2007年11月30日にさくらインターネットの社長に就任してから、本日で10年となりました。
これまで支えていただいた多くの皆さんに、心から感謝を致します。
もともと1996年12月に18歳で創業したあと、2000年12月にいちど社長を退任したのですが、その後に色々な出来事があり、急遽社長に復帰することになったのが2007年11月でした。
当時は29歳でしたが、そもそも10代のころから経営をしてきたわけで、プレッシャーはあったものの出来ないことでもないだろう、という感覚だったと記憶しています。
私がさくらインターネットを創業したのは、舞鶴高専在学中のころで、その当時はロボコンに吹奏楽部にと、学業以外にも色々と打ち込むことがありました。
そんな中でも、ロボット設計をする為に利用していたパソコンとネットワーク、そしてUNIXサーバーに興味を持って、自分のサーバーを立ち上げていたことから、サーバーと共に生きた青春時代といっても過言ではありません。
ちなみに、先週11月25日(土)23時35分から、NHKの「あのロボコニストは 今」というコーナーでも紹介されましたが、ロボコン全国大会で行った秋葉原の店頭において、自分のサーバーを介して友達とやり取りできたことに感動し、さくらインターネットの創業のきっかけになったというエピソードは本当です。
その後、高専卒業して法人化して、VCからもお金を集め始めて、上場を目指す時期になって、「自分たちはサーバー屋であり、技術を核とした自由な会社にしたいのに、上場を目的に管理を強化するのは嫌だ」とか、音楽性の違いみたいなわがままを言って、そのまま勢いあまって社長を辞したのが2000年のことです。当時の皆さんには大変迷惑をおかけしてしまいました。
その後、エンジニアとして経営には参画していましたが、さまざまな多角化の結果、会社が債務超過になってしまい、当時の社長が辞任することになったことから、また10年前に社長を引き受けることになりました。
社長に就任してはじめにやったのは、社員や内定者への説明と、銀行めぐりや増資してくれる人たちとの交渉でした。
それらが落ち着いた後に進めたのが、コスト削減とアウトソーシングです。
もともと生粋のエンジニアですから、何か作り出すのは自信があるのですが、人前で話をしたり交渉したり、そしてコストを下げたり、自社のものを捨てていったりというのは、はっきりと言って苦手ですし、苦痛ですらありました。
しかし、たくさんの社員や家族、お客様や株主の皆さんもいますし、やったこと無い仕事ですが、やらねばならない仕事と自分を納得させて、なんとかやっていきました。
結果、徐々に利益率も上がり、自己資本比率も高まっていき、就任4年目の2011年には最高益を記録することも出来たのですが、元来の何かを作り出すという思いがその頃から強まり始めてきたことを記憶しています。
いま思うと、短期的に利益を出すことは簡単です。
設備投資を抑え、正社員を極力採用せず、アウトソースを断行し、利益の出ない新規事業を終了して、要は余分なものを切り捨てれば、利益を出すことができますし、それが良い経営者だというのであれば、当時は達成できていたと思います。
たぶんバブル崩壊後の多くの企業経営者もそうし続けてきたんだろうと思います。
ただ、やっぱり新しいことを作り出して、ちゃんと売上につなげて、結果として利益が出るほうが私は好きですし、切り捨てて利益を出すのではなく、生み出して利益を出すという方針に切り替えたことは当然の流れだと思います。
あと、もう一つ大きな変化は、一緒に働いてくれる人たちへの接し方です。
最初社長をやっていた20代までのときは、自分で何かを作り出すというところに注力をしていて、どちらかというと私が作ったものを社員に渡すといった仕事の仕方をしていましたし、社員は頼んでやっともらう存在という感覚でした。
そして、社長に復帰したときには、どちらかというと人件費はコストであり抑制するという感覚を持っていたのではないかと感じますし、実際に退職しても補充は無く、社員数は減少の一途をたどっていました。
ただ、ここ5年くらいについては、自分だけでは出来ないから、一緒に働いてくれる人たちに色々なものを生み出してもらって、自分自身は大きな目標とみんなが働きやすい環境を作る、というみんなでやろうという思いに変化し始めました。
唐突ですが、私は今年の5月に1ヶ月の休みを頂きました。
その間、何か問題があってメッセージが来たらどうしようとか、やっぱり自分がいないとまずいんじゃないかとか色々と考えていましたが、結局いちども連絡は来ませんでしたし、会社のパソコンに接続する機会もほぼ無い状態でした。
そして、6月から仕事に復帰すると、今までと同じように会社は回っていました。
そんなことで一時は社長としての存在価値は何なのだろうかと、本気で悩んだわけですが、私に連絡しなくても大丈夫なように、たくさんの人たちが配慮をしてくれたことを聞いて、本当に感謝の気持ちで一杯になりました。
10年後は世の中がどうなっているか、そもそも私が社長をやっているのかも全く分かりません。
現状では、現場は私がいなくても普通に回る状況になっていますし、たぶん他の方が社長をやったとしても、さくらインターネットは普通に成長していくと思います。
ただ、私が社長をやったほうが、より一緒に働いてくれる皆さんが元気に明るくやりがいを持って働けて、その結果としてお客様に満足いただける様な会社に出来るよう、大きなビジョンと、誠実でチャレンジができる組織作りに、力を注ぎたいと考えています。
自分がいなければダメだという考えではなく、もしかしたら自分でなくてもいいけれど、でも自分のほうが絶対により良く出来る、という静かだけれども強い意志をもって仕事に取り組んでいきたいと思います。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。