北朝鮮の弾道ミサイル発射は世界中の脅威=米国防長官
北朝鮮は29日未明、日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射した。米国防総省によると、約1000キロ飛行し、日本海に落下した。ジェイムズ・マティス米国防長官は、発射された大陸間弾道ミサイルの高度はこれまでで最も高く、世界全体への脅威だと述べた。
マティス長官はホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領や政府高官にミサイル発射の概要を説明した上で、「正直言って、これまでのどの発射よりも高く上がった」と述べた。その上で、北朝鮮は「世界中に脅威をもたらす弾道ミサイル」を開発していると付け加えた。
ホワイトハウスによると、大統領はミサイルが飛行中に報告を受けた。後に大統領は「自分たちが対応する」と述べたという。
聯合通信によると、ミサイルは西部にある平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)から発射された。日本政府によると、ミサイルは約50分にわたり飛行した。
韓国軍は北朝鮮による弾道ミサイル発射から間もなく、ミサイル発射訓練で対抗したと発表した。
複数の政府が北朝鮮をただちに非難。日本政府は「このような暴挙は断じて容認できない」と非難。安倍晋三首相は、国連安全保障理事会の緊急会合を要請した。
韓国の文在寅大統領は、国際社会が北朝鮮に制裁を通じて圧力をかけ続けるよう求めた。欧州連合(EU)は、北朝鮮が国際社会への義務にまたしても違反したのは「容認できない」と非難。英国のマシュー・ライクロフト国連大使は「無謀な行動」と呼んだ。
北朝鮮は、米国本土に到達可能な長距離ミサイルの開発に注力しているとみられている。北朝鮮政府幹部は今年7月に発射した長距離ミサイルは「世界のどこにでも届く」と強調したが、米軍は当時これは中距離ミサイルだと分析していた。
今年9月の核実験は、長距離ミサイルに搭載可能な小型水爆の開発にかかわるものだったとされており、米国の緊張がさらに高まった。
トランプ大統領は20日、核・ミサイル開発などを理由に北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定。米政府は、北朝鮮の海上輸送や北朝鮮と取り引きする中国企業を対象に制裁を追加した。
<解説>解決のない問題――ジョナサン・マーカスBBC防衛外交担当編集委員
約2カ月ぶりの今回のミサイル発射実験は約2カ月ぶりで、しばらく中断していたように見えたのは、北朝鮮がトランプ氏の物言いにひれ伏していたからでも、中国の圧力に屈していたからでもないことが明らかになった。実のところ専門家たちは、過去にも季節によって実験のペースが落ちたことがあると指摘していた。
トランプ大統領は実験の報告を受けて、自分の政権が対応すると述べた。しかしどうやって? 米国は国連安保理の緊急会合を要請した。レックス・ティラーソン国務長官は、北朝鮮への圧力強化に言及した。
しかし北朝鮮はすでに、世界で最も孤立して、厳しい制裁を受けている国のひとつだ。使える新しい手段は少ない。
北朝鮮は解決法のない問題に見える。その核・ミサイル開発は再び、トランプ政権にとって最大の安全保障上の課題となって戻ってきた。
北朝鮮のミサイル実験――2017年
北朝鮮は今年、ミサイル発射実験を繰り返し実施した。中には発射直後に爆発したものもあるが、その多くは数百キロを飛行してから海上に落下した。今年これまでに報道された主なミサイル発射は以下の通り――。
2月12日―西岸のパンヒョン空軍基地からミサイルを発射。高度550キロに達し、日本海に向かって東へ約500キロ飛行した。
4月5日―東部の咸鏡(ハムギョン)南道、新浦(シンポ)付近から弾道ミサイル1発を発射。韓国国防省によると、ミサイルは約60キロ飛行し、日本海に落下した。
6月8日―東部沿岸の元山(ウォンサン)付近から、短距離の地対艦型とみられるミサイルを発射。ミサイルは約200キロ飛び、日本海に着弾した。
7月4日―弾道ミサイルを日本の方向に発射した。北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功したと発表。飛行距離は933キロ、飛行時間は39分で、高度は2802キロに達したと北朝鮮は主張した。
8月29日―弾道ミサイルを北東方向へ発射。ミサイルは日本の北海道上空を通過した後、北太平洋上に落下した。核弾頭が搭載可能なミサイル発射はこれが初めてとされる。韓国軍合同参謀本部によると、ミサイルは2700キロの距離を飛行し、最大高度550キロに到達した。
9月15日―平壌近くの順安(スナン)地区から北東方向へミサイルを発射。このミサイルもまた北海道上空を通過し、襟裳岬の東約2200キロの太平洋上に落下したとされる。韓国軍によると、ミサイルは高度約770キロに達し、飛行距離は3700キロとみられる。
(英語記事 North Korea latest missile launch a global threat - US)