キヤノン「EF70-300mm F4-5.6 IS II USM」は、価格.com「レンズ」カテゴリーのランキングで上位に位置する人気レンズ。ユーザー評価も高く、2017年11月27日時点でのユーザーレビューの満足度(5点満点)は「4.87」。特に評価が高いのはオートフォーカス(AF)で、なかには「Lレンズに匹敵する速度」という声もあるほどだ。航空機などを追従撮影した実写作例を交えて、この人気レンズをレビューしよう。
高速AFを実現したEF70-300mm F4-5.6 IS II USM(カメラボディは「EOS 6D Mark II」)
EF70-300mm F4-5.6 IS II USMは、焦点距離70~300mmに対応するフルサイズ対応の望遠ズームレンズ。望遠300mm以上で撮影できるフルサイズ対応のEFレンズは、2017年12月時点で古いものを含めて5モデルあるが、本レンズはその中でもっとも低価格。残り4モデルはすべて高性能な「Lレンズ」で価格も10万円を超えるが、本レンズの価格は52,000円程度(2017年11月27日時点の価格.com最安価格)。EFレンズの中では、比較的手に入れやすい価格の望遠ズームレンズとなっている。
本レンズが人気を集めているのは、低価格なことに加えて、AF性能が高いことにある。それを実現しているのが、小型・軽量な超音波モーター「ナノUSM」。ナノUSMは、キヤノン独自の超音波モーター「USM(Ultrasonic Motor)」をチップ状に薄型化したもの。小型ながらもUSMと同様に高トルク・高レスポンスなのが特徴で、スピーディーなAFが可能だ。静止画撮影だけでなく、動画撮影時にもなめらかなピント合わせが行える。
USMを小型化したナノUSMを採用。リングUSMを搭載するレンズと同様、AF後にフォーカスリングの回転操作だけでMFが行えるフルタイムマニュアルフォーカスにも対応している
レンズ上面に液晶画面を搭載しているのも本レンズのユニークなところ。側面の表示モードボタンを押すことで画面表示が切り替えられるようになっている。画面表示は「撮影距離」「焦点距離」「揺れ量」の3種類から1つを選択可能。焦点距離は、APS-C一眼レフに装着した場合、35mm判換算で表示されるのが便利だ。
EFレンズとしては初めて、レンズ上面に液晶画面を搭載する
撮影距離(左上)、焦点距離(右上)、揺れ量(左下)の表示に対応。表示モードボタンを長押しすることで反転表示(右下)も可能だ
レンズ右側に、ズームリングを広角端(70mm)で固定するスイッチを装備。左側には表示モードボタン、フォーカスモードスイッチ、手ブレ補正スイッチが備わっている
インナーズーム方式ではないので、ズーム時にレンズが伸びる(画像は望遠端300mm時)。フォーカスリングは電気リング方式で、回す速度によって移動量が変わる仕様になっている
レンズ構成は12群17枚。「UDレンズ」の採用で色にじみを抑えた高解像力・高コントラストな描写性能を達成。効果的なレンズ配置により、ズーム全域での高画質を実現しているという。最短撮影距離は1.2m。絞り羽根は9枚。手ブレ補正機構も高性能で、シャッタースピード換算で約4.0段分の補正効果を実現している。
レンズのサイズは80(最大径)×145.5(長さ)mmで、重量は約710g。焦点距離300mm対応の望遠ズームレンズとしては小型・軽量な筐体だ。
なお、同じ焦点距離をカバーするLレンズ「EF70-300mm F4-5.6L IS USM」と同様、純正のエクステンダーの使用には対応していない。
●主な仕様
・焦点距離:70~300mm
・レンズ構成:12群17枚
・絞り羽根枚数:9枚
・最小絞り:32~45
・最短撮影距離:1.2m
・最大撮影倍率:0.25倍(300mm時)
・フィルター径:67mm
・サイズ:80(最大径)×145.5(全長)mm
・重量:約710g
・手ブレ補正効果:約4.0段分
※以下に掲載する作例は、EOS 80D、EOS 6D Mark IIとEF70-300mm F4-5.6 IS II USMを組み合わせてJPEG形式の最高画質で撮影したもの(JPEG撮って出し)、もしくは、RAW形式のデータをJPEG形式に変換したもの(Digital Photo Professional 4を使用)になります。JPEGで撮影したものはいずれも、高感度撮影時のノイズ低減:標準、高輝度側・階調優先:しない、周辺光量補正:する、色収差補正:する、歪曲補正:しない、回折補正:する(EOS 6D Mark IIのみ)の設定で撮っています。
※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行なっていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。
航空ショーにてブルーインパルスを300mmで追従撮影した1枚。EOS 80Dを使っており、焦点距離は35mm判換算で480mm。高速で飛行するブルーインパルスをしっかりと追従してくれた
EOS 80D、300mm、ISO400、F8、1/2000秒、RAW現像(ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:風景、オートライティングオプティマイザ:標準、デジタルレンズオプティマイザ使用)
撮影写真(6000×4000、15.3MB)
こちらもブルーインパルスを300mmで撮影したもの。細かいところまでしっかりと描写できている
EOS 80D、300mm、ISO500、F8、1/2000秒、RAW現像(ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:風景、オートライティングオプティマイザ:標準、デジタルレンズオプティマイザ使用)
撮影写真(6000×4000、11.9MB)
この作例では、ブルーインパルスがファインダー内に飛び込んできた瞬間にAFを動作させてシャッターを切っている。やや被写体ブレが発生しているがしっかりとピントの合った写真になった
EOS 80D、300mm、ISO250、F8、1/1000秒、RAW現像(ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:風景、オートライティングオプティマイザ:標準、デジタルレンズオプティマイザ使用)
撮影写真(6000×4000、15.1MB)
上空からの空挺降下の様子を70mmで撮影したもの
EOS 80D、70mm、ISO400、F8、1/1600秒、RAW現像(ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:風景)
撮影写真(6000×4000、12.1MB)
離陸する飛行機を日没直前に撮影。この時間帯の微妙な色合いがうまく再現できた。輪郭で色収差が出そうな状況だが、気になるような色収差は見られない
EOS 80D、300mm、ISO1600、F8、1/1250秒、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:しない、JPEG
撮影写真(6000×4000、7.9MB)
駅に進入してくる新幹線を追従撮影したもの。車両の先端部にしっかりとピントが合った
EOS 80D、300mm、ISO400、F8、1/800秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:しない、JPEG
撮影写真(6000×4000、5.83MB)
ライブビューAFで撮影した写真。高速AFによって男性が猫に手を触れる瞬間を撮ることができた
EOS 6D Mark II、300mm、ISO1000、F5.6、1/320秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(6240×4160、6.24MB)
夕日を300mmで撮影。逆光耐性はそれほど高いわけではないが、この作例では気になるようなフレア・ゴーストは出ていない
EOS 6D Mark II、300mm、ISO100、F11、1/500秒、RAW現像(ホワイトバランス:オート・雰囲気優先、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:しない)
撮影写真(6240×4160、9.86MB)
70mmの絞り開放F4で撮った作例。前ボケ・後ボケとも比較的滑らかに仕上がった
EOS 6D Mark II、70mm、ISO100、F4、1/500秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(6240×4160、5.12MB)
こちらは135mm、絞りF5で撮影。ピント位置はシャープで、色付きの少ないボケが得られた
EOS 6D Mark II、135mm、ISO100、F5、1/640秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(6240×4160、4.68MB)
300mm、シャッタースピード1/60秒で手持ち撮影してみたが、手ブレを抑えることができた
EOS 6D Mark II、300mm、ISO160、F11、1/60秒、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:しない、JPEG
撮影写真(6240×4160、4.30MB)
今回、APS-C一眼レフEOS 80DとEF70-300mm F4-5.6 IS II USMを組み合わせて、航空ショーや空港で航空機を撮影してみたが、AFは高速で、期待した以上のレスポンスであった。
高速で飛行するブルーインパルスを追いかけながらの撮影では、ピントが外れたり抜けるようなことはほとんどなく、狙ったところをしっかりと追従。望遠側で構えていて画面に機体が飛び込んできた瞬間を撮る場合でも、食いつきがよく、すばやくピントが合うのには驚いた。低価格な望遠ズームレンズにありがちな、動きだしが遅く、ピントが迷う感じがまったくない。ユーザーからの評価が高いのも納得で、「リングUSMを採用するLレンズの望遠ズームレンズと比べてもそん色ない」と言ってもおおげさではないくらいの高速AFだ。レンズの駆動音も小さく、動きも滑らか。同じナノUSMを搭載するものとしては、APS-C専用の高倍率ズームレンズ「EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USM」があるが、このレンズと同様に、非常に高速で静かなピント合わせが可能なレンズである。
描写も及第点以上で、全体的に色収差がよく抑えられており、ズーム全域でシャープな画質が得られる。絞り開放だとややコントラストが低くなり、周辺も甘くなるようだが、少し絞ったときと比べて極端に描写が落ちる感じがないのがいい。ボケ味は、二線ボケ気味になることがあるものの、自然なボケ方が好印象。70mmから300mmをカバーする低価格な望遠ズームレンズとしては十二分の描写力を持っている。
EF70-300mm F4-5.6 IS II USM は、EFレンズのフルサイズ対応望遠ズームレンズの中でもっとも手に入れやすい製品ながら、Lレンズに匹敵する高速AFを実現している。すぐれた描写力と高性能な手ブレ補正も兼ね備えており、価格.com最安価格(2017年11月27日時点)で52,000円程度という価格はバーゲンプライスと言っていいだろう。非常にコストパフォーマンスの高い製品だ。
さらに、レンズが小型・軽量で持ち運びやすいのもこのレンズのいいところ。手持ち撮影時でもレンズの重さが負担にならないので、長時間の撮影も軽快に行うことができる。「Lレンズまでは必要ないが、高速AFで本格的な望遠撮影を手軽に楽しみたい」という方にピッタリの望遠ズームレンズだ。
カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。
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