トルドー首相、カナダの過去の性的少数者差別を謝罪
カナダのジャスティン・トルドー首相は28日、カナダ政府がかつて性的少数者(LGBT)を差別していたことを議会で謝罪した。トルドー首相はこれに先立ち、一部の学校による先住民虐待についても謝罪している。
カナダでは冷戦中、男性か女性かを問わず多数の同性愛者が政府や軍隊の職を解雇された。政府と軍は、同性愛の公務員はソ連のスパイに利用されやすいと考えていたためだ。同性愛者は政府や軍に、自分のプライベートな性行動について尋問され、友人や知人について通報するよう強制されていた。
カナダ政府は、被害者による集団提訴の和解金として、1億カナダドルを予算として用意した。
トルドー首相は下院で、かつての政府の行動を「魔女狩りそのもんだ」と非難し、「この国がかつてしてきたことを恥と思い、悲しみと深い遺憾の意を込めて、私は今日ここに立って、こう申し上げる。私たちは間違っていた。謝ります。申し訳ない。私たち全員が申し訳ないと思っている」と発言した。
下院議員たちは首相のこの発言を、温かい拍手で歓迎した。
首相はさらに、政府による同性婚差別や、同性愛をテーマにした芸術作品を「わいせつ」と禁止したことについても議会で発言。
「自分たちは、現代のカナダを前向きで進歩的な国だと思っているが、過去を忘れることはできない」と首相は強調した。
カナダ軍が同性愛者への差別的扱いを中止したのは、冷戦終結後の1992年。元兵士が政府を訴えたのがきっかけだった。
その4年後にはカナダ人権法が改正され、性的指向の自由が保障対象に含まれた。2017年には性自認と性指向が追加された。
トルドー氏はさらに、同性愛者蔑視や差別をなくすために政府として引き続き対応が必要だと述べた。同性愛の男性による献血禁止や、HIV陽性か陰性かを明らかにしない人への刑事罰などをやめる必要があると指摘した。
「私たちは全員、愛される価値がある。自分が何者か発見するのが6歳だろうと16歳だろうと60歳だろうと、全員に価値がある」
トルドー首相が国を代表して謝罪するのは、これが初めてではない。24日には、第2次世界大戦後にニューファンランドとラブラドール地方の学校で数千人の先住民の生徒が虐待されていた問題で、被害者に謝罪した。
2016年には、1914年の「駒形丸事件」について謝罪している。この事件では、当時英領だったインドから同じ英領のカナダ移住を目指した数百人のヒンズー教徒、シーク教徒、イスラム教徒が、日本船「こまがた丸」でカナダ西部に到着したものの、ほとんどは上陸を認められず追い返された。
(英語記事 Trudeau apologises for Canada's discrimination against LGBT people)