Windows 10 Fall Creators Updateの新機能をおさらい
第4回
「OneDrive」に待望の“ファイル オンデマンド”が ~セキュリティの強化も見逃せない
賢く活用してPCをクリーン&セーフティーに保とう
2017年11月30日 06:30
「Windows 10 Fall Creators Update」の新機能や改善点を紹介する本連載。最終回となる今回は、これまでの回で触れることができなかったが、けっして見逃せない重要な機能追加について紹介する。
Windows 10 Fall Creators Updateの新機能をおさらい記事一覧
- 「Creators Update」を継承・発展させた機能アップデートに
- 「Fall Creators Update」で広がるWindows 10の世界 ~複合現実とLinux対応
- 「Fall Creators Update」のユーザーインターフェイスと「Microsoft Edge」
- 「OneDrive」に待望の“ファイル オンデマンド”が ~セキュリティの強化も見逃せない
「OneDrive」の“ファイル オンデマンド”と“ストレージ センス”
まず注目したいのが、「OneDrive」の“ファイル オンデマンド(Files On-Demand)”だ。
“Office 365”を契約すると“OneDrive”のクラウドストレージが1TBもらえる。しかし、そこに保存しているファイルすべてを同期できるほどローカルストレージに余裕がないことも多いだろう。SSD搭載モデルだと、125GBから256GB程度しかローカルストレージがないことだって珍しくない。
そのような不都合を解決するために編み出されたのが、“フォルダーの選択”機能だった。ローカルストレージと同期するクラウドフォルダーを一部に限定しておけば、ローカルストレージを過剰に消費してしまうことはない。
しかし、この方法にはいくつかの欠点があった。
まず、クラウドストレージのフォルダーを日頃から適切に管理しておく必要がある。ローカルで必要となるファイルと、クラウドに保管しておけばよいファイルを区別して、できるだけ細かくフォルダーに分けておく必要があるだろう。
しかし、あらかじめきちんとフォルダー分けした場合でも、ローカルストレージと同期していないクラウドファイルが必要になることはある。その場合は、手動でクラウドからファイルをダウンロードしなければならない。
結局のところ、クラウドに保管する・ローカルにダウンロードしておくというコントロールがフォルダー単位でしか行えないのが“フォルダーの選択”機能の弱点だといえるだろう。
こうした欠点を解消するのが、“ファイル オンデマンド”機能だ。
“ファイル オンデマンド”とは、文字通り“必要に応じて”ファイルをダウンロードする機能だ。ローカルフォルダーにはクラウドファイルがマッピングされるが、実際にローカルストレージにダウンロードされているのは丸いチェックマークのアイコンが付いたファイルだけ。雲のアイコンがついたファイルはローカルストレージには存在しない。これらのファイルは、利用するときになって初めてダウンロードされる。ちなみにダウンロード中は“同期中”のアイコンがファイルに付与される。
“ファイル オンデマンド”機能の利点は、
- “フォルダーの選択”を行わなくても、すべてのクラウドファイルがローカルにあるように“見える”こと
- しかし、実際に存在するのは一部のファイルだけなので、ローカルストレージを過剰に消費しない
- ローカルにあるようにみえるファイルをダブルクリックすれば、自動でローカルにダウンロードされる(手動でダウンロードする必要がない)
- 使わないファイルを“実体”だけ削除すれば、ローカルストレージを節約できる(クラウドストレージには存在したまま。ダブルクリックすればまた自動でローカルへダウンロードされる
といった点だ。最初は少し複雑に感じるかもしれないが、慣れればかなり有用な機能だ。実はこれまでも同様の機能が搭載されたことはあったが、Windows 10では省かれてしまっていた。復活を望む声が大きかったことを見ても、本機能の有用性が知れるというものだ。
さて、“ファイル オンデマンド”機能を利用するには、まずタスクトレイにある「OneDrive」同期クライアントアプリのアイコンを右クリックし、メニューから[設定]ダイアログへアクセスする。次に[設定]タブを開くと“ファイルのオンデマンド”というオプションが追加されているはず(ない場合は同期クライアントのアップデートが必要となる。しばらく待つか、同期クライアントを手動でアップデートする必要がある)なので、チェックボックスをONにして有効化しよう。すると、クラウドストレージからファイルの情報がダウンロードされ、ローカルストレージにマッピングされる。通知ポップアップに“(フォルダー名)にあります”と表示されるのが、マッピング処理のログだ。
先ほど述べたように、雲のアイコンが付いたファイルはローカルに実体がないクラウドファイルだ(オンラインのみのファイル)。ダブルクリックすれば実体が自動でダウンロードされ、アプリケーションで開くことができる。ただし、ダウンロードする関係上、インターネット接続が必要となる。
実体がダウンロードされると、ファイルには丸に緑のチェックマークのアイコンが付与される(ローカルで利用可能なファイル)。この状態であれば、インターネット接続がなくてもファイルを開くことが可能だ。右クリックメニューの[空き容量を増やす]コマンドを利用すれば実体は消去され、再び“オンラインのみのファイル”に戻すことができる。
逆に“オンラインのみのファイル”をインターネット接続なしで利用できるよう常にローカルに同期しておきたい場合は、右クリックメニューの[このデバイス上で常に保持する]コマンドを選択する。すると、ファイルへ丸に白のチェックマークのアイコンが付与され、実体が常にローカルで保持されるようになる(常に利用可能なファイル)。
“ローカルで利用可能なファイル”と“常に利用可能なファイル”の差は少しわかりにくいが、フォルダーを例に考えると違いは顕著だ。たとえば、他の端末から[このデバイス上で常に保持する]を無効化したフォルダーへファイルを作成すると、手元の端末には実体のない“オンラインのみのファイル”が現れる。ファイルを開こうとすると自動同期が始まり、“ローカルで利用可能なファイル”となる。一方、有効化したフォルダーへファイルを作成すると、手元の端末にもファイルの実体(ローカルで利用可能なファイル)が自動で同期される。“このフォルダーのファイルは常に実体で持っておきたい”といった場合に有効化するのがお勧めだ。
なお、“ファイル オンデマンド”機能は“フォルダーの選択”機能と併用することも可能だ。たとえば、“このPCは仕事で使うのでプライベートファイルはローカルにマッピングしたくない”といった場合、プライベートファイルを特定のフォルダーに集約して、そのフォルダーを同期の対象外にしておけば、ローカルストレージにはマッピングされなくなる。
さて、新しい「OneDrive」アプリでは“実体”をローカルで持つか、持たないかをファイル単位で細かくコントロールできるようになったことを紹介してきた。“実体”がないファイルを利用しようとすると自動で“実体”のダウンロードを行うことも説明したが、これは「エクスプローラー」以外でもちゃんと動作するのだろうか。たとえば、“実体”のないファイルをサードパーティ製のWebブラウザーでアップロードしたい、といった場合にも適切に動作するのだろうか。
結論から言うと、おおむね動作する。アプリケーションが“実体”のないファイルを利用しようとすると、バックグラウンドで自動ダウンロードが行われる。その進捗は、デスクトップ右端に現れるトースト通知で確認可能だ。
このバックグラウンドダウンロードはキャンセルしたり、アプリケーション単位でブロックすることも可能。第3回で少し触れたが、「設定」アプリの[プライバシー]-[ファイルの自動ダウンロード]セクションでブロックしたアプリケーションの管理が行える。
ただし、インターネット回線が高速だとトースト通知は一瞬で消えてしまうし、編集部にてテストしたところ、キャンセルがうまく動作しなかった。この辺りは引き続き改善が必要となるだろう。
最後に、ローカルストレージの空き容量を節約する機能として“ストレージ センサー”の強化も紹介しておきたい。
“ストレージ センサー”は「設定」アプリの[システム]-[ストレージ]セクションで利用できる機能で、定期的に一時ファイルやごみ箱の中身をクリーンアップして自動で空き領域を増やすことが可能。この機能自体は「Creators Update」でも利用することができた。
「Fall Creators Update」では、従来の機能に加え“ダウンロード”フォルダーのクリーンアップにも対応。ダウンロードして30日間使われなかったファイルを自動で削除することができる。また、OSをアップグレードする際に作成された復元データを削除する機能も追加された。復元データは10日後に自動削除されるので手動で消す必要はないが、消せば数GB単位の空き領域を確保できるので覚えておいた方がよいだろう。
セキュリティの強化
また、「Fall Creators Update」ではセキュリティ面でもいくつかの改善が盛り込まれている。
まず、同社の脆弱性緩和ツール「Enhanced Mitigation Experience Toolkit(EMET)」と同等の機能がOSに組み込まれた。
アプリケーションに脆弱性が発見されたとき、もっとも効果的な対策はセキュリティパッチを当てたり、欠陥を修正した最新版へアップデートすることだ。しかし、アップデートがすぐに提供されなかったり、アップデートの提供が打ち切られていることもある。また、アップデートを適用するのが困難なケースも考えられる。そのような場合に、脆弱性のあるアプリケーションに対して緩和策を後付けするのが「EMET」の役割だ。
アプリケーションである「EMET」がOSに統合されれば、これまでさまざまなテクニックを駆使して実現されてきたセキュリティ機能が効率よく、より堅牢に実装できるようになる。「EMET」は2018年にサポートが終了してしまうので、今後はOS内蔵の機能を利用することになるだろう。
OS統合の脆弱性緩和機能は、「Windows Defender セキュリティ センター」から利用可能。[アプリとブラウザー コントロール]セクションの下方にあるリンクから[Exploit Protection]画面へアクセスすればよい。初期設定のままで通常は問題がないが、いざというときはここから追加の緩和策を適用することができる。
一般のユーザーにとってより身近となるのは、追加されたもう一つの機能“コントロールされたフォルダーアクセス”だろう。この機能については以前にも紹介したので、過去記事を参照してほしい。
まとめ
そのほかにも、新フォント「UDデジタル教科書体」が搭載されたことなど、紹介すべきことは多々残っているが、細かいことまで挙げているとキリがないので、今回はこれぐらいにとどめておきたい。
これまでの紹介で、「Fall Creators Update」は「Creators Update」を継承しつつ、それを大きく発展させてきたことがわかっただろう。しかし、やり残した課題が少なからず見受けられるのも事実だ。
Windows 10の機能アップデートは年に2回リリースされる方針で、次回(今のところ“RS4”と呼ばれえている)は3月(もしくは4月)にリリースされる予定だ。それまでは「Windows 10 Insider Preview」で新機能がテストされるが、弊誌でも逐次内容を報じていきたいと考えているので期待してほしい。「Windows 10 Insider Preview」への参加に挑戦したいという人も歓迎だ。
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