女格差を埋めるための取り組みはなされているのでしょうか?

オストベリ もちろんです。たとえば、スウェーデン男性といえば「イクメン」というイメージがあるかもしれませんが、父親と母親が取れる育休の日数はいまだに平等ではなく、女性の方が長期間、仕事を休んでいます。

しかし2015年、480日間ある育休のうち3ヵ月は父親しか取得できないことになりました。もちろん育休を取らないという選択もありますが、とらなくてもただ失効するだけなので、90%近くの男性が取得しています。

スウェーデン大使館でも最近、男性スタッフが半年の育休を取りました。

──日本でも男性の育休制度が徐々に導入されていますが、取得している人はまだ非常に少ないのが現状です。日本人男性のなかには、家計の大黒柱として働きながら家事や育児にも参加せよという風潮にプレッシャーを感じている人も多いのですが、スウェーデンの男性は重荷に感じてはいないのでしょうか?

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