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ドコモの2大CM 設定を「壊す」のが人気の秘密 CMプランナー 安達和英氏(電通)

2017/11/28

 堤真一、綾野剛、高畑充希、ブルゾンちえみらが出演する「得ダネを追え!」と、ポインコ兄弟&中条あやみの「dポイント」という2大シリーズを展開して人気のNTTドコモCM。CM総合研究所が発表するCM好感度調査(7月後期)でauの首位独走を阻止するなど、勢いに乗る。電通のCMプランナー・安達和英氏は、あらかじめ決めた設定にとらわれずに、「むしろ壊していくことを意識している」と言う。人気CMの作り方を聞いた。

1980年生まれ。2005年電通入社。NTTドコモのほか、アフラック「不老不死の男」、トヨタ自動車「NOAH」CMとウェブ動画「金曜日の新垣さん」など話題作を手がけている

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 「得ダネを追え!」がスタートしたのは2年半前。一般的に、スマホの料金プランはユーザーにとってわかりにくい所があるので、ドコモさんからは、とにかくわかりやすく訴求できるフレームを求められました。そこで新聞記者がお得な情報を追う「得ダネ~」のフレームが始まったのですが、当時僕は4~5本で終わるものだと勝手に思っていて(笑)。「次の展開を」と言われた時に、続けていくなら、わかりやすいだけじゃなく、面白くないといけないと思いました。そこで「トクダネ」の概念を広げて、角野卓造さんと近藤春菜さんを親子設定で起用するなど「トクダネ」をCMに盛り込んでいくスタイルに。そしてさらにアクセルを踏もうと、綾野さんと春菜さんに結婚してもらいました。結婚したら、その一発は面白いけど、以降、その関係をなかったことにはできない。一番困るのは、ストーリーを考える自分たち(笑)。だけど自分が困る、驚くようなことをやらないと、たぶん世の中も驚かない。だからあえて、そうしているところがあります。

高畑充希は2016年に「ズンドコモ節」などの歌モノで活躍を見せ、17年は7月の「みつきのほんき編」(写真)でブルゾンちえみのネタを見事にカバー。7月後期のCM好感度1位獲得に大きく貢献した

 もう1つの「dポイント」は、キャラクターを作ろうという話から企画が始まりました。その時に、「ポイントだから、ポインコは?」とダジャレを言ったら盛り上がったので、「ウザかわいい」を意識して設定を考えたんです。あまり世の中に媚びず、生意気なくらいの方が、今の時代は愛されると思ったので。

 ポインコも過去に2回、アクセルを踏んでいます。1回目は16年の秋。僕は生理的にけん玉のリズムが好きで、佐藤雅彦さんのCM(1980年代の湖池屋「スコーン」など)も好きだったんです。それで中条さんに「もしもし亀よ~」のリズムに乗せて「申し込んですぐよ~」と歌いながらけん玉をしてもらったら、ヒットした。

 2回目は16年末からのApple PayのCM。ポインコ兄弟をリアルの世界に飛び出させ、綾野さんと共演してもらいました。理由は、ポインコの世界観を広げて、視聴者を飽きさせないため。そんなふうに、フレームにとらわれないというか。むしろフレームを壊していくことを意識しています。

■お笑い芸人を起用する効果

 シリーズを続けるために、芸人の方を入れていくことも有効だと思っています。ドコモユーザーは老若男女幅広く、映画やドラマが好きな人もいれば、ネットニュースをザッピングして見るような人もいる。そんななか、芸人さんは幅広い層に知られていて、世の中の話題にもなりやすい。しかも春菜さんやブルゾンさんのように演技がうまい方も多いので、ちゃんとドラマとして成立させられるのも、ありがたいところです。

 ほかにも高畑さんの「ズンドコモ節」のように歌モノを入れてバラエティ度を上げたり、ターゲットに合わせて映像トーンを変えたり。なかでも意識しているのは、セリフです。最後はちゃんと広告として機能する言葉に着地させなきゃいけないし、行き過ぎた表現を使ってしまいSNSで炎上してもいけないので、言葉の1つ1つに最後まで注意を払っています。

 目標は好感度年間1位。結果を残して、あと5年は続けたいです(談)

(ライター 泊貴洋)

[日経エンタテインメント! 2017年11月号の記事を再構成]

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