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いま、夜の街でタクシーがつかまらない「本当の理由」

バブルが来ているわけではなかった
加谷 珪一 プロフィール

タクシーも似たようなものである。東京都内を走るタクシーの数(個人含む)は2008年度には6万台を突破していたが、その後、業界は猛烈な勢いで減車を進めており、2016年度には4万8000台まで減少した。8年間で20%もの供給減である。

タクシーがつかまらないのではなく、むしろあまりにも消費者がタクシーに乗らなくなったので、2割も供給を削減したというのが実態である。ここに来て、ようやく需要と供給のバランスが取れ、タクシーがつかまりにくくなっただけに過ぎない。

加えて都内の場合には、配車アプリの普及という別の要因もある。日本交通など大手タクシー会社は、独自に配車アプリを開発しており、スマホからの呼び出しや予約が可能となっている。

 

日本ではウーバーのようなライドシェア型のサービスは規制で実現できないため、タクシー会社によるサービスに限定されるが、大手ならかなりの台数が走っているので実質的には不便はない(競争政策上の問題は残っているが)。

こうしたアプリを使っている利用者はタクシーを頻繁に利用しているので、多少のコストは気にしないと思われる。雨が降ることが分かっている時や、会食への移動など、乗客が集中しそうな時間帯での利用が決まっている時には、追加料金を払って事前に予約する人も多い。

したがって雨が降っている時や夕方の時間帯はすでに実車になっていて、空車で流しているタクシーが極端に減ってしまうのだ。

バブルで人があふれているので、タクシーがつかまらないわけではない。

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バブルと思うなかれ

11月15日に発表された7~9月期のGDP(国内総生産)は、物価変動の影響を除いた実質で0.3%増(年率換算1.4%増)となり、7四半期連続のプラスとなった。各メディアには「いざなぎ景気超え!」といった勇ましいタイトルが並んでいるが、数字の中身をよく見ると状況はだいぶ異なる。

GDPの6割を占める個人消費はマイナス0.5%と実は壊滅的な数字だった。もっとも、前回の個人消費の伸びが著しかったことの反動が大きく、各期を平均すれば基本的に横ばいとみてよいだろう。

このところ米国を中心に海外の景気が堅調で、輸出が増えたことによって全体はプラスとなった。しかし、肝心の国内消費はまったく振るわないというのが実態である。

このところの株高も基本的には海外の景気を反映したものである。輸出産業の受注が増えており、製造業を中心に来期の業績は拡大する可能性が高く、これが株価を押し上げている。

だが、これはあくまで外需要因であって、日本経済そのものが持続的に成長した、あるいは今後も成長すると投資家が判断した結果とは言えない。

外需要因での株高や、供給が絞られた飲食店やタクシーの状況を見て、バブルになっていると判断するのは早計だろう。

バブルを肯定的にとらえている人は少し慎重になった方がよいし、バブルを否定的にとらえている人は、景気加熱による弊害よりも、むしろ今後の景気低迷の方を心配した方がよさそうだ。