犯罪収益のマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いがあるなどとして、ビットコインなど仮想通貨の交換業者が「疑わしい取引」として届け出たケースが4月からの半年間で170件あったことが30日、警察庁のまとめで分かった。仮想通貨に関する疑わしい取引の集計は初めて。警察庁は事業者の制度への理解を深め、さらなる届け出を促す方針。
仮想通貨はインターネットを通じ、国境を越えた取引でも資金の移動を迅速に行えるのが特徴。利用者の本人確認などの規制が緩い国もあるため取引の匿名性が高く、同庁は「犯罪に悪用された場合は追跡が困難」として資金洗浄への警戒を強めている。4月の改正犯罪収益移転防止法の施行で、疑わしい取引の届け出を交換業者に義務づけた。
警察庁がまとめた犯罪収益移転危険度調査書によると、他人名義のクレジットカードで購入した仮想通貨を、偽造の身分証で開設したウォレット(電子財布)に振り込んだケースがあった。
交換業者からの届け出の多くは、暴力団関係者の関与が疑われたり、多額の取引が頻繁にあったりしたケースという。
仮想通貨を巡っては2015年、資金洗浄対策に取り組む国際組織の金融活動作業部会(FATF)が、資金洗浄対策を各国に求めた。
日本では17年4月に施行した改正犯収法で、銀行やクレジットカード事業者など、疑わしい取引の届け出や取引時の本人確認などを義務付けている「特定事業者」に、仮想通貨の交換業者を追加した。
交換業者を所管する金融庁は、疑わしい取引を判断するためのガイドラインを作成中。警察庁も事業者の研修会に職員を派遣するなどして制度の周知を図り「積極的な届け出を求めたい」(担当者)としている。
交換業者は4月に施行した改正資金決済法で財務局への登録も必要となり、利用者保護や管理体制などの条件を満たさないと業務ができなくなった。金融庁によると、9月にビットフライヤー(東京)やビットバンク(同)など11社が登録され、この他に申請中の19社が継続審査中となっている。