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【大相撲】

日馬富士、引責引退 「いき過ぎた」暴力謝罪

2017年11月30日 紙面から

引退会見の冒頭で、深々と頭を下げる横綱日馬富士(手前)と涙を拭う師匠の伊勢ケ浜親方=福岡県太宰府市の太宰府天満宮で(佐藤雄太朗撮影)

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 大相撲の第70代横綱日馬富士(33)=伊勢ケ浜=が29日、同じモンゴル出身の平幕貴ノ岩(貴乃花)に対する暴力問題の責任を取って引退した。日本相撲協会に引退届を提出後、福岡県・太宰府天満宮で会見し、「横綱としてやってはいけないことをした」と潔く非を認めた。日本国籍を取得していないため、土俵を去っても年寄として協会に残ることはできない。不祥事がきっかけとなった横綱の引退は、2010年2月の朝青龍以来となる。

 ハンカチで涙をぬぐう伊勢ケ浜親方の横で、日馬富士は無数のフラッシュを浴びながら、真っすぐ前を見つめていた。冒頭でそろって20秒以上頭を下げた引退会見。いかなる理由があっても暴力は許されるものではない。ただ、すべては貴ノ岩を思ってのことだったという。

 「先輩横綱として弟弟子が礼儀と礼節がなってないときにそれを正し、直し、教えてあげるのが、先輩としての義務だと思っています。弟弟子の未来を思って叱ったことが彼を傷つけ、そして大変世間を騒がせ、相撲ファン、相撲協会、後援会の皆さまに大変迷惑をかけることになってしまった。いき過ぎたことになってしまいました」

 日馬富士が10月26日未明、鳥取市内の酒席で貴ノ岩に対して起こした暴力問題。九州場所3日目の14日に表面化し、日馬富士も同日から途中休場した。「26日に彼(貴ノ岩)が謝りに来て、叱ってくれるお兄さんがいることに感謝しろよ、気をつけて頑張れよって言って握手して別れたわけですから、事がこんなに大きくなっていると知りませんでした」。現在、鳥取県警から事情を聴かれているところ。詳細は避けたがこの日、自身の思いを初めて伝えた。

 やり残したことはないか、悔いはないか-。そう聞かれても「横綱としてやってはいけないことをした」と答えるにとどめた。苦渋の決断であることは、新番付の発表目前というタイミングからうかがえた。

 粗暴な振る舞いが過去にあったかについては否定した。「今までお酒を飲んで事件を起こしたことはありません。自信を持って言えるのはお酒を飲んで暴れたり、酒癖が悪いと言われたことはこれまで一度もない。お酒を飲んだからこその事件ではないので、これは。今までこういう指導をしたことはありません」と言い切った。

 通信課程でモンゴルの大学を卒業。2014年には法大大学院政策創造研究科に入学(現在は休学中)。すべて「全身全霊」が信条だった。

 「力は神様から借りているもの。いつかは返すもの。そのときがきたら謹んで」。こんな形でそのときがくるとは思ってもいなかっただろう。日本国籍取得を希望してもいた。

 よく言っていたことがある。「過ぎたことは変えられないけど、明日のことは変えられる」。前を向き、また一から切り開いていくしかない。 (岸本隆)

 

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