2人に1人がかかるがん、最新治療を医師が解説

第19回 話題の免疫療法、そして未来のテーラーメイド療法

2017年11月30日(木)

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 こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。

 私が4月から住んでいる福島県郡山市は、11月に入り猛烈に寒くなりました。こちら不思議なもので、郡山市より北に位置する福島市よりも、少し寒いくらいなのです。これは、「磐梯おろし」という磐梯山からの風が郡山の街に吹いているからなのだそうです。時折雪が舞っていますが、これも郡山に雪が降っているわけではなく磐梯山に降る雪が磐梯おろしに乗って運ばれてきているそう。せっかく寒い街に住んでいるのですから、満喫しない手はない。そう思って福島で造られた日本酒の熱燗をいただいています。

フロントガラスは時々凍結しています

 いつか一度特集したいと思っていますが、福島は日本酒が有名な所です。「平成28酒造年度全国新酒鑑評会」で金賞を受賞し、5年連続の受賞で獲得が最多の県となったのですね(詳しくはこの県のページをご覧ください)。

 中でも寛政6年に創業した老舗酒造である「鶴の江酒造」の「ゆり」という日本酒は、トランプ大統領が来日した際の晩餐会で出されたことで話題になりました。なんでもゆりさんという女性の杜氏が作っているそうで、私も早く呑んでみたいと思っております。なおインターネットでも購入できるようですが、「70過ぎのどっぷりの日本酒晩酌派の方にはフルーティーすぎます」(インターネットのページより)とのことです。ご注意を。

「指導医講習会」の帰りに寄った、福島駅近くの名店「餃子会館」

 さて今回は、最新のがん治療の流れ、中でも新しく登場した「免疫療法」という治療法について解説したいと思います。なるべく専門用語を使わずにお話ししましょう。

がんの3大治療は局所治療と全身治療に分けられる

 がん治療について語る場合、この3大療法を欠かすことはできません。すなわち、

  • ・手術
  • ・化学療法(抗がん剤)
  • ・放射線

です。

 この3つは、「効果の出る範囲」という視点から大きく2種類に大別することができます。それは、「局所の治療」と「全身の治療」です。局所とは、肺がんなら肺、胃がんなら胃といったようにその病気がある場所あるいは臓器のことです。

 「局所の治療」は手術と放射線です。手術はがんを切って取るという治療法で、放射線療法は放射線でがんを焼き壊死(腐らせる)させることで治療をします。手術で全身の臓器を切除してしまったら生存できませんし、放射線も全身に浴びせることは副作用の点からほぼ不可能です。そういう意味では手術と放射線は「がんのある部分だけの治療」で「似た者同士」となります。

 事実、手術で取るか放射線を当てるかという議論になることはあり、例えば大腸がんがお腹の中で再発した場合(局所再発といいます)は、手術で取るか放射線を当てるか、私もしばしば悩むことがあるくらいです。手術をするとお腹を切らねばなりませんし、他の臓器をかじりとらなければならないこともあり、術後は足がしびれっぱなしになったり人工肛門が必要になったりするなど手術後の生活の質が下がることがあります。局所再発の手術だと1000mlほど多量に出血することもまれではなく、それに耐えられなさそうな体力のない患者さんだと放射線を選択するか、なんて議論になります。

 放射線療法はどんどん進化していて、がんの種類によっては手術で切って取るのと同等かそれ以上の効果を発揮するものもあります。また放射線にもいろんな種類があり、特殊な放射線である重粒子線や陽子線といった治療も一部の病院では受けることができます。

コメント2件コメント/レビュー

一般向けに分かりやすく癌の薬物療法を解説されていると思います。
ただ、免疫チェックポイント阻害薬の副作用について触れないのは、少々不親切かと。
間質性肺炎や中毒性表皮壊死症など、致死的なものもありますよね。
免疫というのは、本文にもあったように、異物排除のための強力な武器を任された「軍隊」です。
その軍隊が一般市民を攻撃し出したら、大変なことになるのは目に見えています。
免疫チェックポイント阻害薬は、抗原非特異的に免疫系を活性化してしまうので、運が悪ければ、そのような自分を攻撃してしまうT細胞を活性化し、上記のような症状が発現することがあります。
まぁ、こういうT細胞が活性化されるには、遺伝要因や環境要因が組み合わさらないと起こらないと思われますので、そうそう心配する必要はないのかもしれませんが。(2017/11/30 09:38)

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「2人に1人がかかるがん、最新治療を医師が解説」の著者

中山 祐次郎

中山 祐次郎(なかやま・ゆうじろう)

外科医

1980年生まれ。聖光学院高等学校を卒業後、2浪を経て、鹿児島大学医学部医学科を卒業。その後、都立駒込病院外科初期・後期研修医を修了。2017年2~3月は福島県広野町の高野病院院長、現在は郡山市の総合南東北病院で外科医長として勤務。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

一般向けに分かりやすく癌の薬物療法を解説されていると思います。
ただ、免疫チェックポイント阻害薬の副作用について触れないのは、少々不親切かと。
間質性肺炎や中毒性表皮壊死症など、致死的なものもありますよね。
免疫というのは、本文にもあったように、異物排除のための強力な武器を任された「軍隊」です。
その軍隊が一般市民を攻撃し出したら、大変なことになるのは目に見えています。
免疫チェックポイント阻害薬は、抗原非特異的に免疫系を活性化してしまうので、運が悪ければ、そのような自分を攻撃してしまうT細胞を活性化し、上記のような症状が発現することがあります。
まぁ、こういうT細胞が活性化されるには、遺伝要因や環境要因が組み合わさらないと起こらないと思われますので、そうそう心配する必要はないのかもしれませんが。(2017/11/30 09:38)

この筆者先生、比喩も活用され、非常に分かりやすい文章を書かれますね。凄く勉強になりました。今後も是非とも寄稿をお願いします。(2017/11/30 08:36)

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