ドン・キホーテにこのあいだ行ったときに「FCHOME88」というファミコンゲームが88個入っているゲーム機を見つけた。しかも値段も3000円くらいで安かったので、すぐに買って帰った。
家で少しやってみると、正直言って「おもしろい」とは言い難いクオリティのものばかりだった。しかし、だからこそ今のゲームにはない、ファミコンらしい理不尽さや不便さがあっておもしろい。 せっかくなので一人でやるのではなく、このゲームをみんなでやってみることにした。
大学中退→ニート→ママチャリ日本一周→webプログラマという経歴で、趣味でブログをやっていたら「おもしろ記事大賞」で賞をいただき、デイリーポータルZで記事を書かせてもらえるようになりました。嫌いな食べ物はプラスチック。
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FCHOME88はファミコンの互換機で、初代のスーパーマリオやドラクエ1などのカセットがあれば、ファミコンの本体の代わりにプレイ出来るようにするものだ。しかもこちらはHDMIで繋げられるようになっているので、最近の薄型モニタにも対応しているから接続も楽になっている。
しかしこのFCHOME88というのは、互換機としての機能だけでなく、カセットを入れないで起動すると88個ものオリジナルゲームをプレイすることが出来るのだ。 聞いたことのない英語のゲームタイトルが88個もずらりと並ぶ。
しかし、ゲームが88個もあるものの、正直言ってそれぞれのクオリティは高くなく、単体で見ればいわゆる「クソゲー」と言われても仕方のないものばかりだ。かなり独特でシュールな作品も中にはある。
しかし、かつて初めて触れたゲームを思い出してみてほしい。それがファミコンでもスーパーファミコンでもケータイ電話のアプリでも、プレステでもなんでも良い。ルールがわからないながらも、プレイしていくうちに「ああ、なるほど!こういうゲームか!!」とだんだんとわかっていくのは快感だったと思う。 最近のゲームは親切すぎてFCHOME88をやるとかなり不便に感じるが、やると「これこそがゲームだ」と血がたぎる。そしてやっぱりあの8bitのピコピコとなるゲームの安っぽい音楽も最高だ。 こちらは「SKY ZONE」というゲームの画面。どこか懐かしい横スクロールの2Dアクションゲームだ。
ルールを知った上でやるのではなく、「何もわからない状態でやる」からゲームはおもしろいのだ。攻略方法がネットで簡単に手に入る今だからこそそういったプレイ方法でゲームを楽しむのもまたいとをかし。
初めて幼稚園のときにドラクエ1をやって、最初のカギの開け方がわからなくて、王様の部屋から出られず、延々とせまいスペースを歩き周ったのが懐かしい。数年して初めて宝箱の存在に気づいて、部屋から出られたときは感動したなぁ…! ということで今回は、FCHOME88のシュールすぎるゲームの世界観を紹介しつつ「試行錯誤しながらやるゲームは楽しい」という感情を思い出していきたい。 ゲームというよりも謎解きをやらされているような感覚になる部屋を借りてみんなでやってみることにした。実家のリビング感がすごい。
今回はデイリーポータルZのライター陣に協力してもらった。左から、江ノ島さん、北向ハナウタさん、ネッシーあやこさん、さくらいみかさんだ。
ということで、デイリーポータルZのライターの方々に一緒に童心に帰ってゲームを楽しんでもらえるよう協力してもらった。こういったものは一人でやるよりもみんなでやる方がおもしろいからだ。決して、一人でFCHOME88をやってみたときにゲームの質が低いことに驚いて他の人を巻き込まないとやってられないということに気づいたわけではない。決してない。楽しいことはみんなで分かち合うべきだ。
ちなみに今回参加してくれている江ノ島さんは2Dゲームに自信があり、さくらいさんとハナウタさんはそれなりに出来るという話しで、ネッシーさんに至ってはほとんどゲーム初心者ということだ。バラバラのゲーム経歴で果たして楽しめるのか?というのも今回のポイントだ。 88個もゲームがあるが、すべてが名前もまったく聞いたことのないオリジナルのゲームばかりだ。一覧を見ると気になるタイトルもかなりある。「GOAL KEEPER」のようになんとなく想像できるものもあるが、「COOL BABY」のように名前からは中身がまったく想像ゲームもかなり多い。あと「MONSTER BALL」などと言った微妙なラインのタイトルのものある。もしかしてポケモンのパクリか…?
あと手抜きなのかわからないが「LONG JUMP」、「TRIPLE JUMP」というような「〇〇 JUMP」というゲームが7個ほどある。RPGで色違いのモンスターを出して、敵の数を量産するかのようなやり方だ。 【入っているゲームのタイトル例】
・COOL BABY ・CUTE BEAR ・CUTE FISH ・JUMP JUMP ・GOLDNE BIRD ・100M DASH ・BOMB TIME まずはゲームをあまりやらないネッシーさんが挑戦。
今回は順番に気になったタイトルのゲームをやっていくことにした。様々なタイトルが並ぶ中で初めは一番わかりやすそうな「EGGS」というゲームをネッシーさんはやることにしたようだ。単語の意味はもちろん卵であるが、どんなゲームかはまったくわからない。ヒントが少なすぎる。外国のレストランに来たような気分だ。ただ予想としては、ほんわかした牧場のゲームのようなものだろう…。
しかし、予想とはまったく違い、いかついロボットを操作するゲームだった。
スタートするとタイトル画面も何もないままいきなり平和な画面にオレンジ色のロボットが現れる。そして頭上からは卵が落ちてくる。どうやらこの落ちてくる卵をひたすら拾うゲームのようだ。
実に単純なゲームであるが、「EGGS」というタイトルだけでスタートさせ、いきなりこの画面が現れたので全員がぽかんとした。おそらくそれぞれの脳内に思い描いていた「EGGS」のゲーム像があったのだろう。ロボットが出てくるとは誰も予想できなかったようだ。というか予想できていたらそれはそれで怖い。 ルールはどうやら「卵を拾う」で合っているらしいが、このゲームはものすごくシュールなもので、そしてゲームとしては致命的な欠点があったのだ。 卵をキャッチするとその中身が画面に出てくる仕掛けになっている。ただ、像は卵から生まれない。
像くらいで驚いてはいけない。このあと勧めていくと卵から無機物が出てくるなんてざらにあるのだ。後々「house」や「moon」のようにどんどんエスカレートしていく。
ひたすら卵を拾って、ひたすら中からものが出てくるというだけの、ひたすらシュールなゲームだ。これこそがFCHOME88の世界観なのだ。こういった独特なゲームが88個も入っているのだ。そう考えるとワクワクしません?
ちなみに卵の中身で個人的に一番好きだったのは「BOX」だ。ただの箱だ。もっと他に入れるものなんて世の中にたくさんあっただろう。ネタ切れにも程がある。 シュールすぎる世界観に全員が笑った。
さらにこのゲームには最大の特徴があるのだが、それはゲームとしてはありえないものなのだ。なんと「ゲームオーバー」「死亡」といった概念が存在しないのだ。もちろん「時間制限」も存在しない。卵がいくつ地面に落ちようが延々とゲームは続くのだ。まさに生き地獄。延々と卵とらされるのであれば、賽の河原で石を積んでいた方がよっぽどマシかもしれない。
【EGGSの感想】
「死なないゲームという斬新さがすごい」 「シュールの極み」 「よく意味がわからない」 「世界一平和な国」 FCHOME88にはもちろんゲームの説明書や、チュートリアルなんてものは存在しないので、ゲームのルールは一切わからない。先ほどの「EGGS」のように始まればわかるものもあるが、しばらくプレイしても何のゲームなのかまったくわからないものもある。
そうなると「どうやってこのゲームは遊ぶのか」という推理をみんなですることになる。これが実におもしろいのだ。さくらいさんがプレイした「MONSTER BALL」とういゲームがまさにそういう状況であった。 「MONSTER BALL」というタイトルからポケモン的なものを想像したがまったく似て非なるものだった。
「MONSTER BALL」をプレイした瞬間に全員の頭にはてなマークが浮かんだ。今まで見たことのない画面構成だったのでどんなゲームなのかまったく想像ができなかったからである。そして何よりも操作の仕方がまったくわからないのである。
真ん中からボールが上下左右にランダムで出てきて、それが緑とピンクの謎の生物の口に入っていくという動作が繰り返し自動で行われていくのだ。謎だ。パズルゲームなのか、アクションゲームなのか、まったく想像がつかない。 全員でコントローラーを交代で触りつつ何のゲームなのか推理していく。
5分ほど議論を重ねていき。結論が出ないまま、なんのゲームなのか永遠の謎に包まれそうになったが、ハナウタさんの「もしかしてあの口のところでタイミングよく何か押すんじゃないですか?」という一言から徐々にどんなゲームなのかわかっていった。
結果として「太鼓の達人のようなリズムゲーム」ということが発覚した。予想外すぎる。 発覚したルール
ルールは実に単純で、緑色のボールが緑色の口にきたらAボタンを押して、ピンク色のボールがピンク色の口に来たらBボタンを押すというものだ。リズムゲームの始祖的な存在かもしれない。
しかし上記のことさえわかってしまえばゲームはものすごく簡単で、リズムも一定だし玉も一個ずつしか出てこないのでミスすることはほとんどない。ものすごく簡単なのだ。もしこのゲームのクリアを目指してひたすらやるのであれば、必要なのは忍耐力だけだ。目の前に流れてくる仕事を淡々とこなすロボットにさえなれれば攻略は可能だ。 ルールが分かった瞬間に一気に冷めた様子のさくらいさん。みんなで「どういうゲームなのか」を考えているときが一番楽しいのだ。
【MONSTER BALLの感想】
「ルールはわかったけど楽しみ方はわからない…」 「まさかリズムゲームだったとは!」 「さっきやったEGGSもそうだけどシステムが独特すぎる」 「ルールがわかってスッキリした」 ここまで2つ独特でシュールなゲームを紹介したが、FCHOME88にはもちろんちゃんとしたわかりやすいものも存在している。マリオのような横スクロールアクションだったり、シューティングゲームだったり様々にある。
しかし、そういったわかりやすいゲームこそがFCHOME88においてはおもしろくないのかもしれない。なぜなら普通だからだ。クオリティがあまり高くないゲームで、そのうえ個性のないジャンルのゲームになってしまうと、ただただつまらないのである。 こちらは「JUMP JUMP」という可もなく不可もなくのゲーム。
落ちてくる丸太に飛び乗って上を目指していく「JUMP JUMP」というゲームは、今までやったゲームと比べるとわかりやすいし、ゲームとしても非常にハマりやすいジャンルのものだ。ガラケー時代のアプリゲームを思い出す。
しかし、ものすごく普通なのである。ここまで2本とも独特だっただけに、より際立って普通にしか感じない。おそらくこのゲームが個別であったらおもしろいのかもしれないが、FCHOME88に求めているゲームはこういうものではない。ファミコンにあったような尖った作品がやりたいのだ。 ディフェンスとオフェンスに別れて後ろの人形に玉を当てて得点を競う「DOLL」というゲーム。ディフェンスが松岡修造みたいでやたら機敏。
プレイヤーが真ん中の大きい戦艦。動くことはできない。砲弾の向きを変えて360度から襲ってくる敵を撃ち落とすという斬新なシューティングゲーム
明らかにボンバー◯ンをパクっている「BOMB TIME」というものもある。
壊れた道を直して車が通れるようにするパズルゲーム「ROAD MAN」
ROAD MANに関しては江ノ島さん曰く「やろうと思えばずっと出来るゲーム」らしい。
ひたすら間違い探しをするゲームもある
キャラクターがかわいいのに拷問器具みたいな敵しか出てこない「GOLDEN BIRD」
やはり玉石混合で、おもしろいものもいくつかあるし、意味がわからないものまで様々ある。一人でやるのもおもしろいし、友達とわいわいやってもどちらでもおもしろいと思う。
最後にFCHOME88を活かしたゲーム対決のやり方を教えたい。 今回は上記のようなルールで行った
「2Dゲームには自信がある」と豪語する江ノ島さんと対戦してみた
どんなゲームが出てくるのかわからないので、不公平さがない戦いになるはずだ。また特別ルールとして「勝負にならないようなゲームを選んだらその場で即一敗」というFCHOME88ならではのルールもある。これは「どんなゲームなのか未知すぎるとき」や「長時間かかりすぎるゲーム」などが上げられる。
もぐらたたきのようなゲーム。「花を叩くとマイナス点になる」という情報は先攻は知らないので、後攻は圧倒的に有利になる。
この対決の仕方だと、後攻の人は先攻の人のやり方をみることが出来るので、先攻が明らかに不利だ。しかし逆にそこがおもしろい。そこを制したときの爽快感がたまらない。そして、知らないゲームという一回限りしか出来ないルールの緊張感があるのも良い。
2人じゃなくても4~5人くらいでやってもけっこう盛り上がると思う。一回しかできないこの貴重さはぜひ体験してみてほしい。 手に汗握る対決
しかし終わってみれば4対1と僕の圧勝であった。
罰ゲーム用に持ってきた飲み物
さっきまで元気に一緒に騒いでいたのに…
2秒でおとなしくなりました
【FCHOME88 全体の感想】
「家にあったら一人で延々と色んなゲームやるかもしれない」 「くだらないものもあるけど、そうだと知って割り切っていればおもしろい」 「もう一回やりたいゲームがあるか?と聞かれるとないかもしれない」 「子供の頃に家にあったら間違いなく毎日やっていた」
やっぱりゲームの上手さに関係なく出来るゲームというのは良いものだ。最近のゲームはむずかしすぎて年齢や人を選ぶものが多いので、みんなでワイワイやるのであればFCHOME88くらいのクオリティのゲームがちょうど良いのかもしれない。単純で誰でもわかるゲームというのは良い。やっぱり2Dのゲームはこの先も生き残って欲しいと思った。
最終的にはみんな飽きて僕一人だけでやっていた。やはり楽しいと言ってもゲームのクオリティ的に限界がある。もしくは僕がクソゲー好きなだけかもしれない。
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