インドネシア在来線高速化も中国が奪うのか

成立寸前でさらわれた高速鉄道の二の舞いも

北本線を行く30両編成の貨物列車。インドネシアの機関車は9割以上がゼネラル・エレクトリック製で、写真は2013年から導入されたCC206型(筆者撮影)

インドネシアでは目下、JICA(国際協力機構)が中心となって、ジャワ北本線高速化事業(在来線の高速化工事、日本でいうスーパー特急に相当)のF/S(フィジビリティスタディ:実現可能性調査)が進められている。その事業をインドネシア国内でアピールする特別列車が、10月7日、首都ジャカルタのガンビル駅と第二の都市スラバヤのパサールトゥリ駅の間で運行された。

インドネシア初にして唯一の国産ディーゼル機関車CC300型が運輸省所有の高官専用車を牽引し、ジャカルタ―スラバヤ間を9時間10分で走破した。高速化工事が完成すると、これが約5時間に短縮される。CC300型は2012年~2014年にかけて5両が国営車両製造会社、INKAによって製造されたものの、性能的な問題からいまだ営業運転に就いていない。通常は工事用列車ないし、INKAで製造された客車の試運転に使用される程度である。

現地メディアは冷ややかな反応

その機関車が初めてジャカルタに入線し、北本線をひた走る。インドネシア鉄道(PT KAI)が運行する、現在の同線最速列車、特急「アルゴ・ブロモ・アングレック号」の9時間ジャストには及ばないものの、初のオール国産車両が9時間10分で走破するというのはセンセーショナルな事象になるはずであった。

だが、現地メディアの反応は実に冷ややかなものであった。筆者の知るかぎり、この件についてはまったく報道されていない。当然ながら日本がF/S調査に参加していることなど、インドネシア国民は知る由もない。ジャカルタ―スラバヤ間は空路ならわずか1時間半。いくら鉄道を高速化しても5時間かかっては航空機に勝てない。

※鉄道は南本線経由含む ※料金は共に時期・座席により変動あり 出典:筆者作成

料金は鉄道のほうが割安だが、高速化されれば値上がりは必至。料金面で航空機に対しての優位性は薄れる。所要時間で勝てないのなら、北本線ではなく沿線人口の多い南本線を改良したほうが、まだ現実性があるかもしれない。北本線はスマランの先、スラバヤまで、これといった都市がないからだ。

次ページF/Sとは事業化の可能性を調査するはずだが
関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

  • NO NAME3effced05bbe
    狭軌での高速、大量輸送は日本がずっと頑張ってきた分野。頑張って欲しい。
    up1
    down0
    2017/11/29 10:59
  • NO NAMEf30e76289f14
    うん?どうなってるんだ?
    この車は軌間が1,067mmのままか?そこにディーゼルで高速鉄道網にするの?
    何を考えているのかよく分からない話なんだが。
    up0
    down0
    2017/11/29 10:33
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
業績上振れが続出!<br>快進撃企業ランキング

最高益更新率100%超のLINE、上方修正800億円のソニー、10年以上連続営業増益のニトリHD、ドンキホーテHD…企業の業績改善が止まらない。ランキングで企業の絶好調ぶりに迫る。