田んぼにくらす生きものは5,668種(※1)とも言われています。目に見えないほど小さな微生物やミジンコから、トキやコウノトリといった大きな鳥まで、多種多様な生きものを育む田んぼは、まさに日本の生きもののゆりかご。
これらの生きもの無しに稲は育ちません。例えば、肥料を分解する微生物、稲の害虫を食べてくれるクモのように、全ての生きものに役割があり、それぞれが支え合って暮らしているのです。
また、赤とんぼの99%は田んぼから生まれているとさえ言われています。このように、田んぼや田んぼの周りの里山には、実に多様な生きものが、寄り添いながら暮らしています。
※1「田んぼの生きもの全種リスト改訂版」(農と自然の研究所編、桐谷圭治編)による
こうした生きものの世界の魅力に取りつかれてしまうのは、学者だけではありません。そのひとりがJAささかみ(新潟県)の生産者、石塚美津夫さんです。
石塚さんは「産直」という言葉すら知られていなかった約30年前から、パルシステムとの産直交流に力を注ぎ、有機栽培を地域のさきがけとなって始めました。
もみ殻や牛ふんを発酵させた堆肥で土づくりをして以来、ホタルやメダカ、土を耕すイトミミズが田んぼや周辺の里山に年々増え続けていきました。
石塚さんの田んぼでは不思議と、カメムシのような害虫の被害がほとんど出ません。害虫を食べてくれる赤とんぼやカエルといった益虫も増えたからです。
JAささかみ(新潟県)の石塚美津夫さん
山あいの田んぼで草取りをする石塚さん
石塚さんは約10年前から、「田んぼの生きもの調査」を始め、自分や地域の田んぼの生きものに目を向けました。有機質肥料で土がよくなれば、土を耕す「イトミミズ」が田んぼに増え、それを食べるほかの生きものも増えてバランスが整っていく、ということを生きもの調査で実証していきました。
「イトミミズのようなごく普通の生きものこそが大事」という心境に達した石塚さんは、ついに、田んぼのそばに「イトミミズ神社」を建立。
今では、ささかみの田んぼは毎年初夏になると、星くずをちりばめたかのように、一面ホタルの輝きに包まれます。
1日にごはん3杯を食べるとすると、その量のお米は稲株約9株から収穫できます。両腕の中に収まるような、たったそれだけの面積であっても、田んぼが生きものを支える力は大きなもの。その面積から1匹の赤とんぼが生まれると言われています。(※2)
とくに農薬や化学肥料に頼らない田んぼでは生きものの種類や数は何倍にも増えます。そして生きもの同士のバランスが整うので害虫が減り、イトミミズのような生きものの力で土が肥え、微生物によって水が浄化されていきます。
日本の、農薬や化学肥料に頼らない田んぼのお米を食べることは、田んぼを支え、周りの自然を支え、さらには私たちが生きる上で必要な水や土、空気を支えることにまでつながっています。
そして豊かな自然の恵みがあるからこそ、おいしいお米が育つという循環がめぐりだします。何気ないごはん1杯ですが、あたりまえに食べ続けることには、大きな力があります。
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