最近、都心部を中心に「飲食店の予約が取れない」「タクシーがつかまりにくい」といった話を耳にするようになった。
一部の人は、いよいよバブルが再来したと考えているようだが、本当にそうなのだろうか。飲食店やタクシーなど、身近な体験から景気を判断するのは大事なことだが、いわゆる街角景気には落とし穴もあるので注意が必要だ。
このところ繁華街が賑わっているのは確かである。オジサンの聖地と呼ばれる新橋でも、働き方改革で残業が減っているせいか、一部のお店では夕方6時頃から大量のサラリーマンで満席だ。オジサンだけではなく、若い人の姿も結構目立つ。一時期と比較すると街の様子はだいぶ変わってきたといってよい。
タクシーがつかまらないというのもおそらく本当だろう。少なくとも東京都内については、昼間の時間帯こそ空車が目立つものの、夕方を過ぎると極端に実車の割合が増える。昼間でも雨が降ると、空車のタクシーを探すのに苦労することが増えてきた。
飲食店やタクシーは景気の動向に敏感な業種といわれており、これらの業界がどのくらい繁盛しているのかを見れば景気の動向をかなり正確に把握できる。経済分析というと無味乾燥な数字とにらめっこするというイメージが強いが、有能なエコノミストなら各種指標に加えて、現場での皮膚感覚も必ず分析に取り入れているはずだ。
実はこうした手法は、政府の正式な経済統計にも用いられている。
内閣府では、毎月、景気ウォッチャー調査という統計を取りまとめているが、これは、タクシー運転手やコンビニの店長、レストランのスタッフなどから聞き取り調査を行って、その結果を指数化したものである。新聞などで「街角景気」として報道されるのはこの調査のことを指している。
街角景気の調査結果を見ると、2016年前半に景気が底入れし、2017年の後半になってからは数字がかなり上昇している。商売の最前線にいる人たちも、景気はよくなっているとの印象を持っているようだ。
しかしながら、こうした街角景気は、
飲食店やタクシーから景気を判断する方法の弱点は、どれだけの数のサービスが提供されているのか判断がつかないことである。
仮に過疎地域であっても、そこに1店舗しかお店がなければ、そのお店は繁盛することになる。一方、景気が良くなっていても過当競争で店舗数が多すぎる場合には、閑古鳥が鳴く店も出てくる。
特に飲食店がそうなのだが、ビジネス・モデルの性質上、継続して商売を行うためには、かなりの繁盛店になっている必要がある。ウラをかえせば、まともに商売ができている飲食店の多くは繁盛店なのだ。