文を生成することが辛いひとの文章執筆プロセス


下宿と自宅の引っ越し、東京&名古屋への出張などいろいろあった11月が終わった。その間に2本の原稿を書くこともできた。その爽快感が消えないうちに、ブログも更新しようと思う。

今回は最近の執筆環境について書く。前提として、ぼくはとにかく文を生成するのが下手で、苦手意識が非常に強い。企画書の箇条書きやレイアウトが込み込みの「書類」を作成したり、誰かが一度上から下に書いたものを綺麗に整えたりする作業はできる。でも、自分で企画を立ててアウトラインを引き、それを踏まえながら文を生成し、最後まで自分の手で書ききる。文を生成する行為を含めた一連の「文章執筆」がすごく苦しい。

そこで、執筆プロセスを分解して、特に一番苦手な「文を生成する」という段階を最小限にするやり方でこの仕事に臨んでいる。

1. パワポをつくる

最初にやるのが、これから書こうとする文章の全体像やイメージを大雑把に表現すること(いわゆる企画段階)、すなわちパワポ作成だ。一般的にはアウトラインといったほうがいいかもしれない。具体的には、下図のようなものだ。

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下宿事業について紹介する文章を執筆する際、WorkFlowyで作成したパワポ

ぼくはパワポという呼び方にこだわっている。自分がやっている作業を「文章の執筆」と思えば思うほど、なんだか神聖で間違ってはいけない仕事のような気がして、キーを叩く手が止まってしまうからだ。
パワポという言葉は、アウトラインに比べて「既存のモデル」「雑な図式」という感じがぼくにはする。文とは違って、言いたいことが「だいたい」示されていればいい。あちこちから様々なフレームワークや言い回しをパクって「とりあえず」継ぎ接ぎのものをつくればいい(むろん最終的には適切な引用や修正を施す必要がある)。
この感覚があると、「自分がいまから書こうとしていることがオリジナルでユニークなものでなくてはならぬ」というような強迫的な気分が消えて楽になる。

具体的なパワポの作成は、下記のツール / やり方を用いる。いくつも書いているけど、それほど高尚な理由があるわけではない。単純に気分が乗る / 乗らないによって使い分けている。

① WorkFlowy

いま一番機能しているのが、上図でも紹介したWorkFlowyだ。使う際のコツとしては、とにかく自分が書いてるのは文ではなくて「構造物」だと考えること。書き損じや文の違和感をなるべく無視して、とにかくなにかブロックのようなものを生成していくのだ。

Keynote

WorkFlowyで気分が乗らないときは、Keynoteを使う。フォントを好きなものに変えたり、大事な部分をアホみたいにデカくしたりして、なんとなく触ってるうちに気が向いてきて書けるようになる(こともある)。

③ 手書き

図などを描きたいときはKeynoteでやっているとそれ自体に時間を食うので、手書きをつかう。手書きで図を書いていると、なんとなく自分で自分の書きたいものがわかってくる。わかってきたらそれをWorkFlowyに転記することが多い。

Google+

レトリカで使っているSNSに、書きたいことを身内向けの言葉で書いてみる。ターゲットが変わることによって書けるようになることがあるので、これも効果的。

⑤ 喋り+録音

最終手段が誰かに喋ること。ヒマなひとに構想を話して、録音する。それをあとで聞いて書く。

2. 文を生成する

次にやることは、実際に読まれる複数の文を生成していくことだ。
さっきつくったパワポは、まだ「連なり」になっていない。一文が一文になっておらず、ただ文字が並んでいるだけだ。また、文と文の関係性がインデントの階層によってのみ表現されていたり、論理的につながっていない文同士が箇条書きの配置によって関係しているかのように見えていたりする。一文を完成させ、文同士を連なった状態に変えなければならない。
ぼくにとって、この作業は本当に苦痛だ。1で慎重に避けてきた「書く」ということの重みがのしかかってくるように感じられる。なんとかこの行為を気軽なものにする必要がある。

先のように、ツールと使い方を簡単に書く。

① mi

ぼくがずっと使っているエディタ。とりあえず、これにつくったパワポをコピペして書き始める。
工夫としては、書けそうな部分からとりあえず手をつけていくことと、あと折り返しを短めに設定すること。ぼくの場合は多くても全角40文字までにするようにしている。特に書き始める段階では、最終的に表示される見た目が仮に長くても、違和感がない範囲でなるべく短くしたほうがいい。執筆という苦手な仕事を自分はどんどん進めているぞという錯覚を得るため。

② Scrivener

この記事は、このツールを紹介したくて書いた。Scrivenerは本当に素晴らしい。特に論文を書くとき、これがなかったら無理だったと思う。
なによりすごいのは、1つのテキストを「分割」するという概念が存在していることだ。miをはじめ、ふつうのエディタでは1つのテキストは1つのファイルとして扱われる。しかし、このソフトはそれを複数のテキストかのように扱うことができるのだ。テキストAを分割したテキストA-1とテキストA-2を、見比べたり並べ替えたり、ときには遮断したり。テキストを区切ったり結合したりしながら書き進めていくことができる……と書いてみたものの、うまく説明できている気がしないので、下図を見てほしい。

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分割された部分を結合して表示している状態

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分割された部分だけを表示している状態

パワポの書けそうな部分を文にしていきながら、ある程度目処が立ってきたら「分割」して、その部分だけを表示して書き進める。飽きたら再び分割したテキストを「結合」してまたパワポを文に変えていく、というプロセスでどうにかこうにか文を生成している。
書くのに悩んでる人は、ぜひともこのソフトを買って使ってみてほしい。最初かなり戸惑うと思うけど、本当に便利なので。

3. 文を編集する

文の生成はキツい、それに比べたら編集(とパワポ)はだいぶマシだ。既に書かれてしまった文は、自分そのものと関係がない「外部の対象」という感じがして、容赦なく切ったりくっつけたりできる。この段階では、必ずScrivenerを使う。さっき書いたテキストの分割と結合の機能が非常に役立つから。
そして9割くらいできたと思ったら、最終的なアウトプットに近い環境で編集する。この記事であれば、最後は直接はてなブログのエディタでいじる。プレビューを見ながら書けるので、どんなふうに見えるかわかるから改行などを調整できるし、その過程で間違いにも気づくことができる。

年々書くことに臆病になって、このブログの記事ですら億劫になっているけど、このやりかたでなんとかやれている。
パワポ→文の生成→文の編集というかたちでステップを分解し、各ステップ内でもツールをいろいろ行き来しながら。
ツールを複数使うことは効率が悪いと前は思っていた。でも、いまのぼくには、なるべく前向きに苦しまず文を生成する方法がほかにない。