原発事故による食品の放射能汚染は広範囲にわたり、小さなお子さんをお持ちの方をはじめ、消費者のみなさんは不安な日々を過ごされていることと思います。パルシステムは「食の安全」を何よりも優先し、「放射線の被曝はできる限り少なく」という原則に従い放射能対策を進めてきました。
ゲルマニウム半導体検出器による玄米の放射能検査の様子(パルシステムの商品検査センター)
2012年2月には、パルシステムの自主基準であるガイドラインを引き下げ、毎日の食事でたくさん食べる食品である米については、10ベクレル/kgとしました。ただし、この値は「これ以下ならよい」というものではなく、たとえガイドライン以下の放射能が検出されても、可能な限り低減対策に取り組んでいくものとしています。
検査には、パルシステムの商品検査センターに導入したゲルマニウム半導体検出器を使用(検出限界:5ベクレル/kg)。2012年産の米は、北海道から九州までの全産地で、供給前に玄米検査を実施することとしました。
こうしたパルシステムの方針に伴い、生産者の側でも、対策に動いた産地があります。パルシステムに『エコ・宮城ひとめぼれ』を供給するJAみどりの(宮城県)には、「パルシステム米栽培研究会」という、パルシステム向けの米を栽培する生産者約200人の集まりがあります。
JAみどりのでは、昨年の米から放射能は検出されませんでした。しかし、パルシステム米栽培研究会の全生産者が、放射能対策に有効なカリウム肥料を散布することを決めたのです。
カリウムはもともと作物が必要とする肥料成分のひとつで、セシウムとも似た化学的性質があります。そこで、カリウムの量を増やすことで、放射性セシウムを米が吸収するのを低減できるのです。このことは、農水省所管の研究機関でも実証されています(※)。
パルシステム米栽培研究会の会長を務める三神新さんは、「長年交流を通して培ってきた信頼や、震災後に支援していただいた恩にこたえるためにも、考えられる対策はすべて実行する」と、決意を語っています。
※独立行政法人 農研機構中央農業総合研究センター発表の「玄米の放射性セシウム低減のためのカリ施肥」
塩化カリウム肥料の散布の様子
JAみどりの(宮城県)パルシステム米栽培研究会
会長の三神新さん(右)と副会長の齋藤鈴男さん
JA会津いいで(福島県)・有機の里栽培グループ
代表・大八木孝さん
消費の低迷に悩む福島県の産地も、懸命の対策に追われています。パルシステムの『エコ・会津こしひかり』を出荷するのは、福島県の中でも西の会津地方に位置する、JA会津いいで(福島県)。昨年は、産地が位置する喜多方市が、独自に市内26地区、全300カ所の玄米を検査し、すべて「不検出」でした(検出限界:10ベクレル/kg)。
JA会津いいで・有機の里栽培グループ会長の大八木孝さんは「私にも2歳になる孫がいます。徹底した検査で、安全だとわかっていてこそ、食べさせることができる」と語っています。
大八木さんたち生産者は昨年、放射能対策として、あえて収穫量が減る栽培方法も実行しました。万が一、土壌表面に放射能があった場合、稲が倒れた際に付着することを避けるため、肥料を少なめにして稲の背丈があまり伸びないよう工夫したのです。
消費者も、生産者も、毎日食べる米だからこそ、「安全なものを」という思いは同じ。パルシステムは、「食」と「農」をつなぐ立場として、「安心して口にできる食」を次の世代に手渡せるよう、今後も産地とともに全力をあげて取り組んでいきます。
- パルシステムの放射能対策
- 安心できる「食と農」を取り戻すために