〈時代の正体〉さらばツイッター ある在日コリアンの決別宣言
記者の視点=デジタル編集委員・石橋 学
- 神奈川新聞|
- 公開:2017/12/01 05:47 更新:2017/12/01 05:47
「いまツイートしたら、『朝鮮に帰って見ろ!』と言われるに決まってる」
つぶやくことを控えて1年余り、ツイッターを完全に断つと決めたのはその翌日、11月22日の夜のことだった。友人の手も借りてスマホを操り続けること30分余り、煩雑な手続きに難儀しながら、自分のアカウントを削除した。
「もう、守ってもらえないのだから」
4年間、実名で使い続けたツイッターとの決別に、諦めを強いられる側の痛みがにじんでいた。
前夜、NHKの「クローズアップ現代プラス」で自身のインタビュー映像が放送された。国内利用者が4500万人に達するツイッターをテーマにした番組のタイトルは「〝つぶやき〟の光と影」。在日コリアンの排斥を叫び、わが街、川崎市川崎区桜本を襲ったヘイトデモの被害を訴えた途端、24時間、365日、いまこの瞬間も「嫌なら出ていけ」「死ね」と差別ツイートを浴びることになった被害者として苦しみを語った。
覚悟はしていたが、さらなる攻撃は放送中に始まった。
〈ツイッターが嫌なら、見なきゃいいだろ〉
ツイッターが嫌なのではない。ツイッターを使ってなされる差別が耐えられないのだ。なのに、一方的かつ妄想に基づく筋違いな誹謗(ひぼう)中傷は、あらゆる方向へ雪だるま式に拡大していく。「差別の正当化」という腐臭を放ちながら。
〈それそれ!思いました!何被害者ぶってんのかしら?〉
〈金もらって、工作活動しているのかもですね〉
〈あんたらみたいに反日活動するから出ていけ言われるんだよ〉
差別されて苦しい、怖い、助けてほしいと口にしただけだ。番組では、9月に都内のツイッター日本法人前で行われた抗議集会に参加する崔さんの映像も使われた。NHK側の「配慮」で実名は伏せられていたが、画像を切り貼りしたツイートとともに名前や生活圏がさらされていく。
〈在日コリアンとやらの女性は、川崎在住のあの女性である〉
〈ただのサヨク活動家雀江以子です〉
〈この在日のアカウントはよ〉
ツイートされるごとに憎悪の刃が目の前へ迫ってくるのを感じ、息が詰まった。
〈新しい素材誕生の瞬間〉
〈在日がなんかデモやってるけど嫌なら韓国帰れよ〉
〈公道でなにしてんの、在日コリアン死ね〉
スマホのカバーを閉じ、崔さんが目を伏せた。
「一生懸命違うと思おうとしたけれど、どう考えても私に向かって死ねと言っている」