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【茨城】あす日立電鉄交通サービス再出発 「みちのり」流で浮上なるか
日立市などを中心に路線バス事業を展開してきた日立電鉄交通サービス(日立市)が十二月一日、交通系持ち株会社「みちのりホールディングス」(HD、東京都千代田区)の傘下に入る。当面、社名や運行路線も維持されるという。ただ、人口減が続き、マイカー利用が多い現状で、公共交通を取り巻く環境は厳しい。勝算はあるのか。 (越田普之) ◆救いの手「路線の廃止・削減は一切予定していない」 みちのりHDの松本順社長は今月十日、日立側から株式譲渡を受けるのに当たり、そう話した。 経営母体が変わり、「不採算路線が削減されないか」という利用者の不安を打ち消す言葉を並べた。 日立電鉄は一九二七年に路線バス事業を開始し現在、百二十の路線を持つ。二〇〇三年に日立製作所の子会社となり、鉄道、高速バス、タクシーなども運行してきた。鉄道は〇五年に撤退した。 路線バスは利用者数を公表していないが、近年、減少傾向だったという。日立市は、不採算路線の赤字補填(ほてん)などとして、年間約四千万円の補助金を出してきた。 そんな状況で、救いの手を差し伸べたのが、みちのりHDだった。日立製作所が譲渡先を探し、六月ごろから協議してきたという。日立製作所の担当者は「サービス維持のため交通専門の事業者にやってもらった方がいいと判断した」と説明した。 みちのりHDは、旧カネボウなどの経営再建を手掛けた産業再生機構にいた元メンバーが〇九年三月に設立。経営が立ちゆかなくなった北関東や東北のバス事業者を吸収し、再建を進める。現在、茨城交通(水戸市)や福島交通(福島市)など八社を傘下に収める。 ◆成功体験ただ、日立電鉄の再生の道のりは平たんでない。日立市の人口は約十八万人で、十年前に比べ約一万六千人も減った。少子高齢化が進み、通勤、通学客が増えることは期待できない。 それでも、みちのりHDの松本社長は「高齢者が増えると、公共交通の需要も高まるし、やりようによっては利用者を増やせる」と自信を見せる。 強気の根拠は、グループ他社での成功体験。日立電鉄の社長を兼ねる予定の茨城交通・任田(とうだ)正史社長は「公共交通の抱える課題は同じ。グループ内で実績があった取り組みを、他地区でも横展開しやすくなる」と浮上の鍵を明かす。 例えば、福島交通では、人口分布から需要が多く見込まれる地区に新路線を開設して成果を上げた。同様の方法を茨城交通でも導入し、早い段階で黒字を達成したという。「日立でも適用できれば」と意気込む。また、茨城、栃木、福島の三県を地続きでカバーでき、高速バス事業などで連携を進める青写真も描く。 市の担当者は「みちのりHDには他地域での経験を生かし、良い方向への変化を期待する」と話した。 運転免許を持っていないため、バスをよく利用するという市内の無職高野たい子さん(62)は「今のダイヤは通勤向けなので、昼間や土曜・日曜は本数が少なくて不便。利用者サイドに立って利便性を高めてほしい」と注文を付けた。 関連記事ピックアップ Recommended by
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