帰国後、その足で映画『火花』(監督:板尾創路)を観に行った。
先日、『We Love Television?』(監督:土屋敏男)を観たばかり。
どうしても観たかった作品で、どちらも『芸人』の物語。

中にいる人間が切り取った『芸人』の姿は、圧倒的にリアルで、残酷で、
登場人物達の言葉に思い当たる節が多すぎて、おそらく普通のお客さんのようにフラットには見ることはできなかったけれど、最高だった。 

芸人とは生き様だ。
生き様には免許も名刺も何もない。
『芸人』を保証してくれるものは何もなく、僕らは自分の口で「僕は芸人です」と言い張っていくしかない。

これまで一度も陽の目を浴びていなくても、
一度は世に出て、今では「オワコン」と呼ばれても、
「僕は芸人です」と言い張っていくしかない。
そんなルールで回る世界に生きる『芸人』は、何度も何度も何度もみっともない目に遭う。

居酒屋で酔っ払いに見つかっては「芸人なの? 芸人だったら何か面白いことをしろよ」と絡まれる。

コンビで衝突を繰り返し、何十時間も何百時間も費やして、ようやく作ったネタが、数十秒で落とされることもある。
一笑いもとっていないのに、仕事を訊かれたら『芸人』と答えている。

『火花』では、お笑い論を語っていた先輩(神谷)が落ちぶれていった。
『We Love Television?』では、テレビ論を語っていた欽ちゃんが視聴率で負けた。

こんなことは『芸人』の世界では日常茶飯事で、いつも、かける言葉が見当たらない。
『芸人』を支えるスタッフも、また戦っている。

『芸人』は自分で『芸人』を名乗った瞬間から、「みっともない」や「惨め」や「ブザマ」といった言葉とは無縁ではいられない。
常に敗北が付きまとっている。
そして、皆、それを受け止めて生きている。

だから僕は、その生き方を選んだ『芸人』という生き物が好きなのだと思う。
そして、こんな作品を立て続けに観てしまうと『芸人』のことが、もっと好きになる。

『火花』も『We Love Television?』も、『芸人』の胸を締め付けてくる最高の映画だった。
とくに同期で同い年で同じ時代を走っている又吉君が選ぶ言葉は、いちいち刺さった。
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彼とは、またどこかでゆっくり話したい。

別冊カドカワで又吉君と対談させてもらったんだけど、とても楽しかった。
二人で『芸人』について話した。