<承前>

そんな松原閣下の卒寿を祝う会が開かれたそうです。
出版膝栗毛:松原治さんの卒寿を祝う会
紀伊國屋書店・松原会長の卒寿を祝う/出版、演劇界などから460人が参集(文化通信2007/10/11)
             
 紀伊國屋書店・松原治会長兼CEOの卒寿(90歳)を祝う会が10月10日、東京・千代田区のホテルニューオータニで開かれ、出版、演劇、ロータリアンなど460人余が駆けつけた。…

 会場入口では発起人代表の森村誠一氏と鳳蘭さんが来会者を出迎え、フジテレビ・笠井信輔アナウンサーが司会進行。…

紀伊國屋演劇賞受賞者の井上ひさし氏は田邊茂一氏の「紀伊國屋書店は大丈夫なんだ。経営は松原に任せている。満鉄出身だぜ」との言葉を紹介し、…

 同じく受賞者、俳優の加藤剛氏は「新劇の甲子園」と演劇賞、ホールの存在を讃えた。友人代表の東電通・島津佳夫名誉顧問は、ロータリアントしての活動とバギオ資金に絞って祝辞を述べ、…

 文藝春秋・上野徹社長が松原会長は実父と同じようで、文藝春秋の読者としてのキャリアはギネスものと述べ杯を上げた。

 趣向を凝らしたアトラクション、中締めは角川グループホールディングス・角川歴彦会長が15年前のメディアワークス設立も角川書店再建15周年も松原会長なしには不可能だったとし、「社会の荒波を越える支援、恩顧を受けた」と締めくくった。

会の様子を写した写真が森村誠一サイトにあります。
豪華メンバーですね。きっとカネもすごいかかってるんでしょう。
「一方その頃、中小零細書店は次々と廃業した」などと書き足したい気分です。

業界紙サイトとかみると出版界というところはしょっちゅうパーティーを開いてるらしい。こんなに宴会ばかりやってるのってマスコミと政治家ぐらいなのでは。あと医者も? いずれにせよ縁のない世界なのでどーでもいいですけど(苦笑)

そんなこんなで「選択」の記事、後半です。

娘の名前は松尾美奈子。御年六十を過ぎている。離婚後、実家に出戻り、八六年に映像制作やDVDなどを販売する『ポルケ』を創業。会社は、東京・恵比寿の紀伊國屋本社内にある。商品の多くは取次(本の問屋)を経由して販売するものの、主な取引先は紀伊國屋だ。手に職を持たせるため松原の親心からつくった会社だろうといわれている。

「これが売れない。買い切りなので、返品もできない。ある取次はいっとき三千万円分もショタレ(不良在庫)になって廃棄した、と嘆いていました。他の取次をあわせるとショタレは一億円は下らないかもしれない。紀伊國屋内でも不良在庫化しているはずです」

伊藤は、このことを社内で問題にしていたわけだ。

ライバル大型書店の台頭

松尾は紀伊國屋の役員ではない。だが、全国の店長を招集する会議のあと、有志の中堅社員や店長、役員らの多くが松尾を囲む呑み会を開く。陽気な大酒飲みで、姉御肌だから、覚え目出度い人物は出世がかなうようになる。松尾の手足となってご注進に余念のない役員まで現れるようになった。松尾に気に入られることは出世と同義、嫌われれば左遷。会長松原のもとで社外の松尾がカを増し、派閥に属さず、正論を吐いた伊藤が追い出されたことで、社内には厭世ムードが漂う。

「出版業界を代表する社会的な企業にあって、『ポルケ』と不適切な関係を続けているのは大きな問題。松原さんの後、いっそう女帝化が進めぱ紀伊國屋がどうなるか心配だ」(関係者)

この三月、紀伊國屋は、一気に五店舗を新規に開店した。一カ月間では創業以来最大の出店数だ。別の関係者はこんなことを口にした。

「松原さんあっての紀伊國屋。出店のためにみずほ銀行が融資するのも松原さんが相手だからこそ。しかし、あと数年もすれば、そうもいっていられなくなる。松原後を狙って他の書店も虎視眈々としています」

たとえば最大の売り上げを誇る梅田本店の家主は阪急電鉄だが、関連会社の書店部門ブックファーストに本丸を明け渡さざるを得ない状況もあるかもしれないという。三年前、新宿本店のすぐ近くにはジュンク堂新宿店が開店し、猛追を受けている。

乙津はもちろん、松尾では、もはや銀行に対する神通力もなく、業界に睨みも利かない。

 
松原は、新聞連載の「私の履歴書」を単行本化した『三つの出会い』(日経新聞社)で、こう書いた。

「私は本以外のものは売らない」「本よりもうかるものを売っている部門が必ず威張るようになる」。あるいは「経営者の子どもが大学を出てそれほど経験も積んでいないのにすぐ専務や副社長になる例がしばしばある」「業容が大きくなれぱひずみを残す」。さらには「独自の経営スタイルの一つは子会社を一切つくらないことである」「不祥事の温床になる」と。

儲からず、歳のいってからの起業であり、子会社でもないから、『ポルケ』は当たらない。だが、老いてしまう前に、娘の専横と職場の荒廃に気がつかなければ、紀伊國屋ブランドも地に落ちてしまうに違いない。いったい誰が鈴をつけるのだろうか。  (敬称略)