「産直」「顔の見える関係」――。今でこそ、こうした言葉もなじみ深いものになってきましたが、パルシステムでは、30年以上も前から、農家との「交流」を育み、きずなを深めてきました。
パルシステムのなかでも、産直の草分け的存在の、JAささかみ(新潟県)。交流が始まったのは1981年のことです。当時、米といえば、戦後の食糧管理法(食管法)のもと、流通は厳しく管理されていた時代。特定の産地を指定するということは、なかなか認められるものではありませんでした。しかしパルシステムでは、「安心して食べられる米を自分たちの手で」との思いで、地道に話し合いを重ねたのです。
翌1982年には、産地を襲った台風被害に対して見舞金を届けるとともに、組合員に呼びかけてのキャンプ形式の交流会をスタート。こうした熱心な交流に後押しされるようにして、1984年、当時の笹岡農協(現JAささかみ)は「生協との産直以外に道なし」と、米の産直取引を開始する結論を出したのです※。こうした草の根の活動は、現在の産地交流へと、脈々と受け継がれていきます。
※『パルの素』(2006年、生協OB協会 編著)より
JAささかみでの「草取り&生きもの交流ツアー」
JAささかみでの「稲刈りツアー」
現在、JAささかみ(新潟県)では年に4回の「産地へ行こう。」ツアーを実施。春の「田植え」に始まり、初夏は「草取り&生きもの交流」、夏には「サマーキャンプ」、秋の「稲刈り」と、毎年たくさんの組合員が訪れています。
一面緑の大自然の中で生きものとふれあったり、産地の人々の優しさにふれ、いつもは避けている土や泥、草むらに入っているうちに感じる楽しさ、普段の生活では味わえない感動は、何にも代えがたいもの。参加した組合員からは、「息子が生き生きと自然とふれあうことができてよかった」「お米ができるまでにたくさんの時間と手間がかかっていることを、子どもに伝えられました」「すっかり『ささかみ』にはまってしまいました!」と感動の声の数々。
主催する生産者の熱い想いも特別です。「自然豊かで生きものと共存する農法を行う現場を見れば、『農業は効率だけではない』ことを知ってもらえるはず。この風景を思い出して食べてもらうこと、それが一番の願いです」と、JAささかみ・専務の江口聡さんは話します。
届いたお米を食べるだけでなく、その向こう側にある産地の風景と生産者たちの思いを確実に感じられる関係を築く――訪れた人はきっと、その産地の応援団になるはずです。
JAささかみでの「サマーキャンプ」
そんなJAささかみでは、震災後、「福島応援企画」にも取り組んでいます。福島県では、放射能への不安から、自由に外で遊ぶことができない福島の子どもたちがたくさんいます。そうした子どもたちにも、ささかみの田んぼで遊んでもらおうと、パルシステム福島の組合員に広く呼びかけ、「産地へ行こう。」ツアーに招待したのです。「田植え」や「草取り&生きもの交流」、「サマーキャンプ」、「稲刈り」など、今年度参加したパルシステム福島の組合員は49組160人になりました。(109組342人中)
「週末だけでも放射能から逃れて子どもたちを休ませてあげたかった」「毎日張り詰めた生活をしていますが、親子ともども、のびのびと過ごすことができて大変ありがたかった」と、組合員からは感謝の声が届いています。
震災により、半年間中止になっていた「産地へ行こう。」ツアーを、秋には再開できたのも、JAささかみの熱意のおかげ。「『田植え』『草取り&生きもの交流』は残念ながら中止になりましたが、産地では、『稲刈り』のためだけに、春から田植えをして、田んぼを用意してくれていたんです。2011年は、パルシステムとJAささかみが築いてきた"きずなの強さ"を改めて感じる1年となりました」(「産地へ行こう。」ツアー担当:新元)
「産地と食卓と、未来をつなぐ」――この共通理念のもと、パルシステムの産地交流は、生産者、組合員のさまざまな思いをつなぎとめる場として、そして「産直の原点」として、発展を続けていきます。