貴ノ岩関と日馬富士関

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 結局のところ、問題の「酒乱大暴れ」の宴では何があったのか――。洪水のような報道合戦の中、頭が混乱してきた、という方も多かろう。情報が錯綜している要因の1つは、その場にモンゴル人力士しかいなかったこと。そう、そこはモンゴル語のみが飛び交う異様な空間だったのだ。

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 報道されている通り、事件が起こったのは10月25日夜。一次会は鳥取市内の「ちゃんこ石浦」、日馬富士(33)が乱暴狼藉を働くことになる二次会はラウンジ「ドマーニ」にて行われた。

「この飲み会のキーマンは横綱白鵬の内弟子で、現在は十両の石浦。一次会のちゃんこ屋は彼の父親、石浦外喜義(ときよし)さんが経営する店です。石浦外喜義さんが相撲部の総監督を務めている鳥取城北高校は、多くのモンゴル人力士の出身校として知られています」

貴ノ岩関と日馬富士関

 と、モンゴル人力士の事情に詳しい関係者。

「まず白鵬が“せっかく巡業で鳥取に来ているのだから”ということで内弟子の石浦を誘い、それから横綱鶴竜にも声をかけた。そして、鳥取城北高校出身ということで関脇照ノ富士、平幕貴ノ岩も誘った。で、照ノ富士を呼ぶなら彼の兄弟子の日馬富士にも声をかけた方がいいな、ということになったのです」(同)

 一次会ではこれといったトラブルはなく、そのまま二次会へと流れた一行。すでに全員がかなり酔った状態だったという。

“クラワシ”

 二次会が行われたラウンジ「ドマーニ」でカラオケのできる個室に入ったのは、モンゴル人力士のみ。石浦は店の中の別の場所で待機していたようだ。

「個室の中では、日馬富士と貴ノ岩(27)がテーブルを挟んで向かい合うような格好で座り、二次会が始まってしばらくは普通に飲みながら皆でモンゴル語で会話していました。そんな中、日馬富士が貴ノ岩に対して本名で呼びかけた際、貴ノ岩がスマホを触っていてそれに気づかなかったのです」

 と、先の関係者が続ける。

「日馬富士は“何シカトしてるんだ”とモンゴル語で怒り、まずカラオケのマイクを貴ノ岩に投げつけました。ドスのきいた声で“オーイ!”と言いながら。さらに氷やマドラー、カラオケのリモコンを“オーイ!”と言いながらすごい勢いで投げつけたのです」

 徐々にエスカレートする日馬富士の口から、相手を侮蔑する「最悪の言葉」が飛び出したのはその頃だ。

「彼は何度も“ビスタ!”と言って貴ノ岩を罵った。モンゴル語で女性器のことで、“女のアソコでも舐めとけクソ野郎!”といった意味です。そのうちに日馬富士は身を乗り出し、貴ノ岩のおでこを拳で力一杯何度も殴り始めた。これは相撲界で“クラワシ”と呼ばれる制裁方法です」(同)

 当初は“すみません横綱”などと言ってやられるに任せていた貴ノ岩だったが、“クラワシ”に耐えきれなくなったのか、モンゴル語で次のように言った。

「こんなことやってる場合じゃないですよ。だからモンゴル人力士はダメだって言われる。こんな下らないことはオレたちの時代で止めますから」――

 先の関係者が言う。

「酔ってケンカするようなことは自分たちの世代ではやらない、と宣言したわけですが、当然、日馬富士は“何を偉そうに!”と怒り、近くにあった焼酎の『魔王』の瓶を掴んで殴りかかろうとした。そこで白鵬が“ちょっと”と言って制止。日馬富士を説得して店の外に連れ出したのです」

 ちなみに実績や実力では白鵬の方が上だが、初土俵は日馬富士が先で、白鵬はあくまでも後輩。2人は店の外で待機していた日馬富士の車に乗り込んだ。

「そこで頭を冷やした日馬富士は白鵬と共に宴席に戻ってきた。そして、まず貴ノ岩が“横綱、すみませんでした”と謝罪。日馬富士も“俺もやり過ぎたな。悪かった”と謝り、皆で乾杯し直して、再び和気藹々と飲み始めたのです。その後は特にトラブルもなく、会はお開きになった」(同)

 これが目下、角界を揺るがしている日馬富士の「暴行現場」の全容である。

「週刊新潮」2017年11月30日号 掲載