同じカモです。(エクリプス(左)の撮影:白井 剛)
秋、日本に渡ってきたばかりのカモ達の見所は「地味さ」だ。「茶色いですねえ」「地味ですねえ」「見分けにくいですねえ」しぶみに彩られたバードウォッチングを体験した。
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。
前の記事:「日本の西端、ヨナグニシュウダとテキサスゲート」 人気記事:「夏は池袋で毒づくし! 毒毒毒毒毒毒毒毒毒展(もうどく展)」 > 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー 「エクリプス」とは秋雨のしとしと落ちる東京の浜離宮恩賜庭園。連日の悪天候に業を煮やしてバードウォッチングを強行した。
絵に描いたような悪天候
ナビゲートは夏にアオサギの取材を共にしたアオサギ博士の白井 剛さんである。
富士急行の電車フォトコンテストに応募した写真が卓上カレンダーに採用されるという実績も持つ。
白井さんは専門のアオサギの他にも都市鳥を観察する講座をいくつか実施している。中でもマニアックなのが今回の「渡ってきたばかりのカモを見分けよう!カモのエクリプス観察講座」。
渡ってきたばかりのカモがどうかしたのか。「エクリプス」なんていう概念みたいなものが観察できるのか。 「カモは一部をのぞいてオスとメスの体の模様が違っていて、オスの方が派手ですよね」
--そうですね。 ホシハジロ。手前がオス、派手だし目の赤さがやばい。
「ただ、シベリアなどで繁殖を終えて冬を越すために日本に渡ってきた時はオスもメスのように地味な色をしています。この状態をエクリプスといいます」
--エクリプス、切れ味鋭くてかっこいいけど地味なんですね。 「カーナビでそんな名前のがありましたね......」 富士通テンのやつですね.....。. ちなみに2人とも車は所有していない。
「一番わかりやすいのがマガモです」
--マガモというと顔が緑の…… カルガモとならぶ「THEカモ」、アヒルの原種でもある。
「そう、マガモのオスは首から上の羽がきれいな緑色をしていますが、エクリプスの時は地味でメスと見分けがつきにくくなっています」
上がエクリプスのオス。マガモ感が一掃されている。(撮影:白井 剛)
--ほんとだ!清々しいくらい地味だ!しかしなんでまたいちいち地味になるんですか?
「繁殖の時はメスにアピールするために派手(生殖羽)になりますが、そうでない時は地味な方が目立たなくて襲われにくい、つまり保護色ではないかと言われています」 地味な状態で渡って来て、派手な羽(生殖羽)に生えかわっていく。
カモ界屈指のイケメン。オナガガモも……。
エクリプスの時は地味(撮影:白井 剛士)
なるほど、で、あえてその地味なカモを見ようじゃないかという講座なんですね。
「はい、渡って来た最初のうちは何だかわかんなくて面白いかなあと。種類にもよりますがだいたい冬までに生殖羽と呼ばれる派手な羽に生えかわってしまうのでレア度も高いんですよ」
--微妙なお宝度ですね……。 鮮やかに色づきはじめた木々を尻目に地味なカモ探し。
わずかな期間、単館上映しているしぶい映画を見に行くような感じだろうか。学生の頃、中野のミニシアターのモーニングショーで「知られざる縄文漆(うるし)の世界」とか見たなあ。地味だったなあ。
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