なぜ英王子の妻は「プリンセス・メガン」にならないのか
英王室のハリー王子と来年5月に結婚することが発表された米女優メガン・マークルさんは、「プリンセス・メガン」(Princess Meghan、メガン王女)にはならない。それは、長男ウィリアム王子の妻が「プリンセス・キャサリン」(Princess Catherine、キャサリン王女)ではないのと同じ理由だ。正式な、という話をするならば、故ダイアナ元妃も正式には「プリンセス・ダイアナ」ではなかった。
情け容赦のない事実だけを言うなら、英王室の典礼に従うと、マークルさんには「王族の血」が流れていない。それが理由で、キャサリン・ミドルトンさんも同様だ。
愛称「ケイト」ことキャサリン・ミドルトンさんとウィリアム王子が2011年に夫婦となった時、キャサリンさんは自動的に「ウィリアム・オブ・ウェールズ王子妃殿下」(Her Royal Highness, Princess William of Wales)になった。「Princess Catherine」ではない(編集部注:BBCニュース日本語版では、日本語報道の慣習にならうと共に、「王子妃」の意味で「キャサリン妃」と表記しています。英語記事では「ケンブリッジ公爵夫人」という表記も多用されます)。
このため、メガン・マークルさんの正式な称号はかなりの確率で、「ハリー・オブ・ウェールズ王子妃殿下」になるのだろう。正式な呼称という意味では、「ケイト王女」も「メグ王女」もあり得ない。2人とも王族出身ではないからだ。
エリザベス女王の妹、故マーガレットさんは、王家の娘として生まれたため、「マーガレット王女」(Princess Margaret)を名乗る資格があった。同様に、女王の娘は「アン王女」、孫娘たちは「ベアトリス王女」と「ユージェニー王女」だ。
しかし、アンドリュー王子の元妻サラ・ファーガソンさんは決して「プリンセス・サラ」ではなかったし、エドワード王子の妻ソフィー・リス=ジョーンズさんは「プリンセス・ソフィー」ではない。
そして、多くの人がこれに歯噛みしたのだが、伯爵令嬢レイディ・ダイアナ・スペンサーは正式には決して「プリンセス・ダイアナ」ではなかったのだ。その称号は「プリンセス・オブ・ウェールズ」(皇太子妃)であって、チャールズ皇太子と離婚後は、「プリンセス・オブ・ウェールズ、ダイアナ」(Diana, Princess of Wales)という称号が与えられた。
2011年にウィリアム王子とケイトさんが婚約した際、BBCのニコラス・ウィッチェル王室担当編集委員はこの称号問題について、人をどう呼ぶかといういささか紛らわしく、おそらく無意味な問題を巧みに解決できないようでは、英王室は1000年も栄えてこなかったと論評した。
英王室にしてみれば、君主として国を治めるという自分たちの主要業務にはあまり直接かかわらないものの、それなりに高い位につく家族の一員には、便利な肩書や「ハンドルネーム」を与える必要があるのだ。
そのため女王のいとこたちは、グロスター公爵にケント公爵だし、女王の伯父エドワード8世が1936年に離婚経験のある米国人と結婚するため退位し国を追われた際には、「ウィンザー公爵」となった。
「公爵」の位は結婚を機に授けられることが多いと、ウィッチェル記者は書いた。これはまさに、新しく王家の一員になる人を「王女」や「王子」にはしないながら、ご大層に聞こえる称号を与えるのに、「公爵」はうってつけだからだ。
このため、アンドリュー王子が1986年にサラ・ファーガソンさんと結婚した時、女王は二男にヨーク公爵の位を与え、よってサラ・ファーガソンさんはヨーク公爵夫人となったし、離婚後もこの称号を使うことが許されている。
同様に、女王の三男エドワード王子はソフィー・リス=ジョーンズさんと結婚した際に「ウェセックス伯爵」となり、新妻は「ウェセックス伯爵夫人」となった。
メガンさんについても、同様の対応はあり得る。「サセックス公爵」、「オルバニー公爵」、「クラレンス公爵」など、もう長年使われていない空位の王族公爵の位をひっぱり出してきて、女王が新夫妻に授けるという方法は可能だ(「サセックス」になるのではないかと言われている)。
しかし英王室にまつわる典礼の常として、例外は常にあり得る。女王の夫君フィリップ殿下も、結婚によって英王室の一員となったわけだが、それでも称号は「プリンス・フィリップ」だ。
1947年に当時のエリザベス王女と結婚した際、当時の英王ジョージ6世が、娘の夫に「エジンバラ公爵」の地位を授けた。しかし「プリンス」と呼ばれるようになったのは、即位後のエリザベス女王が1957年2月に「連合王国の王子としての形と称号を与え」てからだった。
女王は同様に、ケイトさんとメガンさんを「プリンセス」にすることもできるが、この問題にまつわる古くからの伝統は実に確固として確立されているため、英王室初の「プリンセス・メガン」誕生は、たとえ実現するにしても相当先のことになるだろう。
(英語記事 Why Prince Harry's wife will not be called Princess Meghan)