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ニコニコの発表会の空気がこんなに冷たかったのは初めてかもしれない

ヤジも歓声も飛ばないなんて。

ドワンゴの記者会見は、私たちプレスだけでなくユーザーも招待するのが特徴だ。だからこそ常に、取材陣だけの他社の会見とは違う特有の熱があった。

自分たちの要望や期待に応えてくれるのか、はたまた予想を超えた変な施策が飛び出すのか、ステージの上を熱っぽい目で見つめる人たちがいる。LEDパネルになった周囲の壁には、生放送を視聴する数千、数万のユーザーの無数のコメントが流れる。

新発表にヤジも飛ぶが、歓声も上がる。ダイレクトに何かしらリアクションがある。「これは草」「ねーわwww」「運営いい加減にしろ」……辛辣な(多分、愛もある)コメントが並ぶ。

この会見の形自体が、ニコニコ動画が運営とユーザーのコール・アンド・レスポンスで進化していく場所であることを象徴的に示しているように感じていた。「次は何を見せてくれるんだろう?」という期待とそれに応えようとする姿勢があった。

11月28日夜の発表会場は、しんとしていた。逆に配信画面は怒号のようなコメントで覆われた。「そうじゃない」「馬鹿にしてんのか」「プレミアム会員やめるわ」。いつもの会見であれば壁一面に流れているコメントは途中で表示されなくなった。

「どうしてこうなった…!?」ヤジすら飛ばない空間で小声で叫ぶ声が聞こえた。

画質や重さの問題は? 期待が失望に

今回発表された新配信・視聴システム「niconico(く)」(クレッシェンド、と読む)はずいぶん前から予告されており、当初は10月リリースとされていた。

延期後の新リリース日は2月28日に決定。現バージョン「GINZA」から約4年ぶりのアップデートで、ニコニコの歴史の中では16番目となるという。

4月のリリース時点では「サーバーの問題/画質の問題/遅延の問題を解決するほか、さまざまな独自の最先端機能を搭載する予定」としていた。

この数年で目覚ましい進化を続けてきた動画分野。ライブ配信だけでもYouTubeをはじめ、LINE LIVE、ツイキャス、SHOWROOMなどが存在感を増している。

他サービスがさまざまな新手を打つなか、ユーザーからは「ニコニコは画質が悪い」「機能に乏しい」「スマホ対応がつたない」などの不満は常に上がり続けていた。

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そして、新バージョンの発表。

基本的な動画配信・視聴の仕組みがどう改善されるのかがほとんどのユーザーの関心事だっただろう。

ところが、発表された主な機能は、生放送配信にあたってオープニングやエンディングムービーを自動生成する機能、ミニゲーム、クイズ、など、多くの視聴者にとって“期待はずれ”と言ってもいいものだった。

配信中にPCとスマホのカメラをワンタップで切り替えられる「マルチカメラ」、他の配信を同時に流せる「引用する」など、配信側には好感触な新機能もあったが、視聴体験そのものの向上につながるようなものは見られなかった。

この発表で、生配信のコメント欄は大荒れ。約2時間の会見のあいだその勢いは落ちることはなかった。

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Twitterでも会見中からトレンド入り。会見終了後も深夜まで上位をキープし、3万件を超える関連ツイートが投稿された。

( ´・ω・` )7年以上プレミアムだったけどとうとう解約してしまった ( ´・ω・` )今まで惰性で続けてきたけど昨日の発表でこの先どんどんニコニコがひどくなると思ったし仕方ないよね。残念

でもワイニコニコくんでみんなで見るクソ映画とか特撮一挙とかめっちゃ好きやねん・・・基本機能増強でよかったんよ・・・

ニコニコ くには正直ガッカリしている思いもあるけど、やはり動画にコメントが流れる機能が好きだから頑張って欲しい思いの方が強い

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ここまできたら逆に最後までニコニコを使ってやると天に誓った

強みは“双方向性”、だけど…

川上量生会長は、画質や重さの問題は最優先課題のひとつとして認識しつつ「改善は続けているが、現時点では完全に解決はしているとは言えない」。

新バージョンのリリースに合わせ、今後半年以内にはほぼすべての施策を実施する予定と掲げた。

その上で、発表した新機能については「ニコニコの魅力はコメントに代表される双方向性。画質やスピードに関して競合サービスと同レベルまで引き上げることは前提で、差別化する新機能も並行して追加しようというもの」と意図を話す。

しかし、そもそもニコニコが示してきた“双方向性”は「視聴者のみんなでゲームをすること」なのだろうか?

サービス側が用意した機能を楽しむのではなく、コメントの工夫、創作の連鎖など、ユーザーレベルで生まれるエネルギーこそ魅力だったのではないだろうか?

生主(ニコニコ生放送の一般配信者)から人気を集め、タレントとして活躍する百花繚乱さんも「運営の上層部の方々はもっとコメントを見たほうがいい」と苦言のようなツイートをしている。

ニコニコ存続というか今後の盛り上がりのためにも、運営の上層部の方々はもっとコメントを見たほうがいい。自分達が他社サイトに負けない武器だと豪語するなら、尚更その『コメント』は『人』が打ってくれてることを理解してほしい。そう感じる発表会でした。#ニコニコ

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「お叱りを受ける理由は承知しています」「ここ何年もユーザーの方々に対して向き合ってこなかったニコニコ運営に対する当然の評価だと重く受けとめています」。

登壇した栗田穣崇取締役もユーザーの反応を受け止め、ツイートを連投。

ニコニコ(く)発表会、ニコキャスの同接数が全く落ちず、コメントもすごい数でした。たくさんの批判やお叱りのコメントもそれだけニコニコに関心を持っていただいているということだと真摯に運営は受け止めています。

大幅に遅れたこと、画質・重さを完全解決していないこと、その中でよく分からない新機能を追加しようとしていること。お叱りを受ける理由は理解しています。本当に申し訳ありません。

ショックな思いをさせてしまって、ごめんなさい。画質の問題を解決するのは当然ですが、新機能がみなさんにおもしろいと気づいていただけるようがんばります。 https://t.co/XsyBqgvhB5

今日の発表会に対するユーザーの方々の反応は、ここ何年もユーザーの方々に対して向き合ってこなかったニコニコ運営に対する当然の評価だと重く受けとめています。申し訳ありません。これを受けとめるだけでなく、どうサービスに活かしていくのか、われわれの行動が問われていると思っています。

「ニコニコ動画(β)」、そして初音ミクが誕生した2007年から今年で10年。

ついに!!本日迎えました!!2017.8.31は初音ミク10周年記念日!! カウントダウン ラストイラストはKEIさんです!!⭐🎂⭐🎂⭐ 初音ミク10周年サイトはコチラ ⇒ https://t.co/pRIjYF5u6M… https://t.co/cKvLkM4gWK

ボーカロイド文化の広がりとともに、この10年の日本のネットカルチャーを牽引してきたのはニコニコ動画であることは間違いない。

2015年末、小林幸子さんが「千本桜」で紅白歌合戦に出場した。2016年、中村獅童さんと初音ミクが共演する「超歌舞伎」が生まれた。「ニコニコだから生まれた何か」が他にもたくさんあったはずだ。

新機能に苦言を呈するユーザーの声の中にも「ニコニコが好きだから、なんとか頑張ってほしい」という視線が多いのが印象的だった。

ニコニコの運営はクソだと思ってるし動画の画質悪いしYouTubeのほうが見やすいしとは思ってるけどランキング機能と検索機能の有能さ、動画の雰囲気を作れるコメント機能、何より集まった投稿者さん達のカオスで自由な雰囲気は大好きなので運… https://t.co/sHosI1D8i0

正直、記者個人としては、機能的・技術的に例えばYouTubeというグローバル企業とまったく対等なレベルにすることは難しいだろうと思う。しかし、そうではない部分で「ニコニコだからできること」はこれからもまだあるんじゃないか。

人生の多感な時期をニコニコ動画と過ごして楽しい経験をしてきた身として、どうしてもそう思ってしまった(過剰なノスタルジーと言われたら、そこまでだけれど)。

いま、勢いが明らかに落ちていることは肌身に感じている。背景に多くの“大人の事情”があるだろうことも想像がつく。それでも、頑張ってほしい、ニコニコ。11年目も。

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Haruna Yamazakiに連絡する メールアドレス:haruna.yamazaki@buzzfeed.com.

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