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M-1グランプリ2017 シビアな新ルール導入で見せた番組側の「覚悟」

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「M-1グランプリ」公式サイトより

12月3日(日)に行われるM-1グランプリ決勝まであと数日となった。笑芸にまつわる賞レースで最も華やかで最もヒリヒリさせてくれるあの高揚感、ただただ待ち遠しいだけだ。

M-1グランプリに根付く「敗者復活有利論」

が、M-1に関しては、いち外野視聴者としての希望的雑想をしばし抱えていた。敗者復活に関してだ。M-1での敗者復活を振り返ると、これまでに幾つもの波乱をかもし、決戦を盛り上げて来た。

<「M-1グランプリ」敗者復活枠の成績>

<第一期>
2001 敗者復活なし
2002 スピードワゴン 7位
2003 アンタッチャブル 3位
2004 麒麟 3位
2005 千鳥 6位
2006 ライセンス 6位
2007 サンドウィッチマン 優勝
2008 オードリー 2位
2009 NON STYLE 3位
2010 パンクブーブー 3位

<第二期>
2015 トレンディエンジェル 優勝
2016 和牛 2位

いやはや、敗者復活がM-1を盛り上げて来た・・・では、もはや済んでない。敗者復活の影響が大きくなりすぎている。敗者復活ルールがまだ無かった初回を除き、敗者復活での出場者が最終決勝となる3位圏内に11回中8回入っている。しかも昨年まで6大会連続で敗者復活が3位圏内だ。

この結果が「敗者復活有利論」となって衆目の的になり根付いている。敗者復活が有利となる要因は幾つかある。準決勝を勝ち上がったファイナリストたちに比べると――、

1 本番舞台までに抱く緊張の時間が短い
2 出場順がラストのため客席が充分に温まっている
3 観る側にも新鮮な期待感がある

それに比べて、ファイナリストは抽選でネタ順が一番手・トップバッターになったら正直なところ頭を抱えざるをえない。「トップバッター不利論」は、あらゆるコンテストの定番だ。それはM-1においても然りである。

<「M-1グランプリ」トップバッターの成績>

<第一期>
2001 中川家  優勝
2002 ハリガネロック 5位
2003 千鳥   9位
2004 千鳥   9位
2005 笑い飯  2位
2006 POISON GIRL BAND 9位
2007 笑い飯  5位
2008 ダイアン 6位
2009 ナイツ  4位
2010 カナリア 9位

<第二期>
2015 メイプル超合金 7位
2016 アキナ  5位

12回中でトップバッターが3位以内に入ったのは、わずか2回。そして最下位が4回を数える。言わずもがな、トップバッターはまだ会場や客席に緊張があり、空気が温まっていないため、笑いが減縮しがちなのだ。

とはいえ「それも賞レースの宿命であり醍醐味じゃないか、順位運も実力のうちであり、勝敗の要素なのだから・・・」と片づけるには、あまりにも、アマリニモだ。なにしろここで出場者たちはネタ順の微妙な差でその後の人生を大きく左右されるのだから。

この「敗者復活有利論」と「トップバッター不利論」は、M-1が決勝の場にもたらす運命の光と影である。そろそろ放置せず、何かしらの措置を講じてもいいのではないか? と、胸中で辿り着いていたのが、

「敗者復活をトップバッターにする」

という方法だった。

確かにこれまでの敗者復活システムは、テレビ番組上の演出として、ある種の効果と結果をもたらしてきた。敗者復活で誰が選ばれてくるのか、敗者復活による下剋上が起きるのか、生放送中の不確定要素がもたらすスリリングな展開は見る側の興味をそそってきた。

だがこの演出をいったん見直し、現状の敗者復活システムから有利と思われる要素を縮小することが、大会全体に納得のいくバランスを取り戻すのではないか。それが「敗者復活をトップバッターにする」という案だ。

スタンスはプロ野球のクライマックスシリーズと同じだ。準決勝を勝ち上がったファイナリスト、つまり上位通過者にはアドバンテージを確保する。そして準決勝で敗退し敗者復活で勝ち上がった下位通過者はマイナスからのスタートを負う。

敗者復活は文字通り敗者からの復活であり、決勝の場に参戦できること自体が栄誉なことである。だから、ファイナリストとは一線を引き、ファイナリスト側にアドバンテージがあっても何もおかしくはないと、M-1の敗者復活に対してはそう思い抱いていた。

今年から導入されるシビアな新ルール「笑神籤(えみくじ)」

すると先日、11月15日、今年のM-1決勝メンバー発表と合わせ、この敗者復活の扱いも含めた新ルールが公式に発表された。それは「笑神籤(えみくじ)」と称する新ルールで、自案の頭上を高々と飛び越すものだった。新ルールの概要は以下である。

<「M-1グランプリ2017」新ルール概要>

1 これまで事前に決めていたファイナリストのネタ順は当日決める
2 これまで番組途中に発表していた敗者復活メンバーを番組オープニングで発表する
3 ファイナリストと敗者復活を含む全組のネタ順はMCが「笑神籤(えみくじ)」を引いてその場で決定し、選ばれた演者がその都度ネタを披露していく

つまり、「まずトップバッターは・・・(クジを引き)◎◎◎です!それではお願いします!」という流れで出場者が登場してネタを披露。終わって「続いてエントリーナンバー2番は・・・(クジを引き)△△△です!それではお願いします!」という流れになる。

これによって出場者たちは、本番が始まってもギリギリまで出順がわからない。順番がわかっていれば、出番までの時間に合わせて幾ばくでも気持ちを整えることが可能だ。最後のネタ合わせをしたり、私的なジンクスに励んだり、トイレに駆け込み数回えずくことも出来よう。

だがこの新ルールではそれが難しくなる。番組開始からいつでも舞台に立てるよう臨戦態勢で待て、というものだ。出場者にとっては、ほぼ最大限のシビアなルールである。

改めて、この新ルールにおける敗者復活の扱いだが、新ルールでは結局、準決勝を勝ち上がったファイナリストたちと同等の条件で肩を並べスタートすることになる。そう、平等なのだ。このシビアな新ルール導入がもたらす緊迫感をマックスに引き出し、番組全体を盛り上げることが優先事項であり、そのためにも敗者復活を何らかの別扱いにすることは、新ルールを複雑にしてしまうため、避けたのだろう。

運営側である番組スタッフが新ルール検討段階で、敗者復活をトップバッターに据える想定案も、おそらくルール改正案列挙の中にあっただろう。だが、例えば敗者復活をトップに据えて、二番手以降のネタ順を当日決めるという複合案でも説明がもたつく。それよりは、全員が同じスタートラインに立つほうがわかりやすい。

であれば、敗者復活がトップバッターになり、ファイナリスト達はこれまで通り、事前に自らクジを引き、抽選でネタ順を決めておくほうが、ファイナリスト達に多少なりとも本番舞台裏での調整時間を与えられるのだが・・・。

だが、その舞台裏から最後の猶予を奪い上げてでも、緊張感を引き上げる新ルール。M-1という頂点の場でネタ順は本番中にその都度決める―――、芸人にとって酷すぎる、もはやカイジレベルのルールだ。この新ルール導入は、もはや番組側の覚悟である。出場者たちへのプレッシャーを増やしてでも、M-1への注目度(=視聴率)をアップさせ、M-1を底上げさせるのだという並ならぬ覚悟。

これによりM-1を覆う大会全体の緊張感は確実に変わる。そしてそれが、ファイナリスト達に、スタジオ観客に、視聴者に、審査員に、視聴率に、そして「笑い」に何をもたらすのか、それは当日の始終を刮目しなければ、だ。

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