ベンチャーの希望か新手の詐欺か、ICOの未来

脱・期待先行の取り組みが普及のカギ

2017年11月30日(木)

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 仮想通貨の影響は企業による資金調達の分野にも及ぶ。独自のトークン(デジタル権利証)を販売することで資金を集める「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」が注目されている。従来の資金調達方法に比べてハードルが低く、世界中からお金を集められることからベンチャー企業を中心にビジネスチャンスが広がる期待がある一方、詐欺的な案件があることが課題となっている。

ICOブームにともない、ICOを支援するコンサルティングサービスなど関連サービスも登場している。エニーペイの木村新司社長も、ICOの支援事業に参入した。

企業の資金調達に使われるICO

 起業を考えている人やベンチャー企業が資金を集めようとする時、これまでならベンチャーキャピタル(VC)から調達したり、新規株式公開(IPO)といった手段をとるのが一般的だった。これには証券会社による厳しい監査などが伴う。一方でICOはそういった証券会社の監査が必要ない。

 代わりに、集めた資金でどのようなサービスや商品を作るのかをまとめた計画書「ホワイトペーパー(目論見書)」を公開する。その企業が提供するサービスの中で使うことができたり、商品の先行予約などの特典がついた「トークン」と呼ぶデジタル権利証を発行、その対価として仮想通貨を払い込んでもらうことで資金を集めるという仕組みだ。そのトークンが仮想通貨取引所で「上場」されると、人気度によって価格が上下するようになる。

 比較的簡単に資金を集められることから、世界でベンチャー企業を中心にICOを利用する動きが活発だ。ICO関連情報を見ることができるサイトのコインスケジュールによると、これまで世界で36億ドル(約4000億円)を超える規模でICOによる調達が行われた。

 現在、世界で最も多くの資金を集めているのは「ファイルコイン」というプロジェクト。個人や企業が持っているパソコンの空き容量を提供しあい、効率的に活用するシステムを開発するという内容だ。すでに2.5億ドル(約285億円)を集めた。テゾス(257億円)、パラゴン(203億円)などがそれに続く。

「現金消滅」の目次

「ベンチャーの希望か新手の詐欺か、ICOの未来」の著者

浅松 和海

浅松 和海(あさまつ・かずうみ)

日経ビジネス記者

2013年日本経済新聞社入社。整理部で2年間紙面編集をしたあと、証券部で化学業界や株式相場を担当。2017年4月から日経ビジネス記者に。ウリ科が苦手。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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