「意識高い系」を揶揄することでポジションを獲得しようとする人間よりも、「意識高い系」と呼ばれる人間の方が好きです。
理由は、単純なカロリー計算で、「意識高い系」を揶揄する方が低カロリー&ノーリスク(アホでもできる仕事)なので、そんなところには恥ずかしくて軸足を置けないからです。

ちなみに、文化祭で張り切る奴を揶揄する人間よりも、文化祭で張り切る人間の方が好きです。
張り切る人間が、揶揄する人間の雇用を生んでいるからです。

一言で言うと、ボケの人間が好きです。
ボケの人間がいないと、ツッコミの人間は存在することができません。
なので、バラエティーの現場ではボケの人達に対して、感謝しかありません。
もちろん、梶原君に対しても。

僕は、僕自身が「意識高い系」なので、SNSに意識の高い投稿を繰り返す人達の気持ちがよく分かります。

つまるところ、アレですよ、アレ。
『ダイエット宣言』だとか『禁煙宣言』。
アレって、誰からも訊かれてもいないのに宣言しちゃうじゃないですか?

皆様も一度くらいは宣言したことあるのではないでしょうか?
誰からも訊かれてもいないのに。

誰からも訊かれてもいないのに、それでも、わざわざ宣言する理由は一つで、「宣言して、退路を断たないと、サボってしまうから」

つまり、自分が『ダメ人間』だということを根底で理解している。
粛々と目的が遂行できるほど意識が高い人間ではないことを、自分が誰よりも分かっているわけです。

僕はダイエット宣言も禁煙宣言もしたことがありませんが、その気持ちは超分かります。

訊かれてもいないのに「ひな壇に出ない」と宣言した時がそうでした。
当時(25歳の頃)は、ひな壇を断つと仕事の8~9割が無くなってしまい、いとも容易くジリ貧に追い込まれてしまうという状況。
当然、収入や気持ちが滅入ってしまったタイミングでオファーがあれば、すがるように引き受けてしまいます。
そもそも他の芸人さんのように“「ひな壇」で上手く立ち回れる才能なんて無いのに”です。

そこで、訊かれてもいないのに「ひな壇に出ない」と宣言することで、二度とオファーが来ないようにして、ひな壇以外で仕事を作らないといけない環境にしてみました。

ダイエット宣言や、禁煙宣言や、SNSで背伸びをした投稿を繰り返すのと、同じ原理です。
皆から見られている場所に旗を立てないと、僕らは逃げてしまうのです。

あ。「ディズニーを倒す!」なんかも同じ理由ですね。
最近は、「全然、ディズニーに勝ててねぇじゃん。ざまぁ」と言われるようにまでなりました。目的地に着々と近づいています。

話を戻します。

意識高い系と呼ばれる人の内情を知っているので、ときどき、SNSで回ってくる意識の高い投稿を見るとニヤニヤしてしまいます。
結構じゃないですか。
それが僕らのような弱い人間の生存戦略なのだから。

意識高い系を揶揄する人達には「まぁ、そんなにカリカリしないで」と思う一方で、僕に対しては、もう少しガンガン来てくれて構いません。
最近、「実は、もうキングコング西野にはアンチがいない説」が出回っていて、このままでは食いっぱぐれてしまいます。
「嫌われている」という自虐がウケなくなってきました。

絵本『えんとつ町のプペル』の無料公開をバッシングする人達が大量にいてくれたお陰で、カウンターとして『革命のファンファーレ』という本を出すことができました。
そこはもう持ちつ持たれつですから、今後も僕は「意識高い系」を続けますので、アンチの皆様はもう少し元気を出してください。


《アンチが生んだ一冊》