個人開発で得たスピード仕事術
作業のスイッチングコストを最小化させるための考え方と方法
Markdownエディタを一人で作りながらフリーランスをしています。今月(11月)の売上は18万円を超えました。順調に伸びていて嬉しい。毎日楽しいです。
個人開発はスピードが全てです。残業代もがんばった賞も出ないからです。一人何役もこなさないといけないので、作業のスイッチングコストが常につきまといます。設計してコードを書いてユーザサポートをしてマーケティングして・・。ましてや本業などがあると、プロジェクト単位で脳を切り替える必要もあります。
プロになってから約8年、常に本業と並行して何かしらの個人開発を続けて来ました。そして、このスイッチングコストをどうすれば最小限に抑えられるかという課題と向き合ってきました。自分で言うのも何ですがかなり速いと思います。例えば、先日ユーザさんから機能要望を受けたのですが、書き込みを見て2時間で対応してリリースしました。そしたらユーザさんが「速すぎやろ・・」と苦笑して若干引いていました。こうやって人を驚かせるのはめっちゃ楽しいです。
仕事に埋もれていたらこんな事は出来ません。仕事のスイッチングコストを最小化して高い機敏性を実現するにはコツがあります。本稿では自分が一人何役もこなすために心がけていることをシェアしたいと思います。
ボトルネックを見つける
生産性を高めるにはTOC(Theory of Constraints:制約理論)に基いて考えるのが基本です。平たく言うと、生産工程を俯瞰してボトルネック(非効率な所)を探しだして全体を最適化するという方法論です。
例えば、こんな経験はありませんか?
- 頭の中が余計なことで一杯で集中できない
- やるべき事が沢山ありすぎて優先度が付けられない
- いつも何かに追われていて落ち着かない
- 気持ちが不安定でやる気が起きない
こういう問題が付きまとっていると、せっかく個別の作業スピードを上げても台無しです。部品製造の稼働率がいくら高くても、組み立てスピードが遅ければ意味が無いですよね。その原因=ボトルネックを突き止めて解消していくのが改善の基本方針です。
TOCについて詳しく学びたい人は書籍「ザ・ゴール」をおすすめします。
仕事における「構え」の状態を知る
しっかり構えた状態から走り出すのと体勢が崩れた状態から走り出すのでは、もちろん前者の方が速いですよね。スポーツでも格闘技でも構えは重要視されます。ボールを打ち返した後も、キックを繰り出した後も、動作の後は必ず構えの標準姿勢に戻ります。
ボトルネックにまみれた状態とは、構えが崩れた状態の事です。崩れたまま走ったり飛んだりしようとしているのです。だから仕事でも構えの状態を常に意識すると、機敏に動けるようになります。その状態とはすなわち:
- 頭の中がスッキリしていてすぐに集中できる
- やるべき事が整理されていて優先度が付けられる
- 自分のペースで落ち着いて行動する余裕がある
- 気持ちが安定していてやる気をコントロールできる
僕はTOCに基いて行動の改善を続けた結果、この状態に行き着きました。仕事の正しい構えを知ると、調子が悪い時の原因もすぐに見つけられます。だから謎のスランプに陥りにくくパフォーマンスも安定させやすいです。
ボトルネックを解消して維持する
まとめると、個人の機敏性を高めるワークフローは次の通りです:
- 自分を俯瞰してボトルネックを探し出す
- ボトルネックを1つずつ解消していく
- ボトルネックが最小限の状態を覚えておく
- 毎朝自分をその状態にリセットする
個人のボトルネックは当然人によって異なります。ここからは、僕が実際にやって効果があったなと思う解消施策の一部をピックアップしてご紹介します。以下概要:
- モヤモヤを全部書き出す
- 瞑想する
- メールの受信箱を空にする
- 通知をオフにする
- SNSの利用を最小限にする
- 怒りで仕事をしない
- 姿勢を正しく保つ
- 幸せになる
- 生活リズムを保つ
以下、詳しく説明します。
モヤモヤを全部書き出す
頭の中がごちゃごちゃしているなら、ノートなどに全部書き出しましょう。前後関係や論理性などは無視して、とにかく頭に浮かんだことを全部吐き出すのです。もう思いつかないという所までやります。すると不思議とスッキリして集中力が戻ります。
瞑想する
瞑想は、無意識に蓄積したモヤモヤも掃除してくれます。コツは、全く意味の無い言葉をひたすら脳内で繰り返し唱え続けることです。自分は「オーンナーム・スバーハー」という単語を使っています。これは、鼻から息を吸って口から吐く音を擬音化したものです。宗教的な意味はありません。
目を瞑ると課題やアイデアが次々と浮かんできます。至極無意味な言葉を唱え続けることでそれらを棚上げして行き、最終的には考えるネタが尽きて心が静になる、という寸法です。
メールの受信箱を空にする
メールの受信箱には要らないメールを残さないようにします。返信が必要だったり何かアクションが必要なメールのみ受信箱に留めるようにします。それが終わったらフォルダに入れたりアーカイブします。こうする事で大事なメールを見逃さなくなりますし、返信忘れも無くなります。自動振り分けは基本使いません。要らないメルマガなどは全て解除します。
無理に毎日受信箱を空にしなくても良いです。次の日に保留にしてもいいです。積み残しが一目で確認できる事に意味があります。仕事に埋もれる人は自分の手持ちの仕事量が把握できていないからです。
同様に、ダウンロードフォルダを空にしたり、デスクトップにもファイルを置かないようにしています。それらは一時的なファイル置き場としてしか使用しません。「ダウンロードフォルダに何かファイルがある → 何かやり残しがある」と瞬時に判断出来るからです。
通知をオフにする
せっかく集中している時に通知に邪魔されると一気に集中力が阻害されてしまいます。通知音を全てオフにしてバイブを鳴らないようにします。通知のロックスクリーン表示もオフにしています。通知が来る度に目が奪われるのも集中力の邪魔だからです。
同様に、Slackなどのデスクトップアプリの通知も要らないので切ります。外部からの予期せぬ刺激を可能な限り無くします。この運用で大事な連絡に気付かなかったという事は今までありません。
SNSの利用を最小限にする
人は思っているよりも他人の影響を受けやすいです。だから日常的に触れる情報には気を配ったほうがいいです。特にTwitterやfacebookなどのSNS。
僕は、以下のような特徴の人をフォローしません。
- 何かに怒っている人
- 愚痴ばかりの人
- 政治や社会問題ばかりを話題にする人
- 悲しそうな人
要するに感情的な投稿から距離を置くようにしています。代わりに楽しそうに仕事をしている人をフォローします。いい影響をもらうためにSNSを使いましょう。遊んでばかりの人を見るのもお薦めしません。モチベーションが下がるからです。
以上の理由で知り合いなのに外してしまった人もいます。ごめんなさい。facebookは自分が投稿する時以外一切見ません。
怒りで仕事をしない
怒りを原動力にしても物事は好転しません。周りは萎縮して、距離を取るようになります。北風と太陽です。もし怒る事がカッコイイと思っているのなら、大きな誤解です。テレビや映画の観過ぎです。あれはパフォーマンスで怒っていることに気づいたほうがいいです。
組織や環境への不満や怒りを並べれば、あなたはあたかもそれを指摘する価値のある人間だという風に相手に映ると思っているかもしれません。とんだ勘違いです。この人は自分の事も裏で色々言っているんだろうな、と思われるだけです。
平常心が最もパフォーマンスの出る基本姿勢です。怒りを利用するのは癖になります。「あっ、俺、怒ってるな」とまずは気付けるようになりましょう。自分の感情の動きに気づくだけで不思議と怒りは収まります。
姿勢を正しく保つ
自分はひどい猫背なんですが、一時期首の痛みに悩まされました。正しい姿勢は言うまでもなくパフォーマンスに好影響を与えます。腰痛や首痛を抑えるだけではありません。胸が開いて呼吸が深くなるので、脳の働きにも効果があります。
姿勢が悪くなる理由の一つは緊張です。仕事中は無意識に緊張しているので、呼吸が浅くなります。呼吸が浅いと筋肉にも充分に酸素が行き渡らないので、力が抜けて姿勢が徐々に崩れます。
おすすめは腹式呼吸です。鼻から大きく息を吸って、口からゆっくり吐きます。猫背だと腹式呼吸が出来ないので、自然に姿勢が矯正されます。緊張もほぐれて、一石二鳥です。
幸せになる
幸せな人は生産性が高い、という事は科学的に証明されています(「データの見えざる手」より)。その理由は、幸せな人は余計な悩みに時間を取られず、自然と人が集まって協力が得られるからです。
個人開発でモチベーションを保つコツは、高すぎる目標を立てないことです。「世界を変える」とか「盤上をひっくり返す」とか。夢や高い目標は時に自分を不幸にします。それをまだ実現出来ていない自分が肯定出来なくなるからです。僕は「自作アプリで食う」ことを目標にはしていますが、たとえそれが達成できなくても幸せです。アプリで食う事はあくまで人生の進みたい方向性であって、今の自分を否定する理由にはなりません。好きなことに取り組めている事自体が既に幸せだからです。結果は幸せを左右しません。
今の自分を受け入れられない人は、自己肯定するために他人と比べるようになります。「あいつより上だ」「俺の方がマシだ」とまるで学校のテストのように比較ゲームに必死になります。すると本来の目的を失って他人に勝つ事が人生の目的に変わってしまいます。つまり、自分の幸せが他人に左右されることになります。気持ちが安定しないので、人の言葉に踊らされたり、突然燃え尽きたりします。これ、昔の僕です。
自分の中にわだかまりがあると、あらゆる動きが鈍化してしまいます。自分を受け入れて今を生きましょう。幸せに条件などいりません。人は人、自分は自分。
生活リズムを保つ
毎朝自分をボトルネックの無い状態にリセットするには、生活リズムを保つことが不可欠です。夜型でも朝方でも構いません。徹夜したりバラバラのリズムだと体のコンディションが日によってまちまちになるので、自分のニュートラルな状態がわからなくなります。するとパフォーマンスもやる気もコントロール出来なくなります。
個人開発では徹夜自慢をしても誰も褒めてくれません。アウトプットが全てです。作業が終わらなかったのならスッパリ切り上げて、作業記録をまとめたりして次の日に改めて取り組めるようにしましょう。
もし夜に悶々と考えてしまうようなら、ヨガがオススメです。副交感神経を優位に持って行ってくれるストレッチ的なポーズを取ると、気持ちいいしなんだか安心した気持ちになれます。ちゃんと休みましょう。
本稿では作業のスイッチングコストを減らして機敏性を高めるための方法をご紹介しました。それらに共通しているのは「あらゆる余計な刺激や雑念を取っ払う」事です。新しいパソコンって動きが軽いですよね。あの状態を自分の中に作り出しましょうという話です。
本稿で紹介した方法はお金もかからないし今すぐにでも始められます。興味のあるものからぜひ試してみてください。参考になれば幸いです。
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