1993年――日本はその年、記録的な冷夏に見舞われ、翌年まで続く深刻な米不足に陥りました。米騒動、タイ米の緊急輸入など、私たちはいまだかつてない経験をすることに。産直を進めてきたパルシステムでも、産直米を充分に確保できない事態となり、大きな衝撃を与えました。
この苦い経験を教訓に、パルシステムでは1995年に、生産者と消費者をつないで米の安定供給をめざす「予約登録米」制度を始めたのです。これは、春の田植えの季節に、秋の収穫から1年分の米の利用をあらかじめ約束する仕組みです。
以来、「安全でおいしいお米を食べたい」という組合員の願いと、「安定的に安全なお米を食べてほしい」という生産者の願いをつなぎ続けて今年で18年目。米の消費量が年々減り続けるなか、多くの支持を集め、登録者数は18万人を超えています。
そんな「予約登録米」が始まって以来の危機が、東日本大震災でした。世間では、物流網の寸断などから首都圏でも食料品や日用品が不足する事態が発生。とくに主食である米は、長期にわたって品薄の状況が続きました。
こうしたなか、パルシステムでは「主食である米を切らせるわけにはいかない。とくに『予約登録米』は、なんとしても届けなければ」との思いで、産地や精米工場と協力しあい、「予約登録米」を登録していた組合員全員に対し、震災後も一貫して米を届けきることができました。
JAみどりの(宮城県)では、震災で倉庫内の米袋が崩れ、復旧に時間がかかりました
「とにかく、何もかもが普通ではなったし、パルシステムの配送もなかばあきらめていたのですが…。箱の中にいつもの『予約登録米』の袋が見えたとき、涙が出そうになりました。産地を応援するつもりで申し込んでいたのですが、こちらのほうが助けられた。ありがたかったですね」と、組合員のひとりは話しています。
JAささかみ(新潟県)で見られるハッチョウトンボ
「予約登録米」は、生産者にとっても大きな支えとなっています。「おれたちの作る米を予約して、収穫を心待ちにしてくれる人がいるっていうのは、本当にうれしいこと」。JAつくば市谷田部の生産者・小堀淑守(よしもり)さんは、笑顔でそう話します。
JAつくば市谷田部では、農薬の使用回数を大幅に減らした「エコ・チャレンジ」米を作っていますが、そのためには、植える苗の本数を少なくし、風通しをよくして病害虫を防ぐなどの対策をしています。おのずと、一般的な慣行栽培のように収穫量は上がりません。
一般的な価格優先の米作りの場合、効率性や収穫量が求められることが多いため、こうした手間ひまかけた米作りは、なかなか評価されにくいもの。それでも「安全性を優先したい」「生きものを育む環境保全型農業を進めたい」とする生産者にとって、「予約」によって、あらかじめ「届け先」が決まっていることは、大きな安心感につながるのです。
食料自給率の向上をめざし、2008年から「100万人の食づくり」運動を進めてきたパルシステム。とくに米は、国内で充分まかなえる貴重な主食であり、地域社会や自然環境、人々の安心を支えてきた大事な食べ物として、もっとも重視しています。
国の減反政策、農業人口の高齢化が進み、一方では消費量の低迷、TPPによる貿易自由化の流れがあるなど、米の生産を取り巻く状況は、以前にも増してたいへん厳しくなりつつあります。
日本の自給率を支えるための食料確保や、国土保全の視点、人々の健康を維持するという面からも、「日本のお米」は守っていく必要があります。「予約登録米」を通して、ごはんのある食卓とともに、いのちあふれる田んぼを全国に広げ、「米を作る国」を守り抜いていきたい―――パルシステムでは、そう考えています。
田んぼが広がるJA会津いいで(福島県)の風景
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